嗤う伊右衛門(京極夏彦)

643 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/01/31(火) 00:44:55
笑う伊右衛門の一節が中々の物だった

口先三寸で世の中を渡り歩いていたゴロツキの又市は、
町外れのお堂に色狂の基地外婆が住み着いた事を知る。
聞く所によるとこの婆は小金を蓄えていて、
金をやるから抱いてくれと道行く男に持ち掛けているらしい。
又市は金さえ貰えるなら穴は穴だと婆に会いに行き、
お堂の中でいざこれからと言うときに婆の持っていた御守りが目にはいる。
その御守りは自分を捨てた母親の物でこの婆が自分の母親と知り、流石の又市も抱けないでいると
婆が馬鹿にするな!と怒り出した。「私が醜いから抱かないんだね?」と婆は激昂し
金を投げつけ又市はお堂から追い出されてしまう。
その後婆が首を吊って死んだ事を聞き、あの時抱きはしないまでも
添い寝位してやれば婆は死なずに済んだのでは無かったかと後悔する。

笑う伊右衛門は全編に渡って暗い雰囲気が満ちていて良かった。
京極作品の中ではまだ普通の小説並の長さだから時間のある方は是非。

 

嗤う伊右衛門 (中公文庫)
嗤う伊右衛門 (中公文庫)