ホーム » スレ別 » 後味の悪い話 その121 » 寄席芸人伝/宿敵物語 三遊亭芝楽(古谷三敏)

657 名前:本当にあった怖い名無し :2011/04/27(水) 19:42:10.37
古谷三敏『寄席芸人伝』

大真打ち・山遊亭芝楽の元へ弟子の喜楽が同じ大真打ち・柳家小まんの死を知らせにくる
小まんは芝楽の生涯の好敵手であった
報告を終えて部屋を退出した喜楽は戸のすき間から涙ぐむ芝楽の姿を見て驚く
芝楽は妻を亡くした時でさえ気丈に振る舞っていたためである
宿敵・小まんの死に自分でもなぜこれ程まで悲しんでいるのか分からない芝楽は昔のことを思い返す

40年ほど前、芝楽と小まんは同じ日に同じ歳で入門をするが、体格の良かった小まんの方が兄さんとなる
その出会いをきっかけに小まんとは生涯競い合うことを予感する
小まんが5回稽古をしたと聞けば10回、持ちネタが5つになったと聞けば6つと芝楽は常に張り合っていた
しかし、二ツ目への昇進は小まんに先を越されてしまう
前座時代は客から芝楽、小まんの2人ともが同等に上手いと噂され、兄弟子からも芸は劣っていないと評されていた
何故遅れをとったのか気に病む芝楽
「噺家にしては顔が整いすぎているから小まんに比べておかしみが無い」との指摘を受け、
小まんとは方向性を変えることにする
丸い顔、太った体を持ち味に滑稽噺を得意とした小まんに対し、芝楽は人情噺・芝居噺へと進んでいく
そうした努力のかいがあったためか真打ちには一緒に昇進することとなった
ところが好事魔多し、その後すぐに芝楽は肺を患い高座を降りることとなる
焦る気持ちから病床で身体に鞭打ち稽古に励む芝楽
完治には三年を要した


658 名前:本当にあった怖い名無し :2011/04/27(水) 19:44:30.94
復帰後、席亭に休んでいた間の寄席の近況を尋ねる
すると大真打ちの人々は既に亡くなり、小まんを始めとした若手有力者たちは徴兵されてしまっていた
芝楽は患っていたために徴兵を免れたのだ
それを知り小まんが帰ってこないことを期待しながらもそう思う自分を卑しいと感じる芝楽
期待は外れ、終戦の翌年、小まんは元気な姿で寄席へ戻ってくる
それでも、戦地では落語の稽古どころではなかったろう
芸が衰えていることに期待をして小まんの高座を見に行く芝楽
しかしながら数年離れていたとは感じられない見事な芸を目の当たりにし、
また競い合いが始まることを直感することとなる
おおらかで周囲を気にかけない小まんの様子が一層悔しさを駆り立てる
芝楽はその後も何かにつけ意識し続けた
大真打ちとなった今日では
「おかしい噺なら小まん、しんみりした噺なら芝楽、両者甲乙つけがたし」と周知されるようになっていた
小まんの通夜でついにあんたを凌げなかった、あの世へ逝くのも先を越されたと嘆く芝楽
小まんの妻がその様子を見て「小まんもあなたと同じだった」と打ち明ける
「このおかしな顔では人情噺が出来ない」と苦しみ、芝楽が肺を患った時にはしめたものだと思っていた
そしてそんな風に思った自分を汚いと自嘲していたとも
寝言に名前が出るほど最後まで意識し続けて逝ったと聞き、芝楽は再びむせび泣いた

それからひと月あまり後
寄席の楽屋で席亭が弟子の喜楽に芝楽師匠の近況を尋ねていた
まったく高座へ上がらなくなり、姿も見えなくなってしまった芝楽を他の芸人や客も心配していたのである
なんだかボンヤリとしちまって、毎日縁側で日向ぼっこばかりなんで…訳を知らない喜楽も戸惑いながら答える

「小まんさん、待っててくださいまし…今度そっちで勝負しましょう」
すっかり老いた様子の芝楽は虚ろな目で空を見ながらそう呟いていた


662 名前:本当にあった怖い名無し :2011/04/27(水) 21:47:56.53
イイハナシダッタナー

ってそれじゃあアカンのよ。後味が悪い話持ってこなきゃw

 

寄席芸人伝 3 (中公文庫 コミック版)
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