首斬り朝(小島剛夕)
-
787:1/2:2013/05/22(水) 20:01:35.82
- ・首斬り朝「斬之四十四 首の道」
舞台は江戸時代。罪人の首を斬る「御試し役(死刑執行人)」の
「首斬り朝」山田朝右衛門が主人公。
冒頭の場面は飲み屋。どこかのご隠居と男たち、彼らの話し相手になっている店の女。
話題は佐吉という男について。彼は腕の良い職人だが、醜男。ただ自尊心が強く、
自分に似合いの美人と結婚したいと考えている。一同、その勘違いぶりに苦笑する。
御隠居の提案で、佐吉に縁談話を持ちかけることに。
相手はお咲という娘。気立ては良いが器量が良くない。
ご隠居たちは「似合いの二人だ」と勝手に盛り上がる。佐吉とお咲、それぞれのところへ見合いの話が行く。
相手の顔も知らない同士だが、お似合いだと言われてその気になる。二人は茶屋で会うことに。
見合い当日。茶屋にて、見知らぬ相手を待つ佐吉とお咲。
けれど当然ながら待ち人は来ない。夜が更け、茶屋には二人だけになる。
互いに「まさか」と思うが、すぐ思い直す。「いくらなんでも、あれじゃあんまりだ」結局、二人とも
「気付かなかっただけで、相手は来ていたんだ。どこかから自分を見ていたが、
声を掛けられなかったに違いない。後からまた連絡が来るかも」
などと都合よく解釈し、帰ることにする。
どちらも良い気分になっていたので、別れ際に笑って会釈。
そのときの笑顔が互いの印象に強く残る。
特に佐吉は「笑うと可愛いじゃねえか」なんて考える。数日後。飲み屋に集まるご隠居たち。
佐吉とお咲はどちらも「茶屋へ行った」とは言うものの、何の進展もないようだ。
ご隠居、ぽつりと「縁がなかったんじゃな…」
-
788:2/2:2013/05/22(水) 20:03:41.74
- 刑場。罪人が、朝右衛門によって首を討たれようとしている。
面紙(死に顔を隠すためのものか)が付けられており、顔は分からない。
朝右衛門に「何か言い残すことは?」と問われ、罪人が語り出す。「道という字は首と『しんにょう』で出来ている。男の人生は、己の首を賭けた『首の道』だ。
だが一人では歩けない、首を支えるしんにょうという女が必要だ。
かつて自分にも、そんな女が出来かけたことがあった。分相応の、笑うと可愛い女だった。
けれど、自分で駄目にしてしまった……」斬首執行。討たれた首が飛び、面紙が捲れる。罪人は佐吉だった。
死に際の佐吉の言葉が気になった朝右衛門は、(冒頭の)飲み屋に辿り着く。
店の女が「きっと、こういう顛末だったのでしょう」と語り始める。
茶屋での出会いからしばらく後、佐吉はお咲こそが見合いの相手だったと気付いた。
そのときにはもう、お咲に惚れていた。が、ご隠居たちは既に終わった話と決め付けている。
また自尊心の強い佐吉も、自分から「また会いたい」とは言えない。
佐吉の苦悩を「縁談が上手くいかなかったため」と誤解した友人たちから、
お咲の悪口を言われたりして、彼はどんどん追い詰められていく。結果、佐吉は酒に溺れ、つまらない刃傷沙汰を起こしてしまった。
ようやくご隠居たちも事態を察したが、どうにもならない。
「どうしてこうなってしまったんでしょうねえ、本当に似合いの二人だったのに……」
と女。ラストシーン(台詞なし)。長屋でお針子仕事をするお咲。
ふと、佐吉の顔――別れ際の笑顔を思い出す。
彼女は、佐吉が死罪になったことを知らされていない。