邪魔(奥田英朗)

46 名前:奥田英朗「邪魔」1/2 投稿日:2006/10/31(火) 20:20:26
主人公は不眠症の刑事九野。汚職刑事の内偵と放火事件を平行して捜査中。
妻を事故で失い、妻と共に事故に遭いながら生き延びた義母だけが心の拠り所になっている。

九野は素行を疑われている同僚の花村を調査し、
その行動を諌めようとするが逆恨みされ上司と花村の間で板ばさみになる。
一方、放火事件では現場にいた被害者及川を犯人とにらみ、
夫に疑念を抱きながらも子供のためにも夫を信じようとして常軌を逸していく及川の妻恭子を気にかける。
九野は及川に自首を迫るが、警察上層や及川の会社と花村が出入りしているヤクザとの
利権関係が絡む結びつきに邪魔され事態が好転せず、むしろ事件が肥大化していく。
心を磨り減らす九野の義母への依存は強まっていく。

及川への疑いは周囲も知るところとなり、夫が会社の金に着服していた証拠を隠滅するために
火事を起こしたことを知った恭子は、夫を精神的に殺す言葉を吐き続けながらも、
何も知らない子供の幸せのためだけに証拠隠滅を補完すべく行動を起こす。
恭子を亡き妻に重ね見守っていた九野は、恭子を止めるべく追いかけるが、
その九野を、逆恨みが頂点に達した狂気の花村が追いかけていた。


47 名前:奥田英朗「邪魔」2/2 投稿日:2006/10/31(火) 20:23:45
三者は鉢合わせる事となり、九野は短刀で刺されながらも花村を倒し、
恭子に馬鹿な真似は止めるように諭そうとする。
しかし突然の事態に錯乱した恭子はさらに九野を刺すと逃亡する。
事件も子供のことすらも放り投げ全ての現実から逃避して、恭子は盗んだチャリで走り出す。
そのころ九野を心配する同僚たちは、九野の義母が妻と一緒に事故死していた事実を知る。
義母の存在は、妻を失った悔恨と周囲の重圧から圧し潰された末の妄想だった。

九野は義母に救いを求めるも逢うこと叶わず、一命は取りとめるが入院し、
及川はマスコミの注目の中で逮捕される。

及川と花村は社会的精神的にずたずたにされるのは自業自得だけど、
恭子の爽やかな現実逃避っぷりと相まって、及川家の二人の子は
突然過酷な現実に放り出されることを考えると哀れ。
上手くまとめられなくて申し訳ないけど、登場人物全員が常にストレスに
晒され続けて最後まで重い雰囲気のお話です。

 

邪魔(上) (講談社文庫)
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邪魔(下) (講談社文庫)
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