宇宙のあいさつ(星新一)

391/4:2013/11/18(月) 11:19:37.36
星新一の短編

遥かな未来、地球人は植民地を求めて宇宙に進出していた。

ある宇宙船が有望な惑星を見つけた。
気候は穏やかで有毒生物はおらず、原住民はおとなしく従順な気質。
船長以下乗組員が原住民を尋問しても、
遠い所をようこそ、逆らうなんてとんでもない、いいえ憎むなんてとんでもない、
と従順だが要領を得ない。知能は正常なのだが。

不可解ではあるが植民地に最適、との報告が送られ、惑星は金持ち専用の保養地になった。
原住民は穏やかで従順な気質が喜ばれ、召使いとして地球の上流階級に人気である。

総督となって惑星を管理している船長のもとに、血相を変えた部下が飛び込んできた。


402/4:2013/11/18(月) 11:20:55.09
歴史博物館の地下倉庫に、宇宙船や兵器が山ほど見つかったそうだ。
総督が駆けつけてみると、どれも地球のものより遥かに高度。
なぜ我々が侵略した時にこれで反撃しなかったのか、と不思議に思い
原住民の少年を捕まえて尋問してみると…

「オイコラそこなる少年。お前はこれなる武器の存在を知っておったか」
「うん、知ってるよ。僕らのご先祖が作ったんだ」
「アーコラコラ。お前達はなぜ、我々が侵略した時にこれで反撃せなんだのか、
 使い方を忘れておったのか」
「とんでもない、地球人じゃあるまいし使い方ぐらい知ってるさ。
 でも下手に反撃して怪我をしたり死んじゃったりしたらつまらないじゃないか」


41 3/4:2013/11/18(月) 11:22:06.65
違和感に首をかしげながら尋問を続けると、
少年は老人が青春時代を懐かしむような、若者らしからぬ表情で語った。

彼らの先祖は今の地球人以上に科学力を発展させ、宇宙に進出していた。
しかしある時、段々と寿命が短くなっている事に気づいた。
1世代ごとに1割程度寿命が短くなり続けて、
少年の世代では地球人程度しか生きられない。

「僕らのご先祖はすごかったんだよ、でも僕らには未来がないんだ」
「種族としての寿命が尽きたというわけであるな。誠に気の毒。
 だが案ずるな、お前達の文明は我々地球人が引き継いでやろう」
「そんな事できるのかな、ご先祖の遺物で驚くような人達に」


42 4/4:2013/11/18(月) 11:24:31.92
「それにさあ、種族としての寿命が尽きたって言ってるけど、
 伝染病だったらどうするのさ。おじさん達も感染してるよ、きっと。
 僕らのご先祖がどうにもできなかったのに、地球人なんかに対策できるわけないよ」

原住民が穏やかで従順に見えたのは、未来を奪われた事で気力が失われた結果だった。

「なぜそのような重要な事を言わなんだのか、隠していたのではあるまいな」
「だって誰も訊かなかったじゃないか、どうか教えてください、って丁寧にお願いすれば
 誰かがきっと教えてあげたと思うんだけどな」

少年の顔には紛れもなく、若さと前途を嫉妬する老人特有の表情が浮かんでいた。


44 本当にあった怖い名無し:2013/11/18(月) 11:38:50.76
「宇宙のあいさつ」だね
題名わかれば書いててほしい

 

宇宙のあいさつ (新潮文庫)
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