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H・P・ラヴクラフト「霧の高みの不思議な家」

とある港町には高い岩山があり、その頂上に古びた家がある。
海側は断崖絶壁で町側は険しい岩山だが、霧の深い夜には窓に灯りが点る。
純朴な漁民は断崖も家も一緒くたに、
あまり高い所にあるので地上より天界に属するものだと畏れているし、
外人の船員は断崖を見て十字を切る。
町で一番年寄りの偏屈爺は、わしの爺様が餓鬼の頃からあの家はあった、と言う。

町で一夏を過ごした哲学者オルニーはあの家に魅せられ、
ある日一人で険しい岩山を登った。
海側は断崖絶壁で町側は岩山、迷信深い町民はあの家を恐れているので
住人は隣町側から出入りしているのだろう。


1872/5:2013/12/26(木) 12:12:28.15
そう思って隣町に行くが、こちらも険しい岩山。
苦労して岩山を登り古びた家にたどり着いたが、
こちら側には磨りガラスの古風な窓しかない。
住人はどう出入りしているのかと首をかしげた時、向こう側(海側)で扉の開く音がした。
しばらくして窓が開き、古風な服を着て長い髭をたくわえた住人が手を貸して、
オルニーを窓から中に入れてくれた。

二人は神話や哲学を語り合い、
住人は神話以前の古い神々の事を話す時に、声を潜め怯えた様子を見せた。

海側すなわち断崖の上にある扉を叩く者があった。
住人は無言でオルニーを制し、覗き穴から外を見てから音を立てずに窓を閉めた。


188 3/5:2013/12/26(木) 12:14:39.27
正体不明の黒い影が磨りガラスの窓から中を窺い、去っていった。

夕方、合言葉のように扉が叩かれ、住人は閂を外し扉を開けた。
渦巻く霧と共に海神や妖精が現れ、住人とオルニーを霧に乗せてどこかに連れて行った。

その夜は岩山を押し隠す程霧が濃く、雷鳴が響いていた。
オルニーは翌朝、心配で眠れなかった妻子のもとに戻った。
魂が抜けたようにぼんやりしていたが元気で、
岩山で一晩過ごしたと言うが服は乾いている。

夏が終わり、オルニー一家は帰った。
オルニーは死んだ魚のような目で真っ当な生活を送り、何かを夢想する事はなくなった。
妻はますます太り、息子は社会に有用な人物になった。


189 4/5:2013/12/26(木) 12:17:51.24
オルニーは余所者嫌いの偏屈爺と親しくなっていたので、爺には色々打ち明けていた。
偏屈爺は後に、彼は彼であって彼でない、あの家に魂を置いてきた抜け殻だ、と語った。

北風が強い濃霧の夜、あの家から笑い声と不思議な音楽が聞こえるようになった。
長老達は、大胆な若者達がそれらに惹かれてあの家を訪れる事を怖れた。
彼らはオルニーのように、光を失った死んだ魚のような目で戻ってくるだろう。
あの家の灯火はますます明るく笑い声はますます陽気になり、
反比例するように町には覇気のない若者が増え、衰退するだろう。
偏屈爺は別の事を憂慮している。


190 5/5:2013/12/26(木) 12:20:06.53
住人が神話より古い神々について話す時、声を潜めて怯える様子を見せた事。
住人が居留守を使った得体の知れない黒い影。
好ましからざる”奴ら”が笑い声に惹かれ、
キングスポートそのものに目をつけるかもしれないのだ。
人外と人間は近づきすぎてはいけない。

1926年執筆、27年ボツ、ウィアード・テールズ誌31年10月号掲載
好きな短編なんだが、町のその後を考えると後味悪いかも。

 

ラヴクラフト全集7 (創元推理文庫)
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