ざしきわらし(まつざきあけみ)

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まつざきあけみ「ざしきわらし」

吹雪の夜、二人の男が山越えの途中で道に迷い、
わずか9戸の寂れた集落に辿り着いた。
午前3時だというのになぜか全戸に明かりがついている。
二人は集落で一番立派な屋敷に一晩の宿を求めた。

屋敷は上品な老爺と孫の幼い少年の二人暮らし。
全戸が遅くまで起きている訳を訊ねると、老爺は
「こんな吹雪の夜には座敷童子さまがござっしゃるでな。
 みな遅くまで起きてご馳走を用意してお迎えするんじゃ」と答えた。
(座敷童子が現れた家は栄える。座敷童子は奥座敷に現れる)
(奥座敷があるようなお屋敷は元々裕福なんじゃないか。都合のいい話だぜ)

囲炉裏の鉄鍋に用意されたご馳走は、
カブト虫の幼虫と野菜のごった煮。
旨い旨いと食っていた二人は、中身を聞いて吐きそうになった。
老爺が言うには、獣も寄りつかないこの山では虫も大事な食料。
魚は年に1、2度加工品を買い出しに行くが、肉は高くて買えない。
たまに肉が手に入れば、塩漬けや燻製にして大事にいただく。


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二人は奥座敷に通された。
故郷では座敷童子は恐れられているんだ、
と一人は嫌がるが、連れが宥めた。

翌朝の集落。
「昨夜の座敷童子さまは○○どんのお屋敷に出なすったで」
「そりゃあ立派な奥座敷だもの」
「塩漬け作るの手伝うたから肉をわけてもらえるぞ」
「正月が楽しみじゃのう」

道に迷った旅人を殺して金品を奪うことは昔はよくあり、
大して悪いこととは思われていなかった。
そういう伝説のある村で訊ねてごらんなさい、
彼らは決して否定しないから。
ただ、金品を奪うのみならず
死体まで食ったことがあるのかどうか、
今もその風習があるのかどうかはわかりませんがね…

「今度の座敷童子さまは旨そうだねえ、おじいちゃん。
 早く正月にならないかなあ」

 

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