椅子直しの女(モーパッサン)

3641/7:2013/01/29(火) 00:31:02.09
モーパッサン短編小説「椅子直しの女」

ある医者が何かの会合で「恋の話」を語ると言う設定で、
その話は以下の通り。

一昔前のフランスで、定住しない渡り者一家が居て、
職業は椅子直し。行く町々で蔑まれる下層階級。
そういう生活なので、一家の幼い娘には友達が居なかった。
ある日、滞在した町で1人歩いていた娘は、
町の薬屋の息子である少年に出会う。


3652/7:2013/01/29(火) 00:36:05.50
娘にとっては、いわゆる「きちんとした家」の子供なんて、
雲の上の存在。
そんな少年が1人で泣いていて、金を落としたと言う。
娘がたまたま持っていた僅かな小遣いを全額あげると、
少年は喜んで笑ってくれた。

その日から、少年が彼女のたった一人の王子様になる。

椅子直し一家は、毎年その町に立ち寄る。
その時のために、彼女は一生懸命に小遣いを貯める。
少年は、椅子直し一家が町に来ると1人で近くへ来てくれる。
彼女は一年分の貯金を全額あげて、少しだけ話をしたり、
手を握ったりさせてもらう。


366 3/7:2013/01/29(火) 00:39:59.08
何年かそれが続いたが、少年はやがて寄宿学校に入り、
町に来た椅子直し一家を見ても無視するようになった。
彼女は悲しんだが想いは衰えず、
いつか渡す日のためにお金を貯め続けた。

月日は過ぎ、少年は家をついで薬屋の店主になり、
相応の妻をめとった。
椅子直し一家も代替わりし、
両親亡き後は娘が1人で商売するようになった。
彼女は、彼が他の女と結婚した後も慕い続け、
その町に寄るたびに件の薬屋で買い物をし、
間近で王子様を見て言葉を交わすことを喜んだ。


367 4/7:2013/01/29(火) 00:44:44.53
また年月が流れ、中年を過ぎかけた彼女は病気になった。
死期を悟った彼女は想い人の町へ来て、
そこの医者で息を引き取った。

その際、彼女は看取ってくれた医者に
長年の薬屋への想いを告げ、遺言を託す。

長い恋の物語に心打たれた医者は、翌日に薬屋を訪問し、
彼女の死と告白を伝える。
薬屋夫婦が哀れんで涙でも流してくれれば彼女も浮かばれる・・・・・・
と言うのが医者の心情だったが、薬屋夫婦の反応は予想外。


378 5/7:2013/01/29(火) 22:50:41.87
薬屋夫婦の反応
「あの乞食女、俺(うちの夫)のストーカーだったの!?マジで!?」

汚い、おぞましい、乞食の癖に気持ち悪い、汚らわしい、
と罵倒の限りを尽くす薬屋夫婦。

しかし、ウンザリした医者が
「そうですか。じゃ、彼女が遺したお金は、
 どこかに寄付しましょう。気持ち悪いでしょうし」
と言うと夫婦は沈黙する。


379 6/7:2013/01/29(火) 22:59:03.14
薬屋に渡してくれ、と彼女は医者に全財産を託していた。
働き者で生涯独身だった彼女が、ただ薬屋に金を渡せる日を夢見て
趣味も楽しみも一切持たず爪に火をともすようにして貯めた金は、
莫大ではなくとも、それなりの金額。
薬屋夫婦は、さっきまでの罵倒を忘れたような態度で
「貰ってやった方が供養になるよね」と受領。

さらに次の日、家でくさっていた医者を薬屋が訪問。
家代わりの荷馬車や馬など金以外の遺品も自分のものだと主張し、
使えそうなものを選り分け、残りのガラクタは捨ててくれと帰る。


382 7/7:2013/01/29(火) 23:08:58.27
そして薬屋は彼女の遺産を投資にまわし、
馬や荷馬車は家で活用し、
家族ともどもハッピーに暮らしておしまい。

医者は
「これが、私の見た、たった一つの真剣な恋とその結末です」
と締めくくる。

私の大好きな話。
相手の男がどんなクソでも、
手に職をつけて真面目に働きつつ全力で恋を続け、
貫いて死んだ彼女は幸せだったと思うから。
しかし人に話すと「後味悪い」と言われるので、書き込んでみた。


383 本当にあった怖い名無し:2013/01/29(火) 23:25:49.80
まあ男の本音(乞食女云々)を知らずに死んだなら幸せだったかもね

384 本当にあった怖い名無し:2013/01/29(火) 23:37:32.50
>>382
>>372と合わせると、椅子直しのジプシーの最後を看取った医者が
侯爵夫人に彼女の恋の顛末を話して聞かせるっていう構成なの?
医者「これが、私の見た、たった一つの真剣な恋とその結末です」
夫人「それではっきりしましたね、ほんとうに恋愛のできるのは女だけですわ!」
って終わり方か……

386 7/7:2013/01/29(火) 23:41:57.21
>>384
そんな感じ。
侯爵夫人ふくめて、何人か上流階級の方々が
恋の話で盛り上がってるシーンで始まるの。
で、その中の医者が椅子直しの彼女の話をする。
締めのセリフが、侯爵夫人のその言葉。

392 本当にあった怖い名無し:2013/01/30(水) 00:18:51.33
主人公の女の人も、結局はクソ男のことを
まともに人間として見たことは一度も無かったわけで、
(一度でも向き合ってたらすぐ気づく筈。)
自分の精神的充足の為に、クソ男の存在を利用し尽くしたともいえる。

結局クソ男も、まともなお医者さんに、上流階級が集まる場で悪評を言いふらされた
あげく、女から金まで盗んだことを暴露されてるわけだし、
因果応報というか、やっぱりけっこういい話だと思う。

 

モーパッサン短編集 (1) (新潮文庫)
モーパッサン短編集 (1)
(新潮文庫)
モーパッサン短篇選 (岩波文庫)
モーパッサン短篇選
(岩波文庫)
ちくま文学の森 10巻とっておきの話
ちくま文学の森 10巻
とっておきの話