竈さらえ(見延典子)

313 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/01/23(水) 13:49:23
見延典子の時代小説で「竈(かまど)さらえ」

広島城下の呉服問屋「松藤屋」の末娘の11歳のおりんは、両親、兄達の庇護のもと、
何不自由なく育てられ、真っ直ぐな性格をもった少々お転婆な少女で、
家での窮屈な手習いを嫌って、隙を見つけては家を抜け出すので母親は手を焼いていた。
おりんが例の如く、母親の裏をかいて抜け出しに成功し、友人の家で生まれた子猫を見に行っての帰り、
(可愛さのあまりつい貰ってきた)子猫が腕から逃げ出して追いかけているうちに、
普段なら絶対に入り込まない地域に入り込んでしまう。

そこでおりんは届を出さずに長屋に住み着いている(内所竈という)茂七、おさわ夫婦
息子の10歳の安吉に出会い、その時まさにおさわは出産の最中で、無我夢中でおりんも出産を手伝い、
安吉とも仲良くなって、帰る時には安吉に赤ちゃんのおむつの端切れを持ってくることを約束して家に帰るが、
出産の手伝いで夕刻になったこと、どこに行っていたのか言わなかったことで、
それから長期間おりんは家に厳しく監視されて外出ができなくなってしう。

茂七おさわ夫婦は近隣から出てきて、真面目に働いたが不運が続き、
最後は安吉と3人で橋の下に住む身の上になってしまったが、臨月のおさわの為に
違法であることを覚悟で、せめて出産前後だけでもと勝手に長屋に入り込んでいる状態で、
そのために赤子のために竈を使うことも出来ず、しかも苦労な生活が祟って、
どうやら茂七もおさわも質の悪い病気に侵されているらしく、茂七は弱った身体で仕事も見つからず、
おさわもまともに動けず、乳も出ないので赤子も弱り切っていて、10歳の安吉の力ではどうしようもなかった。


314 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/01/23(水) 13:50:12
そんなある日、軟禁状態のおりんは人々から「今日、竈さらえがある」という噂を聞いて
思わず家人の制止を振り切って家を飛び出してしまう。
竈さらえとは、無届出で城下に住み着いている内所竈を一斉に摘発することで
安吉一家にその事を知らせに走ったが、一足遅く、長屋は摘発にあっておりんが着いた時は、
茂七が弱りきった体を引きずり出されて、妻子に対する目こぼしを頼んで
役人に蹴り倒された瞬間息が絶え、その後ろからやはり病に侵されやつれ果てたおさわが、
とうに息絶えて硬直しているらしい赤子とともにふらつきながら出てくると、その場で崩れるように息絶えた。
そして最後に安吉が放り出されたが、両親が死んでいるのを見ると我を忘れて
「ちくしょう!人殺し!」と役人に殴りかかり、寄ってたかって役人に殴り殺されてしまう。

目の前で、一部始終を見てしまったおりんは、どうやって家に帰ったのか、
両親に叱られてもなにも判らないまま、ただ目の前には安吉一家の無残な情景が目から離れず、
その他の記憶を亡くして明るさや無邪気さを失った、一日中ぼんやりしてすごすだけの少女に変わってしまった。

なんていうか、長屋の人達も安吉一家が内所竈と知っていても、一生懸命庇ったり
茂七もおさわも何とか赤子や安吉のために生き抜こうとしていて、安吉もこの環境で
両親、生まれた妹思いの心優しい少年だったし、おりんもお転婆だがとても真っ直ぐな
心根の少女だったのに、全部が最後は不幸になったのが・・・ ・゚・(つД`)・゚・


317 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/01/23(水) 15:29:51
>>313
なんという子猫の軽視……

って冗談は置いておいて、プロットの要はどこなんだろう。
権力批判?階級社会批判?


334 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/01/24(木) 04:45:24
>>317 弱者は死ぬしかないってことだろ

 

浮き世草紙―女流時代小説傑作選 (ハルキ文庫―時代小説文庫)
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