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388 名前:本当にあった怖い名無し :2012/07/24(火) 10:54:09.97
杉浦日向子の「合葬」で、彰義隊の三人の少年のうち一人の最期がやるせなかった。

長崎へ遊学していたが、帰省時、幼少からの妹の許婚だった友人が破談を申し入れに来る。
すでに薩長が江戸入りしているが、自分は彰義隊で忠に殉じたいため、家督も弟に譲って家を出るという。
妹は泣き伏す。怒って友人を追いかけ説得したが、聞き入れられない。
そこで彰義隊の上役へ直談判に訪れ、
「幕府が朝廷に降伏した今、この隊の存在意義はもはや無い」と友人の除隊を願い出た。
上役は「年長者には穏健派もいるが、血気盛んな少年達は勢いで主戦論に傾いていて、どうも良くない。
友人を連れて帰りたいなら、ぜひとも君のような考えの若者が隊に入って、内側から説得してくれ」と説いた。
仮に彰義隊の中に入って隊士たちと同行することになったが、友人の頑なな考えはやはり変わらない。
そのうち家の長兄からは「ミイラ取りがミイラか?」と諌められるようになり、
長崎の師からも「勉強を続ける気があるなら早く戻って来い。
かねてから君の念願だった外国人講師の聴講を取り計らう用意がある」と手紙が来る。
「ああ、自分は一体何をしていたのだ。」 我に返り、諦めて隊を去ることにし、
危篤だった父親が死んだという友人の弟の手紙を持って、最後の挨拶に隊を訪れる。
一時期は尼になると言っていた妹が、他の(おそらくかなり年上の)男に後妻で嫁ぐ決意を固め、
せめて別れに一目会ってやってくれと懇願するも、友人はやはり拒む。
そのとき、にわかに上野戦争が勃発し、官軍に取り囲まれて脱出不能となった。
彰義隊の少年らはロクな装備もなくバタバタと斃されてゆく。
そんな中、自分も射撃を食らって致命傷を負い、友人に介錯された。

べつに入隊する意思があったわけでもなく、むしろ彰義隊にはすこぶる懐疑的で
たまたま居合わせた(それももう帰るところだった)ために命を落とすことになってしまい、
運が悪い人生だったなと思った。
外国人講師の招聘の報では、無邪気に喜んで再学の志を起こしていただけに。


389 名前:本当にあった怖い名無し :2012/07/24(火) 10:56:12.78
ちなみに、他の二人は

くだんの友人で、徳川忠誠を誓って彰義隊の活動に没入している。
上野戦争で上記の少年が撃たれたところを助けに出て負傷し、
のちに化膿して身動きが取れなくなり、会津への逃走中に百姓家の納屋で切腹。
この少年は、ある意味自分の信念を貫いて生き切った感があり、悲壮ではあるがそれほど後味は悪くなかった。

もう一人の少年は、上記二人の友人で、おとなしい性格の子。
妾腹のため実家には身の置き所がなく、養子に入った先でも体よく追い出され、
友人と一緒に入った彰義隊に自分の居場所を見出していた。
料理屋の娘に淡い恋心を抱いて撃沈したり、
友人二人が政治論で衝突しているのに比べて現代の読者にも親近感のある描写。
友人を相次いで亡くし、百姓家で借りた扮装に身をやつして、フラフラで会津へ向かっていたところ
道端に行き倒れ、通りかかった商人の親子に介抱されるところで終わり。
のどかな青空の下で、この子は紆余曲折を経て明治の町人で生きていきそうな、希望が見えるラストだった。

 

合葬 (ちくま文庫)
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