ホーム » スレ別 » 後味の悪い話 その141 » 蝶の道行(秋山亜由子)

4101/2:2013/07/26(金) 10:46:55.43
秋山亜由子の短編漫画「蝶の道行」

とある宿屋を訪れた美女、見事な蝶の屏風があると聞いたので
どうか一目だけでも見せてほしい、と主人に頼んだ。

その屏風は、紫色の大きな蝶の羽を
まるで生きて飛んでいるかのようにあしらった見事なもの。
去年吟行に出た主人が蝶を見かけ、腕のいい紙漉き職人にやらせたものだ。
「それではこれは、去年の蝶なのでございますね。
 あたくしにも旦那様の風流が移ったようでございます。
 どうかしばらく1人にしてはくれますまいか」
「よろしゅうございますとも、風流とはそうしたものでございます」

しばらくして主人が様子を見に行くと、
女の姿はなく屏風の蝶の羽も全部消えていた。

主人は紙漉きの工房を訪ねた。
若い職人は主人の顔を見るなり土下座した。
「よしとくれ、あたしゃそんなつもりで訪ねたわけじゃないんだ」

職人は、自分が大事だと思ったことだけが大事で
他はどうでもいいと思っていた。
あの紫色の見事な蝶を見た時から、
あれを(主人の注文通りに)仕上げられるのは自分だけ、と思った。


4112/2:2013/07/26(金) 10:47:59.23
「あの蝶は高い所を力強く、鳥のように飛ぶのです」
やっとのことである程度の数を捕らえ、
冷静になって見てみれば半分は薄ぼけた茶色。
わけを考えるより先に腹が立ち、生きたまま竈に投げ入れた。

「その女は去年の雌蝶です」
「あの蝶はオオムラサキというそうです」
「あの見事な紫色は雄にしか出ないと、私はずっと後で知りました」

無駄な殺生をした職人も羽をもがれた雄も
夫(虫だからつがいの相手か)を奪われ焼き殺された雌も哀れ。

 

こんちゅう稼業
こんちゅう稼業


後味悪い
(後味悪ければクリック)
読み込み中 ... 読み込み中 ...