蟲師/一夜橋(漆原友紀)

1991/5:2013/11/24(日) 20:39:49.52
漆原友紀「蟲師」/一夜橋

深い渓谷のそばにある山村にゼンとハナという恋仲の男女がいた。
あるとき、ハナに村を支援している本家からの縁談が舞い込む。
断れば村への支援は切られ、家族たちは村八分になるだろう。
泣くハナに、ゼンは村を出ようと言う。
俺の家族はわかってくれる、
ハナの家族もハナの幸せを思うならばわかってくれるはず、と言って。

そしてふたりは村を出ようと、深い谷にかかったつり橋を渡ろうとするが、
ハナは途中で立ち止まってしまう。
「こんなふうにふたりだけで幸せになんかなれない」、
「遠くへ行ってもずっと想っている」
と泣くハナに、ゼンは納得できないが、
脆くなっているつり橋を心配してとにかくまず渡ろうと促す。
だが、ハナの足もとの板が砕け、ハナは深い谷底へ真っ逆さまに落ちていった。

到底助からない高さから落ちたハナは、自力で歩いて戻ってきた。
しかし、中身はもぬけの殻になってしまっていた。


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ハナが谷から落ち、戻ってから3年後、ハナの母親は蟲師を呼ぶ。
(その間も医家に診せてはいたが、原因はわからなかった)
そうしてハナを診るためにやってきた蟲師(主人公、ギンコ)は、
これらが蟲の仕業であると見抜く。

村には谷に落ちた者がハナのような状態になって戻ってきて(谷戻りと呼ぶ)、
「一夜橋」が谷にかかる夜に死んでしまうという言い伝えがあった。
これは谷底に住んでいるニセカズラという蟲が日光を得るために死体にとりつき、
力を蓄えて死体から抜け出て、多数寄りあつまって一夜橋となり谷を越えていく、
という生態によるものだと考えると説明がつくと。
ハナはおそらく蟲に寄生されて、生かされている状態なのだろうと。

ニセカズラが力を蓄えて一夜橋を作るのは20年ごとのサイクルだったが、
ゼンの今年60の祖父が産まれた年にも一夜橋がかかったという証言から、
今年もかかるということがわかった。


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ギンコはそのことをハナの母親に告げ、
ハナを最も長く生かす方法は、このままにしておくほかないことを説明する。
だが、ハナの母親は今すぐ蟲を抜いてほしいと言う。
蟲を抜けば、十中八九そのまま死んでしまう。
もし、谷に落ちた時点で生きていたならば、
一夜橋がかかる日に元に戻るとギンコが説明するが、
ハナの母親は信用しない。
とにかく蟲を抜いて、死ねばそれまで、
まともに戻れば良縁があるのだから、と言い募る。

ギンコはそれを拒否して村を出ようとするが、
ハナの母親につり橋を落とされて足止めを食らってしまう。

つり橋を直そうとカズラを集めていたゼンは、ふらふらと歩くハナを見つける。
思わずつかんだ腕が温かく、「まだ生きていてくれてるんだよな」と言うが、
ハナを探しに来たハナの母親がゼンからハナを引きはがしたとき、
ゼンはハナのうなじからニセカズラが抜け出るのを見た。
ハナの母親はハナが息をしていないと言う。


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ハナの母親から逃げ回っていたギンコが、へたり込んでいるゼンを見つける。
ゼンは「ハナが死んだ」と言って茫然としている。
ギンコはニセカズラが力を蓄え、一夜橋を作ろうとしていると察して、
ゼンも村を出たらどうだと言う。
ゼンは、ハナがいたから、ひとり村八分になっても村に残っていた、
ハナがいなくなったら、たぶん村を出る、と言っていた。

そして夜にニセカズラが集まり、一夜橋を作った。
ギンコはゼンに、「この橋は戻れば落ちる」と告げ、橋を渡りだした。
(ニセカズラが逆方向からの力に弱いため)

ゼンも一夜橋を渡りながら、もう忘れようと考えているが、
ニセカズラの一本が手を這ったとき、
ハナのうなじから這いでたニセカズラを思い出して、足を止めてしまう。


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立ち止まったゼンに、ギンコはもう戻れないぞと叫ぶが、
ゼンは「進めない、この中にハナだったやつがいる」と言う。
三年の間、自分がやってこられたのは、ハナが生きていてくれたおかげだ、
抜け殻のような姿を見るのはつらかったが、本当に死んでしまった今よりはずっとましだった、
それを踏みつけて進むことはできないと言って、
ゼンが引いた足の下で、ニセカズラはちぎれ、
ゼンは深い谷底に真っ逆さまに落ちていった。

ギンコはその後、ゼンがどうなったかは知らない。
だが、おそらくは谷戻りになっただろうことが示される。
一夜橋がかかるのはまた二十年後になる。

 

蟲師 (4) (アフタヌーンKC)
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