火星探検(筒井康隆)

127 名前:1 投稿日:2006/05/17(水) 23:02:43
筒井康隆 「火星探検」

火星探検隊の隊員である主人公は、火星へ出発する当日に電車で宇宙センターへ向かう事にした。
電車に乗ると小さい頃からの顔見知りの婆さんと大工のおっさん、小学校の時の教頭などがいて
「火星いくんだって新聞で見たよ。まぁ立派になって」などと和やかに談笑。
火星への日本初の有人宇宙飛行という事で新聞やTVで連日報道され主人公は有名人であった為、
顔見知りでない他の乗客達も主人公にひと声かけに周りに集まってくる。
その中に高校時代の同級生(主人公と仲悪い)がいるのを見つけ不吉な予感が。

教頭が主人公に尋ねる。
「わが国の技術力からして火星へ行くぐらい10年前でも充分だったはず。
 今日の出発はむしろ遅いぐらいでは」
世論を大事にする政府としては莫大な金がかかる計画に
国民の反対がある内は許可出来なかった、と説明する主人公。


128 名前:2 投稿日:2006/05/17(水) 23:03:18
「今でも反対してるやつはいるんだぜ」と同級生がくってかかる。
「俺の給料は25万だ。こいつら火星に行くだけで580億も使いやがる」
それをきっかけに険悪になる車内。
「そこまでして行く必要なんかない」
「わしの年金は18万じゃ」
「俺達の税金を道楽に使うのか」
幸い次の駅で降りるため立ち上がって降りようとすると
「降りるつもりだな」
「こいつを降ろすな!」
「行かせるか!俺の給料は19万8千円だ!」
乗客全員に阻止される主人公。
ただでさえ国民感情に気を使う宇宙開発センター職員としては乱闘になるのは避けたい。
乗客を落ち着かせる為に降りない事を伝え、
自分が火星探検に行けないことを宇宙センターに無線で報告。
センターの方から自分を救出に向かってくれる事を期待していたが、隊長からは
「よし、家に戻り待機せよ。今回は諦めてくれ」
との非情な返答。交代要員はいるし、国民感情に気を使(ryと隊長は考えたのだ。

-今までの長い訓練が全て無駄になってしまった-
泣きたいのと怒りを抑え、勤めて冷静を装い目を閉じる主人公。
その様子がまた乗客達の怒りを買う。
「冷静なふりしやがって」
「あの悪ガキがこんなに生意気になりおってのう」
「復讐する気だ!こいつあることないことマスコミに垂れ流すつもりだ!」
「無知な庶民の集団による暴力とか書き立てるんだろうな」
「俺達悪者にされちまうぞ」
「そんならいっそ前もって仕返しするぞ!」
「よしみんな殴っちまえ!」
主人公は乗客全員に袋叩きにされる。

-終 わ り-


129 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/05/17(水) 23:07:33
終わりかよ!!!!!!!!

130 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/05/17(水) 23:36:49
>>127-128
心から、嫌な話を読んでしまった!という気持ちになった。

149 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/05/18(木) 14:35:04
>129
でも、現代日本人の気質をよく表現した作品かと

 

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