ホーム » 小説 » 小説/ま行 » 燃えつきた蝋燭(森村誠一)

559 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/08/30(水) 15:07:24

昔読んだ、森村誠一の短編
厨房の頃読んで、あまりの救いようの無さに鬱になって
それっきり読み返してないので、題名も細かい部分も忘れたけど

ある街の成人式で、この街から輩出した有力議員の講演の内容は
「人には生まれた時に一つのロウソクを渡される。このロウソクが燃え尽きるまでが寿命であり、
 どういう風にそのろうそくを灯すかで人生の価値が違ってきます。
 どうか皆さん人の世を照らす灯りになって輝いて下さい」
・・みたいな演説だったが、それを聞いていた青年Aは感激する。

「僕のロウソクの灯りできっと、将来は母と妹を幸せにしてそして父の
 念願だった家を僕が建てて皆で住むことなんだ!」

Aの父親は大工だった、まだ自分の家を建てられるくらいな収入は無かったが、
真面目に働いていて家族を大事にし「いつかお前達にも立派な家を建ててやるからな」
と言うのが口癖だったのに、まだ幼いAと妹、身体の弱い母親を残して
仕事場での事後であっけなく亡くなってしまった。

Aは幼い頃から母親を必死で支えて、中学を出ると大工の棟梁に弟子入りして
父と同じく大工の道に入った。

母親と妹は進学を勧めたが「そんなお金は妹に残してやって」と取り合わず、
20歳になった今では、自分の収入で家族を養い、ボロいながらアパートに住んで
妹を高校に進学させてた。

Aは真っ直ぐに前を見て生きてきた。どんな苦境にも負けないで、
母と妹を愛し仕事は誠実で腕をめきめき上げてきて、一人前の大工としての独立も目の前であり
彼の夢は堅実で、きっといつかは叶うだろうと誰もが信じていた。

今日の成人式の参加も、仕事があるから・・と渋るAに親方からの、
苦労をしてきたこのAにせめて20歳の記念を、いう好意で休暇を与えられたもので、
式典の後に久しぶりに母と妹と待ち合わせて、少し贅沢な夕食をする予定になっていた。


563 名前:559 投稿日:2006/08/30(水) 15:17:25
続き2

式典が終わって外に出てきた時、「まだ母妹との約束の時間には早いしかな?」と考えていた時、
遠くに見える火事の煙と消防車のサイレンの音を聞いて顔色を変えた
「あれは・・僕達の住んでいるアパートの方向だ!」慌てて火の手の方向に走るA

火事の現場はやはりAの住居のアパートだった。
火の回るアパートに1人残された老人Bは、苦しい息の中で今までの人生を想い帰していたが、
一言でいうならBの人生は毒虫そのもののようなものだった。

女に喰らいついては、その生き血のようなお金をむしり取り、
利用できなくなった女は野垂れ死にしようが何だろうが、容赦なく捨てた。
娘が1人いたが、その娘も今では金蔓でしかなかった。

娘の就職先に押しかけては金をせびり、娘が就職先を変えればその先まで追っていって
酒に爛れた自分が顔を出すだけで、娘は慌ててお金を出して「どうかもう来ないで!」と泣いたが、
娘なら身体を売ってでも父親の酒代ぐらい出すのは当然だ

その娘も結婚したので、その棔家にも酒代をせびりに行き、
娘から「あんたなんか父じゃない!疫病神よ!死んでよ!」と罵られ続け、
今は酒の毒で身動きもままならない状態で、火が迫ってきているのに、誰も助けに来てくれない・・・
なんて不公平な人生なんだ

そこへ「誰かいないか?!」と叫びながら青年が飛び込んできて、Bは火の中から助けられた。
「ありがたい」と思ったのもつかの間、青年の「女の人が2人残っていないですか?」という質問に
Bは腹が立った。


564 名前:559 投稿日:2006/08/30(水) 15:19:10
続き3

なんだ!自分を助けに来てくれた訳じゃないのか!」
Bはその青年が第一に自分を助け出してくれた事も忘れて、
腹いせに「そういえば女の悲鳴が聞こえたよ」と答え青年はまた火の中に飛び込んでいった。

その火事の最中、約束の時間より早めに家を出た、
母と妹は心ばかりの兄への感謝とお祝いの品を持って、約束の場所で待っていた。

「兄さん、きっと喜ぶわよ」「本当にあの子には苦労をかけて申し訳ないわね」
「でも私も高校卒業して働くし、これからは兄さんが幸せになってもらわなくてはね」
「でも兄さん遅いわね・・」

火事の後、新聞に載った「成人式の残劇・・母と妹を助けようと20歳の男性焼死」の
記事を読んであざ笑う顔があった

あのAか感動したロウソクの講演をした代議士だった。
「馬鹿なヤツだ。人の為に死ぬなんて・・どうせ虫けらのような連中だから知ったこっちゃないがな」

何が後味悪いって
一番誠実なAが無残に焼死して、父親の夢も母や妹の希望も打ち壊されて
Aが命がけで助けた毒虫のBが多分これからも、娘さんの不幸の根源になるだろうし、
Aが感動し尊敬した代議士が俗物で・・・で、Aが命がけでやったこと全てが、
結果的に最悪の結果になっただけ、ってことだよな( ´・ω・`)

 

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