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850わたしを離さないで1:2013/07/04(木) 23:47:52.54
カズオ・イシグロ「わたしを離さないで」。

近未来。イギリスの全寮制学校。
ここの生徒は全員、臓器移植のため、
それだけにつくられたクローン人間だった(合法化されている)。
しっかり健やかに育てられるこどもたち。もちろん、良質な臓器の器として、だが。
彼ら彼女らも、それを知っている。
受け入れるでもなく、逃避するでもなく、順番が来たらそれに従う。
それしかないから。

ただ、ひとつだけ、希望というには実に曖昧だが、とにかくある噂。
「真に愛し合う男女のつがいのみ、一定期間移植を免除され、
 人並みのカップルとして過ごす時間が与えられる」

皆、刹那的なセックスに耽りがちなのも、
もちろん彼ら彼女らの「ひと」としての部分が求めてのこともあろうが、
ひょっとしたらタイムリミットまでに「真の愛」を成し遂げたい、
そんな無意識が「ねじれ」てのあらわれなのかも知れない。


851わたしを離さないで2:2013/07/05(金) 00:08:05.45
ところで、クローンからの臓器移植は、「提供」、
クローン体は「提供者」と呼ばれている。

彼女は、もう20後半。
異例何だろうが、この年まで「提供」を経験せずに、
何年も「提供者」の心理ケアの仕事をしている。
この仕事は、「提供」待ちのクローンがするのが決まりだ。
当然一番のベテランなので、多少のわがままは効く。

例えば、かつて愛したが、若さから離れてしまった同級生の専属を申し出るくらいには。
ケア?いや、ただ、彼にもう一度会いたかった。もっと端的には、愛し合いたかった。
かつての思い出の場所を巡り、たっぷり語り合い、そしてからだを重ねる。
愛したいのか、生き残りたいのか。
どっちかは分からないけど。
いずれにせよ、もう彼は、2度も「提供」している。
3度目になれば、もう……。


852 わたしを離さないで3:2013/07/05(金) 00:22:08.79
とにかく、これは「真の愛」だろう。
自分らに手に入れられる、限界の答え。
2人は、母校の理事を探し出し、訪問することにした。
繰り返しになるが、希望というには曖昧だが。

しかし、彼女らは、学校で絵や音楽、アートをかなり重視して教えられてきた。
しかも、ときには、理事は彼女らの作品を何処かへ持ち帰りさえもした。
それは、その個々人の内面を観察しようとしてたんじゃないのか?
そして、誰が「真の愛」に目覚めそうなのか、目星を付けていたんじゃないのか?
彼女の作品も、いっぱい理事の手元にある筈だ。

彼は、学生時代不真面目だったから作品はないと思うが、最近改めてつくった画集がある。
それを見てもらえば、彼の「こころ」が如何に素晴らしいか、きっと分かってくれるだろう。


854 わたしを離さないで4 ラスト:2013/07/05(金) 00:42:59.20
しかし、理事の答えは
「あなた方は、求めがあれば提供する。皆と同じよ」
「しかし、では何故、わたしたちの内面を観察するようなことを!?」
「あれはね、クローンの『こころ』が、私達の『こころ』と同じか、研究するのが目的だったの。
 後ね、校長の意向で、あなた方にも普通の子と変わらない情操教育をすべきって、
 そういう方針だったのよ。でも、今後はもっと効率よく教育する方針になると思うわ」

それからすぐ、彼は3度目の「提供」をし、死んだ。
彼女にも、「提供」の要請が来た。
「わたしたちと普通のひとたち、一体何が違うと言うのだろう。
 生きる意味も分からず、そして分からないまま死んでいく」


867 本当にあった怖い名無し:2013/07/05(金) 15:36:52.75
>>856
Eテレのカズオ・イシグロ特集では、セックス云々は出てこなかった。
(芸術の才能だけ)
臓器提供も、一度の手術で使えるもんは全部取られるから
施設から出される=死だと思ってた。乙。

 

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)
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