ホーム » 小説 » 小説/さ行 » 善意の集積(星新一)

534 名前:本当にあった怖い名無し :2011/11/03(木) 02:06:34.15
既出だったらごめん。
星新一の「善意の集積」

あるところに生まれつき目の見えない少女がいた。
しかし、そのせいで人々から疎まれることはなかった。
少女は人を憎んだり、悪意や疑念を抱いたりしない、
善意を向けられた分以上に相手にも善意を返す、とても綺麗な心の持ち主だった。
どんな醜悪な心を持った人間も、少女と話をするときは朗らかな心持になった。


535 名前:本当にあった怖い名無し :2011/11/03(木) 02:09:31.69
そんなある日のこと。
少女は遠くで誰かが悲鳴を上げているのを聞いた。
悲鳴は老若男女関係なく聞こえ、その原因が少女の方に近付いてくるのが分かった。
少女のそばで話をしていた男が「何事だろう、ちょっと見てくる」と言い、
外に出て確かめに行った。
しばらくしてその男の悲鳴が聞こえ、少女は一人になった。
少女は何があったのだろうと、よたよたと外に出た。

536 名前:本当にあった怖い名無し :2011/11/03(木) 02:11:37.60
目が見えないのでわからないが、なにかが近くにいる気配がする。
身体は黒、腕は前後左右に四本生え、
目玉は銀色でぎょろりとしている醜悪な生物が少女に近寄り話しかける。
「こんにちは、私は宇宙人です」
少女は目が見えないため、宇宙人の姿におびえることもなく、
また疑うこともなく「こんにちは」と返す。

538 名前:本当にあった怖い名無し :2011/11/03(木) 02:17:03.62
「よかった、あなたはいきなり気を失ったりしないようだ。
実は私はA星という星から来た調査員なのです。
この星の人の危険性を調べているのですが、あなたは客観的に見てどう思われますか。」

「危険性?みんな優しいし、目の見えない私にもとても良くしてくれます。
もうずっと平和ですよ」

「そうなのですか。ではこの星の危険度はゼロとして、A星には報告しておきます。
それで、あなたには調査に付き合ってくれたお礼としてA星に招きたいのですが、
いかがでしょうか」


539 名前:本当にあった怖い名無し :2011/11/03(木) 02:19:23.96
少女は少しの間考えた後「行ってみたい」と答え、そしてA星に連れて行かれた。
もちろんこの宇宙人にもやましい考えなどなく、
少女はA星で世にも珍しい二本腕の生き物などと、見世物にされることもなかった。

A星の技術力は素晴らしいもので、目が見えないのは不便だろうと、
少女の失明を治してあげた。
少女は喜び、生まれて初めて世界を見た。
ピンク色の草、銀色の海、空に浮かぶ球体のビル、どれもが新鮮な風景だった。


540 名前:本当にあった怖い名無し :2011/11/03(木) 02:21:27.73
しばらくは楽しく過ごしていた少女だったが、だんだんと心細くなっていった。
なぜ自分だけは肌色で、二本腕で、白黒の目なのだろう、と。
A星の人にその悩みを伝えたところ、そんなことで悩んでいるのか、
それも簡単に治るよと、少女の体をA星人そっくりにしてあげた。
全身黒色で、腕は前後左右に四本、目玉は銀色でぎょろりとした姿。
みんなと一緒の姿になった少女はまた喜び、ありがとうと何度もお礼を言った。

541 名前:本当にあった怖い名無し :2011/11/03(木) 02:23:29.56
またしばらくして、
少女は地球の優しい人たちのことを思うとずっとここにいるわけにはいかないと、
帰りたいことを連れてきてくれたA星人に伝えた。
A星人達は少しさびしそうだったが、仕方のないことだと思い、
少女の願いを叶えてあげた。

ここから先は書くのにしのびない。
地球に戻った少女は三日とたたずに自ら命を絶ったのだから。

 

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