崖っぷち(アガサ・クリスティー)

946 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/08/01(水) 15:46:44
アガサ・クリスティーの「崖っぷち」
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主人公はイギリスの片田舎に住む品行方正な優等生タイプの独身女性。
学校の先生だか家庭教師だかタイピストだか、そんな仕事をして暮らしている。
主人公の幼馴染には生真面目で人のいい田舎貴族の男性がおり、
長年友達以上恋人未満みたいな感じだったが、
その男性は最近になって知り合った都会育ちの派手な女性と結婚した。
「彼、てっきりあなたと結婚すると思っていたのに」という周囲に対し、
「彼とはいいお友達ですから。心からお祝いしています」と答える彼女。

しかし主人公は、偶然にその派手な田舎貴族妻の浮気の証拠を握ってしまう。
彼に告げるべきか告げないべきか。正義を重んずれば告げるべきだろう。
しかしその告げようとする心が、嫉妬ゆえでないと言い切れるか。主人公は悩む。
結局主人公は「彼の心を乱すわけに行かない」と自分に言い訳し、告げないことにする。
しかし浮気は見過ごせないので、件の派手妻を呼び出し糾弾した。
今明るみに出されたら自分も浮気相手も破滅だ、見逃して欲しいと懇願する派手妻。
彼に言うなら自分から言え、相手ともすぐに別れろと告げて
主人公は様子を見ることにした。自分は正しいことをしたのだ、と主人公は満足する。


947 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/08/01(水) 15:47:26
その後主人公は、派手妻に会うたびに浮気の件をちらちらとほのめかした。
派手妻はだんだんと追い詰められ、ノイローゼ気味になっていく。
そんなある日、主人公は例の田舎貴族夫から、妻の要望で遠くに引っ越そうかと
思っている、との話を聞く。
派手妻が逃げ出そうとしていると悟った主人公は、村はずれの崖に派手妻を呼び出し、
浮気の件をばらすと言った。
それだけはやめてくれと懇願する派手妻に、どうしてもばらす、それが正しい事だと
ゆずらない主人公。
どうにもならないと悟った派手妻は、「ならばこうすればいいんでしょう」と
崖から身を投げた。
派手妻が崖を転がり落ち、やがて動かなくなるのを主人公ははっきりと見た。

その後、村の人々が主人公について話している。
「彼女も可哀相に。どうしてああなってしまったんだろう。
あの派手奥さんを殺したのが自分だと言い張るなんて。どう見ても事故か自殺なのに。
入院している精神病院を監獄だと思い込んで過ごしているらしいよ。」
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クリスティー女史のノン・シリーズ短編には結構後味の悪い話が多い気がする。

 

マン島の黄金 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
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