ホーム » 小説 » 小説/さ行 » 芍薬屋夫人(山田風太郎)

178 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/07/09(月) 01:40:55
山田風太郎「芍薬屋夫人」
時は文政。江戸の若き産科医師、鳥吹玄鳳は 
許嫁の父の依頼により長崎、鳴滝塾へと旅に出る。
かの地でシーボルトの蘭学に触れ、しばし入門するも、
江戸に残した許嫁—生家は傾き、豪商からの縁談のある—が、気にかかり、鳴滝塾を後にする。

そうして江戸に着いた玄鳳だったが、彼の許嫁はとうに、悪辣豪商、芍薬屋吉兵衛の妻となっていた。
かつての許嫁に会うことも今やかなわぬ失意の中、シーボルトより学んだ蘭学で玄鳳は江戸で産科医を営む。
けれど彼への嫌がらせは絶えず、ついには暴漢に殴りつけられ河へ落とされ死病を得る。

病み衰えた玄鳳のもとに、恋仇 芍薬吉兵衛が臨月の妻—かつての許嫁、の命乞いに訪れる。
乞われるまま芍薬屋へ赴く玄鳳。
赤子は逆子であった。
ふかい、ふかい暗黒の葛藤のはてに復讐の虜となった玄鳳は
子は助からぬ。赤子の頭を砕き、引きずり出さねば母も死ぬと告げる(実は嘘)
ふたりきりにして、と夫を追い払ったもと許嫁は言う。
「この子は貴方の子なの(身に覚えあるわよね)
 父様に見守られて死んでゆくのなら、この子も私も し あ わ せ 」

うおおおおおおおおおおっと、スイッチ入っちゃった玄鳳はあらん限りの手腕を尽くし、
出産を無事成し遂げるが、彼はまもなく死ぬ。
私は勝ったのです、私の中の悪魔に!ありがとうございます、先生、
貴方の教えで、恋人と我が子を救えたと、シーボルトに感謝した後に、血を吐き命果てる。

だがしかし
後年、シーボルトに会った芍薬屋(妻子同伴)は歩ロリと言う。

「その子が産まれます時はな、大変な難産で、あの玄鳳を私が呼んだのでございます。
 するとあれは恐ろしい顔をして、子供の頭をぶち割らねば出ぬなど申すのです 。
 さようなものかと思っておりましたが、妻はきゃつの顔つき目つきから、非道な恋の逆恨みと見破り、
 一世一代の大芝居、この子はあなたの子と申したら、はははは、あの阿呆、
 死にものぐるいで無事お産を済ませてくれましたわ。涙を流してお辞儀して。
 きりきりまいに飛んでいったそうで—-
 うわは、わははははははは」


189 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/07/09(月) 13:48:33
>>178
お見事なくらい後味悪いな

 

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