フリーター、家を買う／第5話「生きてる世界が違うって何だよ…」

翌日、彼女は作業場でその事をしつこく言い寄ってくる男子工員に言う。
「私、彼にこう言われたのよ。君は僕の母さんにそっくりだ」ってね。
その工員はショックを受けていたかもしれないが、外面では全く動揺していなかったな。
それから一週間経って、例の彼女がオレに言ってきたんだよ。
「最近、メールを送っても彼から返事がないの。今日、一緒に偵察に付き合ってくれない？」ってね。
そしてオレは強引に彼女とその男が知り合ったレストランに連れて行かれた。
そして、その男はやってきた。綺麗な女性を連れて。
楽しそうに女性と話している彼を見て、彼女は席を立ったんだ。
オレもその場を後にしようとしたんだけど、その男に気づかれたんだよ。
そいつはオレの近所に住んでいる人だった。向こうもオレの事は知っているようで、
「彼女は君の恋人かい？」といけしゃあしゃあと聞いてきた。
何で彼女の前でそんなこと言うんだ？とそいつに尋ねたところ、そいつはこう返してきた。
「彼女、オレの母親にそっくりなんだよ。人を社会的ステータスで判断して、見下す所とかね」
オレは呆然としてその場を後にした。