ホーム » 小説 » 小説/た行 » 天使のレシート(誉田哲也)

888 名前:1/3 投稿日:2007/07/31(火) 17:28:48
唐突にここでも有名な阿刀田高の迷路が収録されてる
アンソロジーのシリーズに載ってた誉田哲也の天使のレシートを思い出した

主人公は天文部に所属していて、宇宙や星が好きな普通の15歳の男の子。
理系に進みたいが、数学が苦手で国語が無駄に得意なことに悩んでいる。
主人公には憧れている人がいる。コンビニのバイトの人で、なぜか銀髪で、とても綺麗な人。
名札には天使と書いてあり、本名だかどうだかは分からない。

荒川の土手に面している自宅に帰ろうと、ボーっと歩いていると人にぶつかる。
顔を見ると、あの天使さんだった。
天使さんは気さくな感じで「一緒に食べよう」とカラアゲクンを取り出した。
ちょっと驚いたけど、とても嬉しい。聞くと、天使と言うのはそのままテンシと読み、本名らしい。
天使さんが自己紹介で「趣味はカラスの餌付け」と言ったのでどういうことか聞くと、
カラアゲクンを一つ取り出し、空に掲げた。
高く放り投げると、どこからか飛んできたカラスが上手くキャッチした。変わった趣味だ。
主人公は自分の悩みを話す。天使さんはちゃんと聞いてくれている。
「なぜ宇宙が好きなの?」と尋ねてきた。
「太陽系も銀河系も飛び出して、ず~ッと行くと果てに着くじゃないですか。
 その外がどうなっているのか分からないんですけど、僕はその外が明るくなってて欲しいなって。
 将来はそういう事が証明できるような、科学者になりたいんです」
恥ずかしいけど、自分の夢を話す主人公。
だが、今までにこやかな感じで聞いていた天使さんは真顔に戻って「馬鹿じゃないの?」と一言。唖然とする主人公。
「宇宙に果てなんか無いし、その外が明るいわけ無いじゃん。宇宙は神が作った箱庭だよ?
 例えて言うなら神はゲームのプログラマー。プログラマーが作ったところまでしかフィールドは無いでしょ?
 君たち雑魚キャラがフィールドの外に何があるか分かる?分からないでしょ。
 いくら数学の成績が悪い君でも理解できるでしょ」
何も言えないでいると、天使さんは続けた。
「信じないとは思うけど、私は名前の通り本当に天使なんだよ。
 神に操られていて、一人一つの使命をこなせば後は何をしても良いの。羽なんかも無いけどね」

(この人は、なんか危ない新興宗教の信者なんじゃないのか?自分のことを天使って・・・)
逃げようとする主人公。だが、その必要は無かった。


889 名前:2/3 投稿日:2007/07/31(火) 17:30:33
「私、気分悪いから帰る」
天使さんがそう言ったのだ。土手をあがっていく。が、すぐに振り返った。
天使さんは、申し訳なさそうな顔をしていた。(やっぱり、綺麗な人だな・・・)そう思ってしまう主人公。
「あのさ、君の名前教えてくれるかな」主人公が答えると、天使さんは戸惑いながら「君の、妹の名前は?」
答えると、どこかへ走り去ってしまう。主人公は、恋愛の別れだけを突きつけられた感じがして、呆然と立ち尽くす。

ここから天使視点。
自宅に帰った天使さんは一人震えていた。
「なぜ、神は私にこんな試練を与えるの・・・」彼に話したことは全て本当のことだったのだ。
天使さんに与えられた使命は、将来科学者になり、宇宙に悪影響を及ぼす発明をする主人公を、止めること。
その方法は彼の妹をある方法で植物人間状態にして、彼が妹を助けるために医者を志すようにすること。
使命はそれだけだ。だから、妹の顔は知っていた。
たまに買い物に来るので、感情移入しないように冷静に対応した。
だが、兄である彼のことは知らなかった。彼が兄だと知っていたら、今日のようなことはしなかった。
よく買い物に来て、レシートを渡すときに手が触れると恥ずかしそうにする。弟にしたいタイプの子だった。
だが、宇宙の話をし始めたときどうしても我慢がならなかった。
都合の良いときだけ神を信じ、その癖宇宙の果てを知りたいと言う。
だけど、あんなことを言うべきではなかった。あんなに嬉しそうに話してくれたのに。後悔する天使。
(もう、私にはできない)そうは思うが、使命を遂行しない天使は恐らく、消される。
窓を開け、空に向かって叫ぶ。「私は彼女を殺さないよ!どうにでもしなさい!」神からの返答は無い。
その時、彼女はひらめいた。不敵な笑みが浮かんでいた。


890 名前:2/3 投稿日:2007/07/31(火) 17:31:49
ここからまた主人公視点。
翌日、コンビニに行ったが天使さんはいなかった。その翌日も翌日も。
その次の日、意を決して店主らしき人物に聞いてみた。
「あの、天使さんはいないんですか?」
「ああ、君、彼女の知り合い?彼女は4日前に亡くなっちゃってね・・・」唖然とする主人公。
「自殺してね、履歴書も嘘ばっかりで家族もいないから理由が分からないんだ。君知り合いなら何か知らない?」
「ああ、いえ、知り合いといっても別に。あの、これ二つ下さい」
そう言って、天使さんのようにカラアゲクンを二つ買い、店を出た。
主人公はショックだった。一つは彼女が自殺したこと。悲しかった。彼女に、恋をしていた。
もう一つは、彼女の話す宇宙の理論に納得してしまったこと。自分の夢がなくなってしまった。
憂鬱な気分で自宅近くの土手に座り、カラアゲクンを食べた。
この前は美味しかったのに、何の味もしない。涙が頬を伝った。
そういえば――。カラアゲクンを一つ取り出し、高く掲げた。どこかにいるカラスに見えるように。
そして高く放り上げた。どこからか来たカラスはそれを上手くキャッチした。「やった!やった!」
何度やってもカラスは上手く食べる。よくここまで餌付けしたものだ。ふと見ると、自宅の2階の窓から妹が見ている。
「おーい!見てろよー!」窓を開ける妹。主人公がカラアゲクンを放り上げると、また上手くキャッチした。
妹は、柵から身を乗り出して拍手した。
頭上を越えたカラスが一直線にそこに向かう。
妹の体とカラスが重なった。主人公の耳には叫び声が聞こえた。
カラスが飛び立つと、妹の体は真逆さまに落下した。
道路を隔てた土手まで、鈍い音が響いた。

中盤まではなんだこのラノベと思ってましたが、中盤から引き込まれ、ラストで惚れました。
まぁ若干強引な部分があるんですけど。何か不手際がありましたらごめんなさい。


895 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/07/31(火) 18:00:35
天使さんは最後に「あっ私がやらなくてもカラスがやってくれるわ」と
思って不敵な笑みを浮かべたの?

896 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/07/31(火) 18:09:45
>>895
そのへんは明らかにされないんですけど、自殺すれば妹が死なないと思ったんじゃないんですかね。
多分妹を植物人間にする方法もカラスを使って・・・だと思ってます。
まぁその結果多分神が兄にさせたんですけど。
SFなんで良く分かりません、すみません

901 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/07/31(火) 18:51:16
>>888-890
主人公の夢がなくなった時点で神の目的は達成されてると思うんだが。
夢をあきらめさせるための手段だった、妹を植物人間にすることが、
いつの間にか目的になってたんだろうか。
そう考えると視野の狭いショボイ神だな。

 

七つの黒い夢 (新潮文庫)
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