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157 名前:本当にあった怖い名無し :2012/11/11(日) 08:26:01.50
「夏の葬列」 山川方夫

夏の真昼、主人公の少年は友人のヒロ子さんと葬列を見つける。
「おまんじゅうがもらえるかもしれない」と
葬列を追いかけていたところへ艦載機がやってきた。

標的になりやすい白い服で彼を助けにきたヒロ子さんを、
彼は「撃たれてしまいじゃないか!」と半狂乱でつきとばしてしまう。
銃撃に晒された彼女のその後を聞くことなく、彼は町を去った。

大人になってもその記憶に囚われていた彼は、全てを忘れるために再びその町を訪れる。
そこで彼はまたしても葬列を目撃する。棺の上の写真を見て彼は歓喜した。
それはあの頃の面影も色濃い、30歳近くなったヒロ子さんの写真だった。

「おれは人殺しではなかったのだ」

十数年の悪夢から解き放たれ、有頂天になった彼は、
葬列の後を追う少年に彼女の死因を問うてしまう。

「一昨日自殺したんだよ」
「戦争でね、一人きりの女の子がこの畑で機銃で撃たれて死んじゃって、
それからずっと気が違っちゃってたんだ」

葬列はヒロ子さんの母親のものだった。昔の写真しかなく、それを使っていたのだった。

彼は、あの夏の記憶が、今は二つとなった死が、彼の中で永遠に続くほかないことを知った。
時を隔てても、自分の中の夏のいくつかの瞬間を一つの痛みとしてよみがえらすのだろう。
もう逃げ場はないのだという意識が、彼の足取りをひどく確実なものにしていた。

 

夏の葬列 (集英社文庫)
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