将軍が目醒めた時(筒井康隆)

117本当にあった怖い名無し:2013/10/18(金) 21:14:32.96
筒井康隆『将軍が目醒めた時』

ある朝、葦原金次郎が目覚めると、七十二歳の老人になっていた。
しかもカレンダーには「大正十一年」という全く知らない元号が書かれている。
実は金次郎は明治八年に発狂し、キ■ガイ病院に入れられていたのだ。

キチ■イ病院で葦原は将軍を自称し、狂人代表として乃木稀助に挨拶したり、
明治天皇に将軍に任命して貰ったお礼を述べたり、
頓珍漢な政治主張を述べてはマスコミに取り上げられ、
国民的有名人になっていた。


118本当にあった怖い名無し:2013/10/18(金) 21:16:08.13
病院は病院で葦原将軍を金儲けの出汁に使っていた。
しかし将軍が正気に戻ったのでは面白くない。
なので、葦原に「将軍」のままでいてくれとお願いする。

葦原は正気であるにもかかわらず、数年間、「将軍」を演じながら生きてゆく。
けれども正気の人が何を言ったところで面白いわけではない。
葦原は次第に自信を無くし、落ち込んでくる。


119 本当にあった怖い名無し:2013/10/18(金) 21:18:04.40
そんな葦原を見かねた病院は、ついに「将軍」が正気に戻ったと公表することにする。
その報告に、葦原は見放されたように感じ、更に落ち込む。

主治医は葦原に、
「■チガイを笑えるのは正気の人間だ。ところが今は世の中が狂ってる。
 狂った世の中にキチガ■を笑える人間がいるか?いない。いないのだ。わはは!」
と慰める。

しかし葦原は、「もう一つ別の考えがあると思う」と言う。


120 本当にあった怖い名無し:2013/10/18(金) 21:19:18.86
「それは本当にわしが将軍だったという考え方だ。今のわしは気が狂っているが、
 わしは本当に将軍だったのだ!そうだ、そうに違いない!お前らはわしを騙そうとしているが、
 わしはもう正気に戻ったぞ!わしは再び天下に命令を発し、
 弾丸砲弾爆弾を世界中に降らせ、全世界を鮮血で染める大殺戮を行うのだ!
 突撃!一歩も退くでないぞ!わははははははははははは!」

121 本当にあった怖い名無し:2013/10/18(金) 21:20:48.16
「気が狂った」と主治医は半ば放心状態に陥った。
「彼は気が狂わなければならなかったのです。
 彼は再び狂気に逃げ込まずにはいられない精神状態だったんだ!その気持ちは解ります」
と別の医師。

「この男が狂った時、戦争がありましたな?」と主治医は訊いた。
「では、再び戦争が起こるということですか?」と医者は問い返した。

かくして昭和十二年二月二日、将軍・葦原金次郎はこの世を去った。


122 本当にあった怖い名無し:2013/10/18(金) 21:39:55.32
葦原天皇は実在の人物で、正真正銘の精神分裂病ですよ

 

将軍が目醒めた時 (1976年) (新潮文庫)
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