龍と魔法使い/龍の娘編(榎木洋子)

518 名前:1/3 :2011/11/01(火) 23:34:55.30
昔「龍と魔法使い」っつーコバルトから出てるライトノベルがあったんだけど
その第二部のラストがなんか後味悪いなと思った。

人外のヒロイン(ちなみに龍の幼女)がいるんだけど、主人公に惚れてるのね。
でも結局主人公は人外ヒロインの気持ちに気がつかないまま別の女を選ぶ。
その後、色々あって人外ヒロインは主人公への報われない想いがゆえに
罪を犯して(わりとエグイ)その罪の意識に耐えかねて
人外ヒロインの魂はバラバラになってしまい、三つに分かれたまま
過去に飛んでいってしまう。(この辺は、ファンタジーだから
そういう設定なんだと思って欲しい)

過去に飛んでった魂は無意識のレベルで自分の罪深さを自覚しながらも
元々の人外ヒロインとは違う、それぞれ別の「人間」として暮らしていた。

主人公は人外ヒロインのした事の原因の一端は自分にあると思って、
妻子を置いて人外ヒロインの欠片を探す旅に出る…というのが主なストーリー。

人外ヒロインの欠片はそれぞれ、子供を亡くした親の元で娘になってたり
逆に(養い子だけど)孫までいるばーさんになってたりした。
ただその人たちは、元の人外ヒロインの欠片に戻るにはそれまで生きてきた
人生を捨てなきゃいけない(=死ぬようなもん)ので、欠片たちを探し当てた
主人公は迷うのだけど彼女達は「悲しいのも罰だから」と運命を受け入れる。


519 名前:2/3 :2011/11/01(火) 23:36:03.49
後味悪いのは3人目のストーリー。3人目は人妻で、娘までいた。
3人目の旦那はどことなく主人公に似た男で、妻を心から愛していた。
おまけに子煩悩な父親で、そんな旦那に愛されて3人目は幸せそうだった。
ただ、そもそも3人目も人間じゃないんで、本当は旦那との間に
子供なんかできるはずがないんだけど、旦那が子供好きなので
どうしても叶えてあげたかった3人目が魔法で作ったのが娘だった。

3人目は、迎えにきたという主人公に言う。今さら遅いと。
自分は旦那と娘を愛してる。ここには親友だっている。
新しい人生を生きてるのに、なぜ今さらになって来たのかと。

だけど主人公に「欠片を集めてるのは責任を感じてるからだけじゃない、
自分が元の人外ヒロインに会いたいからだ」と言われて3人目は
「3人目としての心」と「人外ヒロインとしての心」の二つに引き裂かれ
壊れてしまう。喋ることも反応を返すこともしなくなった母親を
心配して娘は主人公たちを責めるが、結局娘は自分の正体を知ってしまい
自殺するような形で魔法の力を母親に返し、3人目はただの欠片へと還る。

全ての欠片がそろって人外ヒロインが復活、主人公との再会を
果たすが可哀想なのは3人目の旦那。

妻も娘も失ったのに、それだけじゃなくて彼は記憶まで変えられてしまう。


520 名前:3/3 :2011/11/01(火) 23:37:47.57
主人公と敵対してた奴がいたのだけど(ちなみにこいつも人外ヒロインと
同じように龍。欠片を探したりしないでそっとしておけ、とか言ってた)
そいつに「妻子は数年前に流行り病で死んだ」という風に記憶を変えられていた。
というのも「旦那はこのままでは多分主人公を恨むだろうが、そもそも
人外ヒロインのやったことが原因なのだから、それは筋違いだから」という理由。

記憶を変えられてる旦那は普段は明るい男だが、酒が入ると自慢だったという
妻子の事を「自分にはもったいないくらいの女だったよ、綺麗で優しくて…。
だからかなぁ、流行り病で娘ごとあっという間に連れてかれちまった」と
いう風に話すのが常だ、というのがまたどうにも。

「でも誰のせいでもない、ただ運が悪かったんだ」みたいに嘆いてる旦那を
見て、主人公はできれば新しい幸せを掴んで欲しいとか願うんだけど
旦那は、明らかに主人公と人外ヒロインのせいで人生狂わされてるし
おまけにその事を恨んだり、憎む気持ちすら奪われたっていうのがなんだか。
かといって憎しみを抱えて生きるってのも救いがないし。

ぶっちゃけ旦那はモブなんで、ストーリー的には「主人公と人外ヒロインが
再会できたよ!」て流れなんだけど、その因縁に巻き込まれて何の咎もなく
ただ3人目を愛しただけの旦那が不幸になったっていう結末が後味悪いと思った。

 

龍と魔法使い―龍の娘編〈1〉 (コバルト文庫)
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(コバルト文庫)
龍と魔法使い―龍の娘編〈2〉 (コバルト文庫)
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(コバルト文庫)
龍と魔法使い―龍の娘編〈3〉 (コバルト文庫)
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