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704本当にあった怖い名無し:2013/12/08(日) 13:29:24.63
後味悪い話が得意な作家、
津村節子の短編小説「男文字の手紙」

戦争が終わり、三十年ほど経ったある一家。
そこは母子家庭で、海軍のお偉いさんだった父親はすでに他界。
娘二人と、貞淑な女性の見本のような母の三人で平穏に暮らしていた。

ある時、そこに男文字で書かれた手紙が届く。
手紙の送り主は、「自分はあなた方の腹違いの弟だ」と言う。
なんでも、故人である父が、海軍将校として地方に赴任している時に
自分の母と恋仲になり、その間に自分が生まれたのだという。

それが本当なら父親の不倫相手との息子。
会いに行くのを渋る娘たちとは違い、母は寛大な心を見せる。
なんと、父親の形見である金時計をその息子にあげろというのだ。
父親を知らずに育ったその息子を憐れに思ったのだろうが、
会いに行くことになった長女は、疑念を隠せない。
父の不倫の事実が分かったというのに、母は憎しみも悲しみも見せない。
それどころか「海軍将校だったのだし、それくらいは仕方ない」と言う。


705本当にあった怖い名無し:2013/12/08(日) 13:30:07.59
新幹線に乗って会いに行った腹違いの弟は、目印に週刊誌を持っていた。
彼の見せた写真には、彼の母親らしき女性と、父親が、
赤ん坊の彼を抱いて笑顔で写っていた。
娘の自分たちを抱いた時は、こんなに晴れやかな笑顔ではなかったと
長女は複雑な思いに囚われたが、結局父の形見の金時計を渡した。

腹違いの弟が、予想以上に穏やかでいい人だったということもあり、
父の不倫の一件は何事もなく終わったように思われた。

しかし、それからしばらくして。
父親の法事の日。
母は駄々をこね、布団からなかなか出てこなかった。
妻である母がいなければ話にならないと慌てる娘二人だが、
客人が来ると、きっちり着物を着こなして笑顔で応対を始める母。
ほっとする娘たちをよそに会話が続いていく。

「亡くなられた方は本当にいい人でしたから」
と何も知らない知人の言葉に、
「まあ、そうでしょうか」
と母は笑顔を崩さないまま答えた…。


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