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157 名前:語り部 投稿日::03/04/06 02:15
この前読んだ小説「こわい話をしてあげる」より
「熱風」作:黒崎緑を。

主人公の男が久しぶりに会った家族と旅行に来ていた。
男は1年ほど単身赴任で海外にいて家族と会うのは1年ぶり。
1年ぶりに会った妻はまったく変わってなく魅力的だった。
とても7歳の子供がいるようには見えない。

息子の方はというと、こちらが何を言っても答えず
ただ黙ってゲームをやっているだけ。
嫌われているのか?と男は思った。
まぁ、1年もあっていなかったのだからしょうがない。
これから徐々に慣れていけば良い。
その時はそう考えていた。

ホテルに泊まったその夜のディナー。
おいしい料理と酒のせいか、最初はあまり楽しそうではなかった
妻も笑顔を見せるようになった。
息子のほうは相変わらずだったが。


158 名前:語り部 投稿日::03/04/06 02:15
ふと周りを見るとカップル達がダンスを踊っているのが目に入った。
男は妻をダンスに誘った。
踊り終わった男は、テーブルに戻り目の前の料理を食べようと
スプーンを口に運んだその時、ある物が目に入った。
男は吐き気を催しトイレに向かった。
男のスプーンにはトカゲの尻尾が入っていた・・・。

胃の中のものを全てだし、口をゆすいでる最中男は考えていた。
なんでトカゲの尻尾が?
そして、男はホテルに着いてからのある出来事を思い出した。

ホテルに着いてから洗面所の所でトカゲがいるのを見つけた。
妻はトカゲが大嫌いだったので、捕まえようとした男はトカゲの尻尾を掴んだ。
しかし、トカゲは尻尾を切り離し逃げてしまった。
男の手にトカゲの尻尾のみが残った。
ふと横を見ると息子がものめずらしそうに見ていた。

打ち解けるには良い機会だと思い男は息子にトカゲの尻尾を渡した。
息子は興味深そうに見ていた。
トカゲについて息子に説明をしたあと男は息子に
「お母さんはトカゲが大嫌なんだ、ちゃんとあとで捨てておくんだよ」
と言ったが息子は返事もせずトカゲの尻尾を見ていた。
まだ打ち解けるには時間がかかるか、男はそう思った。


159 名前:語り部 投稿日::03/04/06 02:16
さっき男の料理の中に入っていたのは間違いなくあの尻尾だ。
何故息子はあんなことを?
俺はそれほどまでに息子に嫌われているのだろうか?
まてよ、息子はまだ7歳、ちょっとしたイタズラのつもりだったのだろう
ここで俺が怒ってしまっては息子と打ち解けるのがさらに困難になってしまう・・・

男は何もなかったかのような顔でテーブルに戻った。
妻がしきりに席を立ったわけを聞いてきたが黙っていた。
ふと息子のほうを見てみた、少し震えているようだった。

次の日、「カヌーに乗って無人島へ」といったような内容のツアーに参加した。
周りの美しい景色を見て妻も楽しんでいるようだ。
ふと息子の方を見た。
こちらを物凄い表情で睨んでいる。
男は確信した、俺は息子に嫌われている、いや、憎まれていると。

カヌーの着いた先の島では子供たちが吹き矢を楽しんでいた。
係員が息子をみて吹き矢を渡し、「君もやってみないか?」といった。
最初戸惑っていた息子だったが、そのうち吹き矢をくわえ的のほうに向かった。
係員がやり方を説明していた。
息子はほほを膨らませ吹き矢を的にむかった。

しかし、いつまでたっても吹こうとしない。
男が不審に思っていたその時、息子がくるりとこちらのほうを向き吹き矢をふいた
しかし、吹き矢は男にはあたらず地面に落ちた。
それを見た息子は森の奥へと逃げていった。
何かが切れた男は猛スピードで息子の後を追った。


160 名前:語り部 投稿日::03/04/06 02:18
森を少し入った所で息子に追いついた。
「何であんなことをした!!そんなに俺が憎いのか!!」
男は息子に怒鳴りながら尋ねたが息子は口を開こうとしない。
カッとなった男は息子の首に手をやり力を込めた。
男が気がついた時には息子は動かなくなっていた・・・。

その時後ろから妻がやってきた。
「こんなことをするつもりはなかったんだ・・・・」
動かなくなった息子をかかえ男はいった。
しかし、妻の顔には哀しみの色はなくむしろ喜んでいるようだった。
「わかったでしょう、そのこを育てるのがどんなに大変だったか。」
「こいつは俺に一言も喋らなかった・・・・。」
「当たり前でしょう、うるさいんだもの。
 私がつぶしてやったのよ、その子の喉をね。」
妻が歪んだ笑いを浮かべた
「お前何を・・・?」
「最初のほうはイタイイタイと叫んでうるさいったらなかったわ。
 でもそのうち解ったんでしょうね、わめくとよけいにやられるって。
 それからこの子は喋らなくなったは。そうやって私がそのこの喉をつぶしてやったのよ。」

男は全てを悟った。
息子が憎んでいたのは俺ではなく妻のほうだったのだと。
トカゲの尻尾も妻の皿にいれたものだったのだ。
ダンスから帰ったあと席を間違えて座ったから俺の皿だと勘違いしたんだ。
吹き矢も妻のほうに向かって撃ったのだ。
息子は自分に助けを求めていたんじゃないか?

男は自分が暗い闇に落ちていくのを感じた。
男の手の中には動かなくなった息子がいた・・・・・。

 

こわい話をしてあげる (角川ホラー文庫)
こわい話をしてあげる
(角川ホラー文庫)


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