ホーム » 小説 » 小説/は行 » 覆面作家、目白を呼ぶ(北村薫)

255 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/06/20(火) 11:59:38
ちょっと変則的かもしれないけど、思い出すたびにモヤモヤする話。
推理小説のネタバラシしますので、嫌な人は慌ててスクロールして下さい。
北村薫 覆面作家シリーズより 『覆面作家、目白を呼ぶ』

超お嬢様な探偵役の「覆面作家」(というペンネーム)と、
ワトソン役の担当編集者・良介を主人公にした短編ミステリのシリーズの中の一編。

良介の勤める編集者に素人からの投稿作品が送られてきた。
素人作品とはいえかなり面白く、見所アリということで、良介は作者に直接会いに行くことに。
超お嬢様である「覆面作家」は、その新人作家の住まいの近くに
ゆかりのホテルがあるということでワープロ持参で良介の出張に同行することに。
新人作家の金山さんは電気店で働く地味な主婦だった。
金山さんと待ち合わせし、面会を済ませたその直後、金山さんの職場の同僚も藤崎さんが事故死する。
良介から事故の様子を聞いた「覆面作家」はあっという間にことの真相を察したらしく
金山さんをとある方法で引っ掛けて、森崎さん殺害を自白させる。


256 名前:255続き1 投稿日:2006/06/20(火) 12:00:41
金山さんは去年家を建てた。同じころ、森崎さんは家を建て替えた。
森崎さんは親御さんから何百万か援助してもらえることになったが
贈与税のことが心配で、同じく家を建てていた金山さんに相談した。
税金関連の本を買ってある程度勉強していた金山さんは
親からの贈与を受けても税金が免除される「特例」のことを森崎さんに教えてあげる。
ところが、その「特例」は「新築」に限って適用されるもので、「改築」の場合はその限りではなかった。
あなたの所為で余計な税金を払わされた、どうしてもっとちゃんと調べてくれなかったのか、
贈与税が取られるとわかっていればもっとほかにやりようもあった、
税金に取られてしまった三十万はあなたの所為で失ったのだ、
と、金山さんは森崎さんに散々なじられる。
毎日職場でなじられ続け、気の弱い金山さんはすっかり参って、旦那さんにも相談するが
旦那さんは「余計なおせっかい焼いたお前が悪い」とまるで取り合ってくれない。
金山さんは日に日に精神的に追い詰められていき、ついに森崎さん殺害に踏み切ってしまったのだった…

257 名前:255続き2 投稿日:2006/06/20(火) 12:01:15
「覆面作家」と良介に諭された金山さんは警察に自首して、
その後覆面作家と良介はなんとなく良い雰囲気になって、
話そのものはほのぼのと終わるんだけど
別に悪いことしてないのに、親切心が仇になって
どんどん追い詰められた金山さんが可哀想で、読み終わったあとずっともやもやして胃が重くなった。
金山さんが自首した後、覆面作家が良介に言うせりふ。
「旦那さんが金山さんの立場になれる人だったら、こんな事件は起きなかっただろうな」
「森崎さんも、金山さんも、両方無事だっただろう。
 でも旦那はそんなこと、一瞬も考えないだろうな。ただ驚き、怒鳴るだけだ。
 自分の人生を、奥さんがめちゃくちゃにしたと思うだろうな」

殺害の動機そのものは、ミステリとしてはほんとに些細なことで
たしかに犯人に精神的にガス抜きできる場さえあれば回避できたろうなって思う。
そう思うと確かに、被害者とは別の意味で更に犯人を精神的に追い詰めた旦那さんが一番悪い気がする。
でも、その旦那は自分の罪を悔やむどころか、自分に罪があることに気付くことさえ、永遠にない…

自分にとっては、この手のはなしがいちばん後味悪いです。
現実にもこういう無神経な人ってたくさんいそうだし。


258 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/06/20(火) 12:14:55
>>255
で・・でも、他人の心のうちをいつでも正確に読み取って気遣うなんて
なかなか難しい事だし、軽く考えて流しちゃう事もあって普通だと思うけど・・・
人に気遣ってガス抜きしてもらえなかったら人を殺すような人は、
今回旦那が気づいて回避できても、いつかはまたなんかやらかすのでは。

260 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/06/20(火) 12:59:48
>>255-257
親切心が仇になってどんどん歯車が狂っていく、
みたいな話はホント後味悪いよね。
そのシリーズの漫画版が家にあったと思うから、今度読んでみるよ。

 

覆面作家の夢の家 (角川文庫)
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