悪童日記(アゴタ・クリストフ)

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アゴタ・クリストフ「悪童日記」三部作

WWⅡを思わせる戦争中、ハンガリーを思わせる国で、
首都から国境近くの祖母の農園に疎開した双子の男児が語り手。
祖母はドケチで文盲で働き者の不潔な寡婦で、農園を一人で切り盛りしている。
双子は祖母に母からの仕送りや衣類の小包を奪われこき使われるが、
なかなか逞しくしたたかに生きている。
郵便配達夫を襲って、祖母が母からの手紙や仕送りを盗んでしまうから
自分たちに直接渡してくれ、さもないと殺すよ。と脅してみたり、
いじめっ子は手作りの鈍器で殴り倒したり。

いまや貴重な新鮮な玉子と引き換えに手に入れた大きな帳面に
「厳正な事実」だけを日記に書いたり、辞書と聖書で勉強もしている。
厳正な事実とは、例えば
「みんなおばあちゃんを怖がっている」「僕らはクルミが大好きだ」ではなく、
「みんなおばあちゃんを"魔女"と呼ぶ」「僕らはクルミをたくさん食べる」と書くことだ。

祖母は双子を、実の娘が生んだ孫だと言うのに「牝犬の子」呼ばわりする。
町の人も「魔女の子」「人殺しの卵」呼ばわりする。


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双子は「言葉に傷つかない訓練」として、互いに罵声を浴びせ合う。
「暴力に傷つかない訓練」として、互いに殴り合う事もある。

冬に備えて防水長靴を探す双子は、町の靴屋に仕送りのお金を差し出した。
足りない分は春になったら魚や玉子を売って工面する、と言う双子の金を返し、
靴屋は長靴以外に何足も靴をくれた。
施しを受けるのは好きじゃない、と渋る双子に靴屋は、
ユダヤ人はもうすぐ収容所送りになる、そうなったら金なんか意味もない。
誰かに略奪されるより双子に使ってもらった方がいい。と言った。
「おじさん、ありがとうございます。僕らはおじさんがどこにも
連れて行かれなければいいと思います。おじさんの親切は忘れません」

ある日司祭館の新しい女中が祖母からイモを買い、
ついでに祖母に劣らず汚くなっていた双子を司祭館で風呂に入れてくれた。
若く美しい女中は乳歯が残る年齢の双子をいたずらした。
女中はたびたび祖母から食料を買い、双子を風呂に入れ服を洗ってくれた。
双子はお礼に、森で薪を集めてやった。

ある日、収容所に送られるユダヤ人の一団が町を通った。


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焼き菓子を頬張りながら見物していた女中は、
痩せこけたユダヤ娘の鼻先に菓子をちらつかせ、全部食べてしまった。
「あたしだって腹ペコなのよww」
「忘れてしまいなさい、あんたたちはあんな目にあわないわよ。
 あいつら犬畜生とおんなじなんだから」

その晩司祭館の台所で竈が爆発し、女中は顔に大怪我を負った。
薪の中に弾薬が紛れ込んでいたのだった。
女中は従軍看護婦に志願し、前線で死んだ。
(双子は以前、森で見つけた兵士の死体から武器弾薬を盗んで隠していた。
 明記されていないが、それを使ったものと思われる)

ドイツの敗色が濃くなった頃、赤ん坊を抱いた母が双子を連れ戻しにやって来たが
爆撃で死んでしまったので、祖母と双子は庭に埋葬してやった。
(父は兵士として前線にいる。赤ん坊は生活のために母が交際(援交)していたナチ将校の種)

敗戦前夜、金持ち連中がわずかな食料と引き換えに
気前よく宝石類を差し出してどこかに逃げていった。
そしてソ連軍がハンガリーを占領した。
実はロシア人だった祖母がロシア語を教えてくれたので、双子は通訳で稼ぐことができた。
祖母が病死してまもなく、捕虜収容所から脱走した父がやって来た。


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ソ連の傀儡政権では自分は危険人物だから隣国に逃げる、と言う父に双子は賛成した。

国境は鉄条網の柵(高さ1,5m厚さ1m)二枚で挟まれていて、間は地雷原。
長い板を梯子と踏み板にして柵を越え、
運を天に任せて地雷原を走り抜け、また同じやり方で柵を越える。
父を送り出した双子は、祖母の宝石を等分して身につけた。
爆発音がやんだので見てみると、地雷を踏んだ父が死んでいた。

地雷原を無事越えるには、先に誰かを歩かせて足跡と死体を踏んで行くのが一番。
双子の片方は父の死体を踏んで隣国に密入国し、片方は祖母の農園に残った。

ここまでが「悪童日記」。次の「ふたりの証拠」で農園に残った片割れの生活が、
最後の「第三の嘘」で事実が明かされるのだが、うろ覚え。

双子の兄は母と首都に残り、弟は祖母に預けられた。
「悪童日記」は弟の妄想日記。
母は弟を恋しがって兄をほとんどネグレクトした。
後に兄は生き別れの弟の事を書いた詩で有名になったが、
それでも母は兄を軽視した。
弟は弟で、母と兄に捨てられたと思っていた。
後に兄が農園を訪れても、自分には兄などいない、と拒絶した。完。

 

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)
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ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫)
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第三の嘘 (ハヤカワepi文庫)
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