ホーム » 小説 » 小説/は行 » 防空壕(江戸川乱歩)

243 名前:1/2 投稿日:2006/06/02(金) 18:21:13
更に思い出した。これは男性に後味悪い。タイトルは確か「防空壕」。

空襲警報が鳴った。男は慌てて手近な防空壕に飛び込んだ。
そこには先客がいた。暗くてよく見えないが女性らしい。
言葉少なに語り合いながら、二人は息を潜めていた。
轟音と共に火の手が見えた。街が燃えているらしい。
火に映し出された女の顔は、はっとするほど美しかった。
気づいた時、男は女を組み伏せていた。女も抵抗しなかった。

それから数日後。男は女を忘れられない。
あれほど美しく、あれほど激しく身体を重ねたことはなかった。
諦めきれない男は乏しい手がかりで女を捜す。
防空壕の近くを歩き回り、この防空壕に隠れた女がいなかったか尋ねて回る。
だが見つからなかった。女は消えてしまった。


244 名前:2/2 投稿日:2006/06/02(金) 18:21:56
バーの中でママが客と話している。
「この間見た若い男はママのヒモかい?」軽口をママは否定する。
彼は人を捜していたらしい。「でも見つかる事はないでしょうね」
意味深なセリフに客が好奇心をそそられた。促されるままに、ママは言う。
先日の空襲で防空壕の中で彼と会い、彼と身体を重ねた。彼はその相手を捜しに来た。

「じゃあママが相手だと教えてやればよかったじゃないか」
「そんな事できませんよ。だって彼は若くて美しい思い出の人を捜しているんだもの。
もし相手がこんなおばあちゃんだと知ったらショックでしょう。
空襲が見せた夢だったんでしょうねえ。こんな年寄りを美人と間違えるなんて」

 

ペテン師と空気男 (江戸川乱歩文庫)
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