人形のいる街(筒井康隆)

898 名前:1/2 :2012/08/12(日) 01:34:27.70
筒井康隆「人形のいる街」

原宿のとある喫茶店で、芸能記者と芸能プロダクションの社員が話し合っている。
「この、マック高木と軽井沢ルミを組み合わせたら面白いんじゃないかな」
「おもしろいね。ルミちゃんはボーイッシュでかわいいから、同性に人気だ」
「マック高木はね、俺が育ててやったようなもんだよ。素直だし、俺には相変わらずペコペコしてる」
「二人の空いた時間に、表参道でも散歩させましょう」
「ちょうど明日、どちらも3時から4時まで空いてるよ。ところで、今夜飲みに行かないか。
 
なに、マック高木の交際費で落とせばいい」

翌日の午後3時、同じ喫茶店。
昨日の二人とカメラマン、タレント二人がやって来る。
客は反応しない。タレントごときに騒ぐのは田舎者だと言いたいのだろう。
「マック、ここの支払いは君の奢りにしておくよ」
「はあ、わかりました」
「服飾費が半年先の給料に食い込んでるんだよ、しっかり働きたまえ」
「はあ、すみません」


899 名前:2/2 :2012/08/12(日) 01:35:12.55
写真週刊誌に二人のデートがスクープされる。
『マックとルミちゃん、表参道お忍びデート!!/マックって、とっても純情なのよ』

3ヶ月後、同じ喫茶店。
芸能記者と芸能プロダクションの社員がまた話し合っている。
「どうも弱ったね。マック高木が落ち目になってきた」
「ルミちゃんの新曲が売れてきたから、悪い影響がないといいが」
「そうだ、こんなシナリオはどうかな?『マック高木、突然の事故死!!悲劇のヒロイン、軽井沢ルミ』」

 

にぎやかな未来 (角川文庫)
にぎやかな未来 (角川文庫)
怪物たちの夜―自選短篇集〈2〉ショート・ショート篇 (徳間文庫)
怪物たちの夜―自選短篇集〈2〉
ショート・ショート篇 (徳間文庫)