ホーム » 小説 » 小説/あ行 » 握手しない男(スティーブン・キング)

427 名前:1/3 :2010/11/23(火) 06:13:45
スティーブンキングの小説「握手しない男」携帯の文や長文ダメな方はスルーで。

1919年、アメリカ、戦争から帰還したばかりのジョージは娯楽場で酒とポーカーにふけっていた。

ある日ポーカーの人数が足りず、お流れになるかと諦めていた時、部屋の隅にいた男が声をかけてきた。
「僕で良ければ喜んで仲間に加えていただきますよ。」
その男は、美男子だったが、顔には苦悩のしわが刻まれ、28歳くらいだが老けて見えた。

男はブラウワーと名乗った。友人の一人が握手をしようとすると、
ブラウワーは持っていた新聞を取り落とし、両手を高々と差し上げた。

友人が当惑するとブラウワーは、
「すいません、僕は握手というものを決してしないんです。」と言った。


429 名前:2/3 :2010/11/23(火) 07:03:20
「決してですって?実に変わってますね?どうしてなんです?」
友人が訪ねると、
ブラウワーは微笑みながら

「僕はボンベイから帰ってきたばかりなんですよ。あそこは疫病がはびこる不潔な所なんです。
 そのために我々の握手の習慣が恐ろしくなり、どうしても相手の手を握ることが出来なくなってしまいました。
 馬鹿げているし、失礼ですが、ご容赦願えるなら…」
と答え、一同は納得した。

ポーカーが始まり、6時間程立った。
賭け方が競り合いになり、賭け金は高額になっていた。


430 名前:3/3 :2010/11/23(火) 07:30:28
デービッドソンという男が勝ちを確信して積み金をかき寄せようとしたが、ブラウワーがそれ以上の手を出して見せた。
ブラウワーが慎重に積み金をかき寄せようとした時、デービッドソンがいきなり彼の手をひっつかみ、握りしめた。
「素晴らしい手際だったよ…」
その言葉を遮ってブラウワーは女のような甲高い悲鳴を上げて、蒼白な恐怖の表情で外に飛び出していった。

ジョージが後を追うと ブラウワーはタクシーを探していた。
「来るんじゃなかった。しかしどんな形であれ、人間との関わりを持ちたくて僕は…僕は…」
悲嘆にくれている彼を慰めようとしたジョージを避けながらブラウワーはこう叫んだ。
「僕に触れないでくれ!一人じゃ不足なんですか?ああ神さま、いっそ僕を死なせて下さればいいものを!」

ブラウワーは不意に野良犬に視線を止め「あれは僕かも知れない」と言った。


434 名前:続き :2010/11/23(火) 08:01:44
「君は何かひどいショックを受け、神経に以上をきたしているんですよ。」
「あなたは私を信じていませんね?宿無しが宿無しにどう応じるか見たくはありませんか?」
ブラウワーはジョージの言葉を無視してそう聞いた。
「ではご覧下さい。僕が異国の寄港地で習得したことを!」
ブラウワーはいきなり犬の脚をつかみ、それをうち振った。
それから急に立ち上がって、ジョージに礼儀正しく挨拶をした。
顔は蒼かったが元の彼に戻っていた。

ジョージが賭け金のことを申し出ると彼は「そうでした!金だ!」と苦笑いをして見せた。

「ここで待っていると約束して下さればわたしが持ってきましょう。」
ジョージは急いで室内に取って返し、賭け金をかき集めた。
通りに戻ってみると、ブラウワーは消えていた。
ジョージがふと足元を見るとさっきの野良犬がいた。
死んでいたのだ。ジョージは吐き気をもよおしあとずさった。


435 名前:続き2 :2010/11/23(火) 08:43:05
ポーカーのメンバー達はブラウワーを探し出して金を渡すべきだと考えた。

娯楽場の支配人が市の通商委員会のグリアなら、ブラウワーのことがわかるだろうと言い、
ジョージは彼のオフィスへと向かった。

ジョージが前夜の出来事を話すと、
「かわいそうな奴だな、いずれこんな結果になるだろうとは思っていたが。」と言った。

「何がです?」
「身の破滅がさ。原因はボンベイ時代にあるのだが。」
そういうと、グリアは、ブラウワーについて語り出した。

ブラウワーは通商委員会のボンベイ巡視団の一員として、派遣された。
ボンベイでは車は極めて珍しく、異教の神のように畏怖の念を抱かせることに快感を覚え、現地で車を乗り回していた。

ある日、仕事で町はずれまで車を走らせたブラウワーは、取引先と会食することとなり車を止めた。
しかし眼前の交渉に気を取られるあまりスイッチを切り忘れていたのだ。
間の悪いことに、車に1人の少年が忍び込んだため車は暴走し、少年を乗せたまま大破して炎上した。

亡くなった少年の父親は呼び返される前のブラウワーを捕まえて死んだ鶏を投げつけた。
父親は、子供相手に魔術を使う者は宿無しになるがいい、
そして、彼が手で触る生き物はすべて死んでしまうだろうと言った。

ジョージはこのようなことをグリアに聞き、住所を尋ねて帰ろうとしたが、秘書が電話を取り次いだ。


436 名前:続き3 :2010/11/23(火) 09:01:42
デービッドソンが死んだのだ。
死因は冠動脈血栓、23歳を迎える所だった。

ブラウワーのことは忘れてしまいたかったが、出来ず、
住所を訪ねたが、転居した後で、次のアパートも出ていた。

ジョージは宿無し達の住処、パワリーに向かった。
2週間後、やっと手がかりを得たジョージは安宿に向かった。
受付の老人に尋ねると
「知ってるよ、その男の新しい住処は共同墓地さ。」
「何か変わったことは?」
「うん、あれは奇態なことだった。名士のように髪を整え、スーツを来てまっすぐ椅子に座っていたが…
 
両手をしっかり握りしめていた。色んな死にざまを見てきたが、
  自分と握手して死んでいったのはあの男だけだよ。」

ジョージの頭にこの老人の言葉が繰り返し響いていた。

 

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