午後の恐竜(星新一)

599:本当にあった怖い名無し:2013/03/20(水) 21:29:44.53
午後の恐竜のどかな休日の朝、妻子持ちが目覚めると
子供が「恐竜がいる」とはしゃいでいる。
そんな馬鹿なと外に出ると、確かに恐竜が闊歩し、妙な植物や虫
巨大なトンボが飛んでいる。
夢かと思ったが妻にも子供にも見え、犬は恐竜に吠え立てている。
しかし目には映るが、手で触れても通り抜けるし実体はないらしい。

陽が傾くにつれ、恐竜の数は減り、植物も変化していった。
氷河期に入ったらしい。
幻の植物はいつのまにか、見慣れたものへとなりつつあった。
妻子持ちの男は何かゾッとするものを感じる。

何処からともなく原始人が現れ、マンモスが現れ
野生の馬が走り、クマが寝そべる。

黄昏の中で古代人どうしが闘っていた。
武器はめざましく改良され、強力になっていく。近代戦だ。

「もうすぐ未来になるんだねパパ。早く見たいな」

男は妻子を強く引寄せた。
その時、空気をつんざく音がした。
それが核ミサイルの音とは知りようがなかった。
何もかもが超高熱の爆風ですっ飛ぶ。

この異常現象は、地球の全生命が同時に見た、生命の過去の走馬灯であった。

 

午後の恐竜 (新潮文庫)
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