夜陰譚(菅浩江)

896 名前:1/2 投稿日:2007/11/12(月) 01:19:48
ぶさいくで太った外見の主人公
会社の同僚からは見下されているが、その仲間からは離れられる自信もない
自分が見下されていることに気づいているが
皆が話している楽しい話題に肯くだけしかできない

ある日見知らぬ路地に迷い込んだ
そこで木になった真っ黒な眼と四角く空いた口をもつ男に出会う
その路地の電柱に十一という顔形に一本ずつ三本線を引く。
その次に訪問し、電柱に抱きつけば望む物質に変われる事を知る
二度目の来訪で全身銀色の金属(アルミ?)に変身した中年女性を見る
それを祝福する老人(何もかもを飲み込んでしまう泥になるのを希望している)と可憐な少女に出会う
分かり合える人がいることを嬉しく思う主人公


897 名前:2/2 投稿日:2007/11/12(月) 01:21:34
最後の訪問日、そこにはいつぞやの少女がいた
少女は美しく繊細で可憐なガラス細工に変身していた
「これで割れてしまえるわ」
「目の前で割れてほしくない人は、きっと優しくしてくれるわ。たとえ嫌々でも、ね」
「あなたもお幸せにね」
主人公に祝福を言い少女は消える
あれがいい。あんなのになりたい。
電柱にしがみ付く主人公。
変身後、透き通った手をこすり合わせると、カチャカチャ、と音がする
主人公はガラスではなく、アクリルの身体になっていた

同僚から投げかけられるひどい言葉に、傷つく身体は白く汚く曇っていく
ガラスと違い、アクリルは砕ける事はない
いつかはぱっきり割れるだろうか
視界が傷で白くなり、世界は紗に霞む

菅浩江の夜陰譚より
この人の話は、暗いながらもせつない物語がおおいけれど
この話だけは救いようがないと思った

 

夜陰譚 (光文社文庫)
夜陰譚 (光文社文庫)