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607 名前:1/3 投稿日:2007/09/28(金) 10:38:01
随分昔にテレビで放映された『英仏米短編映画傑作選』だったかの一編。
中々後味悪い作品が集まった秀作だったのだけど、
DVDはおろかビデオソフトにすらなっていないのが残念。

『アルカディア』

 殺戮機械が地上を闊歩する近未来。
 人々の心も荒み、家族同士ですら銃で互いを牽制し合う殺伐とした世界だった。
 主人公ギャビンはそんな日常にウンザリしながらも、たった一つの楽しみのために生きている。

 家族の脅迫や制止を振り切って外出するギャビン。
 殺戮機械の攻撃を掻い潜りながら辿り着いたのは荒れ果てたショッピングモールだった。
 その中にあるゲームセンターがギャビンの目的地だ。

 一台のゲーム機(※大型プロジェクターの前に、銃型コントローラー付き筐体がある)の
 前に立ったギャビンは深呼吸してコインを投入する。
 何時しか背後に集まったギャラリーからはやし立てる様な声が上がる。
 だが、その恋人であろう少女は罵声を投げかけた彼を叱責するのだった。
 「シッ! あれはギャビンよ! 達人なのよ!」
 その名を聞いた周りの者も静かになり、畏怖や崇拝に似た表情を浮かべる。
 「あれがギャビンなのか。あのゲームの最高得点記録の持ち主・・・」
(※注 スコアランキングはメーカーが設定したとんでもない得点であり、
    それでもギャビンは現在2位のスコアをマークしている。)

 そんな彼らに目もくれず、ギャビンはスタートボタンを押した。
 眼前のスクリーンに広がるのは閑静な住宅地。丁度プレイヤーが歩いている様な視点だ。
 画面の中、突然横から女性が現われ、プレイヤーであるギャビンの眼前に空缶を突き出す。
 「めぐまれない子供たちに愛の手を!」
 一瞬銃の引き金を引きかけたギャビンだったが、彼は引き攣った笑みを浮かべながら
 「ええ・・・どうぞ。少なくてすみませんが」と小銭を寄付する素振りをする。


608 名前:2/3 投稿日:2007/09/28(金) 10:38:45
『VERY GOOD』
 ゲーム機が優しげな男性の声を発し、電子音とともにスコアが加算される。
 その後も”他人のために善行を施す”あるいは”怒ることなく我慢する”といった行動が
 スコア獲得に繋がるシチュエーションが続く。
 緊張のあまり一人を射殺してしまったものの、ついに最終ステージに到達するギャビン。
 ギャラリーも最早呼吸を忘れたかの様に彼の一挙一動に注目していた。

『ファイナルステージに突入しました。続行するなら99カウント以内にコインを投入して下さい』
 ゲーム機の声に応え、ギャビンはコインを投入するが、それは返却口へと戻ってくる。
 着々とカウントダウンが進む中、躍起になってコインを投入するが全て戻ってきてしまう。
 そしてカウントは0となり、『GAME OVER』の声が無情に響くのだった。

 「バカな! そんなバカな!」
 激昂したギャビンは懐から銃(本物)を抜き出し、ゲーム機に突きつける。
 ギャラリー達も怒り心頭で「撃て! 撃て!」と煽り立てる。
 しかし数秒後、震える手で銃を構えたギャビンは、ゆっくりとその手を下ろす。
 「・・・いいさ・・・。また別の日にチャレンジしてみるだけさ」
 引き攣った笑みを浮かべながら銃を仕舞った瞬間。
 『おめでとう! 最終ステージクリアです!!』
 嬉しげな抑揚を持った音声と共にファンファーレが鳴り、
 ギャビンは名実共に最高得点記録者となるのだった。


609 名前:3/3 投稿日:2007/09/28(金) 10:39:41
 ギャラリーの祝福の中、誇らしげにネームエントリーするギャビンの背後に人影が立つ。
 「いつも何処へ行くのかと思ったら、こんなくだらない所にいたんだね!」
 振り返ると銃を構えた母親が喚いていた。
 「さあ! とっとと帰るんだよ!」
 睨み付ける母親に微笑みながら歩み寄るギャビン。
 「ああ、母さん。心配かけて御免よ」
 「ち、近付くんじゃないよっ!」
 銃を構えたまま後じさる母を抱こうとするかの様に両手を広げ、
 ギャビンは心底愛しげな笑みを浮かべるのだった。
 「母さん、愛してるんだ。家族みんなで仲良く暮らそう!」

 母親の絶叫と共に銃口が火を吹いた。

 SFアクションタッチの設定ながら、その実内容はかなりシニカルで印象的な作品。
 『ゲームが人に与える影響』みたいな大袈裟な物ではなく、どちらかというと
 感情移入(ヤクザ映画を観た人が肩を揺らしながら映画館から出てくる、といった現象)の顛末という感じ。
 ともあれ『殺伐とした世界』では『常識的行動』が遊戯になる、という
 アイロニーが効いた佳作ではないかと思うのだわ。


610 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/09/28(金) 10:45:06
>>609
成る程、面白い
文章だけだと、解説聞くまで?だったが

614 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/09/28(金) 11:13:08
これはいいな 面白かった
ちょっとフィリップ・K・ディックっぽいね

621 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/09/28(金) 13:41:44
>>609
最後の母親の行動が意味不明。何で息子を射殺するかなあ
家を出るのを制したのも、機械に頃されないためでしょ?

実際に本編を視聴したらすんなり理解できるのかも知れんが


646 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/09/29(土) 00:26:10
>>621
 家族同士でもいつ寝首をかかれるか分からないという世界観なのだわ。
 実際に殺し合いしちゃうと言うよりは、雛見沢症候群でも発症してるかの様な、
 被害妄想が際立った雰囲気。
 ギャラリーに恋人同士が居た様に、家を出るのを制したのは確かにある種の家族愛。
 ただ笑みを浮かべて歩み寄るギャビンに対する恐怖と緊張が、
 それを超えてしまったというところ。

 リズムの意味でも、本編を観れば自然と受け入れられてしまうのだけど・・・。
 言葉足らずでごめんね。


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