ホーム » 小説 » 小説/た行 » 通りすぎた奴(眉村卓)

887 名前:本当にあった怖い名無し :2012/10/30(火) 20:51:58.68
うろ覚えだから、ほかの作品が混ざっているかもしれないけど、

「通りすぎた奴」眉村卓

人々が、数万階もある超々高層ビルの中で生活をしている世界
全てのことがビルの中で用を足すことができ、ほとんどの人が外に出ることはない
外の世界に関心を持つ者は皆無で、ビル内で一生を終えることに疑問すら感じない
各階はエレベーターで行き来するが、鉄道を縦にしたような感じで特急などが運行されている

ある日主人公は、たまたま数階の距離だったので階段を使用して移動する。
そこの踊り場で、絵を描いている青年に遭遇する。
こんな場所で何をしているのか聞くと、青年は徒歩で最上階まで行こうとしていると答える。
馬鹿げたことと思いながら興味を持った主人公は、青年から到達予定日を書いたメモをもらう。
その後しばらく忘れていたが、まわりでその青年の噂が聞かれるようになってくる。
ふと主人公は、ポケットにしまわれたメモを見て今日がその予定日だと気付く。
主人公は仕事を終えて急いで最上階へ向かう。
途中、大勢の客とエレベーターに乗り合わせるが、ほぼ全員が最上階で向かっていると気づく。
下の方の階で青年と会ったものは「旅人」と呼んでいたが、
上の方の階で会った者は「聖者」「神」と呼んで、みな興奮しながら話をしている。
豪華な特急エレベーターから各階停車に乗り換え、最上階近くの単なる箱状のエレベーターに乗り換えて最上階につく。
皆が待つ中、青年が階段を上って来て、大きな歓声で迎えられる。
2万数千階到達の偉業の達成に祝福され、安堵の表情を浮かべる青年。
だがその時、誰かが「この後はどうするんだ?」と発言する。
また他の誰かが発言する「飛ぶんじゃないか?」
「彼は神だ。その窓から飛ぶのだろう」「飛べ!」「飛べ!」「飛べ!」
青年は、だだ歩いて登っただけで神などではないと拒否する。
だが抵抗は無駄だった。最早主人公にもどうすることも出来なかった。
次第に迫ってくる人たちに気圧されて青年は覚悟を決める。
そして窓を開けて、暗闇の虚空へ身を投げる。
最高潮に興奮する人々。そして窓からは、生暖かい風が吹き込んで来るだけだった。

 

日本SF全集 1 1957~1971
日本SF全集 1 1957~1971
通りすぎた奴 (角川文庫 緑 357-26)
通りすぎた奴 (角川文庫)


後味悪い
(後味悪ければクリック)
読み込み中 ... 読み込み中 ...