母たちの島(ジュディ・バドニッツ)
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663 名前:本当にあった怖い名無し :2011/04/27(水) 22:42:47.16
- 翻訳小説アンソロジー「変愛小説集」に収録されている「母たちの島」byジュディ・バド二ッツ
図書館に返却して久しいのでうろ覚えだけど、印象に残っているので書いてみる。私の暮らす島の住人は、母親と娘たちだけだ。母親たちが話すには、こういう理由だ。
15年ほど前の戦争のとき、女の夫だった男たちは全員島の外に働きに行った。
その島に、別の男たちが訪れた。島の女たちと男たちは恋に落ち、私たちが宿った。
しかし戦争が終わり、敵国の人間だった男たちはやむなく母国に戻った。
元の夫たちは島に戻らず、島は女たちだけが暮らすようになった。
私を見るとき、母は「段々父さんに似てきたね」と言う。厳しいが目配りもきちんとしてくれる母たちに見守られ、
教育も彼女たちに受けて、私たちは不自由を感じることなく暮らしている。
ある日、私と一番の友人が探検していると、島の反対側でいるはずのない者を発見する。
この島にはいないはずの『少年』二人だ。
彼らと段々距離を狭め、話し合うようになる。彼らの母親は私たちの母親より厳しいようだ。彼らは私たちにこう話す。「恋物語なんて信じているのかよwww
俺たちの父親は、丸腰の女しかいない島に押し寄せた武装した兵隊で、毎晩列を作って女たちを犯していたんだよ。
その結果生まれたのが俺たちだ。だから男女が引き離されて育てられているんだ。
俺たちはひょっとしたら血が繋がっているかもしれないからな」
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664 名前:本当にあった怖い名無し :2011/04/27(水) 22:43:13.99
- それと前後して、私たちがいつも遊んでいる海岸に一人の男が流れ着く。とても弱っている。
少女たちは協力して海岸に小さな小屋を作り、母たちに内緒で食べ物を持ち寄り、彼の世話を焼く。
彼は私たちの父親の国の兵士のようだ。
少女たちは、彼こそが自分の父親ではないかと各々夢想している。根拠となる理由は様々。
―家に残されたものと同じものを持っている。
―顔立ちが似ている。
―私を長く見つめていた。
私も彼が自分の父親のような気がする。
私と友人が反対側の少年たちと交流している間に、他の少女たちと流れ着いた男の関係が変わっていく。
男は元気になり、身体には肉がつき、毎日小屋でごろごろと暮らしている。
ある日ふと小屋を覗いたら、男は少女の一人と「なにかへんなこと」をしていた。
その少女は「彼は私のことが一番好きなのよ!」と私に語る。
しばらく後、その男と少女たちの行動が母にばれる。
母は私からその話を聞くと、私に家にいるように指示して、自分は出かける。
「もっと早くにすべきだったことさ」と言って。
窓から見ると、近所の母親たちが続々と海岸に向かっていく。彼女たちはそれぞれの手に石を持っている。
翌日、海岸の小屋はなくなっている。母は私に「今更ままごとって年じゃないだろう?」と言った。
でもそれから数ヶ月、島の風景は変わってしまった。
私と友人以外の少女たちの腹部は膨らんで、皆それを撫でつつぼんやりと幸せそうだ。
私と友人は、まもなくこの島を出る。兄弟かも知れない少年たちが船を作っているのだ。想像がつく歴史の捏造もなんか後味悪いし(一人可能性があるのを殺す程度じゃ埋め合わせつかないだろうし)
主人公の世代はともかく、その次の世代は皆血が繋がっているのが確定なのもなんか後味悪かった。