ホーム » 小説 » 小説/ら行 » 来訪者(阿刀田高)

253 名前:1/2 投稿日:2006/06/20(火) 11:47:34
すっかりこのスレの常連な、阿刀田高の短編より。多分未出。
(少なくともこの数スレでは。)

瀟洒な邸宅に住む裕福な若い主婦。5ヶ月前に女児を出産したばかり。
夫と赤ん坊との幸せな日々を送っていた。
そこへ、入院中に付添婦を頼んでいた女性(50代くらい)が唐突に訪ねてくる。
(お若い方はご存知ないかもしれませんが、一昔前は入院すると身の回りの雑用をやってもらう
 付添婦を雇わなければならないという制度があったのです。)

所要があって近くまで来た、赤ん坊の顔を是非見せてほしいと女は言う。
「さぞ大きくおなりでしょうねぇ、本当に玉のような赤ちゃんでしたもの。」
正直、主婦は無教養で品のないこの付添婦にあまり好感情はもっていなかった。
はっきり言って、自分とは階層の違う女、と見下している。
が、入院中には世話になったことでもあり、家にあげる。
女は赤ん坊の顔をしげしげと嬉しそうに見つめ、ほっぺたをつついたり心底愛しそうな様子。
―ちょっと馴れ馴れしすぎない?
主婦はお茶を淹れながら、そこはかとない不快感を覚える。


254 名前:2/2 投稿日:2006/06/20(火) 11:48:04
しばらくして女が帰った後、警察を名乗る電話がかかってくる。
「○田×子(付添婦)をご存知ですね?」
ついさっきまで家にいたとは言えないまま、
「…あの人、何かしたんですか?」と尋ねると、返ってきた答えは
予想を上回る衝撃的なものだった。
付添婦の家から、嬰児の遺体が発見されたという。
付添婦の娘は今で言うdqnで、未婚のまま子供を産み落とした(当然相手もdqn)らしい。
付添婦は孫の将来を悲観して赤ん坊を殺害、失踪したものと思われる―という事だった。
「お宅の住所と電話番号のメモが家に残っていたんです。
 まあ、仕事の都合上で残したメモかもしれませんが、念の為お電話差し上げました。
 万が一、彼女から連絡があるような場合はお知らせください。」
「あの、あの人の孫が生まれたのは、いつ頃のことかおわかりですか?」
「はあ、5ヶ月くらい前と思われます。」
主婦は直感的に悟った。付添婦が殺したのは孫ではない。あの女が殺したのは―
主婦はベビーベッドを見やった。真っ白な羽毛布団に包まれて、すやすやと眠る赤ん坊―

 

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