おばあちゃん(スティーブン・キング)

75 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/07/11(金) 01:06:16
スティーブン・キング「おばあちゃん」

小学生のジョージはおばあちゃんと二人で留守番中。
といってもおばあちゃんは病気で寝たきりなのだが。
パパはいないし、ママはジョージの兄が野球で骨折して救急車で運ばれたと聞いて病院に行っている。

ジョージはおばあちゃんが怖かった。
ぶくぶくととてつもなく太っていて、自分でベッドから起き上がれない。
おむつの上にゴムのパンツを履かされ、巨大なナメクジのようにベッドに寝そべっている。
顔はしわだらけ。すでに見えなくなった目は死んだ魚のようだった。
それに、ときどきわけの分からないうわ言を大声で怒鳴る。
若い頃は魔女と恐れられ、教会や神を堂々と侮辱するような人だったという。
そして彼女の気に入らない人間は、なぜか不慮の死を遂げるのだった。
たとえばジョージの母の大好きだったフランクリン叔父さんとか。
親族はみな気味悪がって、おばあちゃんの世話は末の娘であるジョージの母に押し付けられた。

しかしそんなおばあちゃんは今は死の床に臥している。


76 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/07/11(金) 01:07:28
ひとりぼっちで黙々と宿題を片付けていると、とつぜんおばあちゃんの部屋から絶叫が聞こえた。
驚いたジョージはおばあちゃんの部屋にかけつけると、おばあちゃんはピクリとも動かない。
呼んでも大声で叫んでも全く反応すらしない。
これはとうとう死んだのだと思ったジョージは、急いでかかりつけの医師に電話しようとするが、
なぜか電話は繋がらなかった。何度受話器を取ってみても発信音さえしない。
外は大嵐で、もうすぐ日も暮れる時間。

それから宿題の続きをしつつも、医者になんと言って電話をかけるか、母親が帰ってきたら
なんと言うかを頭の中でリハーサルしていた。
すると次第に、「おばあちゃんは実は死んでないのでは?」という考えに取り付かれる。
そう、おばあちゃんは生きている。そして早とちりした自分は医者に呆れられ、兄には散々に
馬鹿にされることになるのだ。みんなの笑い者にされる。
そんなはずはない。あれは死んでる。そう思ってみてもどうも納得できず、おばあちゃんに直に
触って確かめて見ようと思った。

勇気を出しておばあちゃんの部屋に戻り、腕にそっと触ってみる。
おばあちゃんはすっかり冷たくなっていて、やはり間違いなく死んでいる。
すると突然、死んだはずのおばあちゃんが起き上がってきた。
もはや足腰も弱って立ち上がれないはずのおばあちゃんが、起き上がって自分を抱きしめようと
両手をこちらに伸ばしてくる。
しかも聞いたことも無い不気味な呪文を唱えながら。
見えないはずの目は、はっきりと自分の顔を捉えているのが分かる。
「ああ、やっぱりおばあちゃんは魔女だったんだ。僕を狙っていたんだ。」


77 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/07/11(金) 01:08:34
半狂乱になりながら家の中を逃げ回っていると、突然電話が鳴った。
それは、母の姉のフロー伯母さんからだった。
「ねえ、ルース(ジョージの母)なの? おばあちゃんは大丈夫? こっちは突然酷い嵐よ。
 前にもこんなことがあったわね。たしかおばあちゃんが…私、怖くて」
ジョージは慌てて伯母さんに助けを求めた。
「おばあちゃんが!? それならこう唱えてジョージ。”眠れ、安らかに眠れ、ハスターの名に誓って!”と」
話の途中で受話器はおばあちゃんにもぎ取られる。
しかしジョージはおばあちゃんに向かって声を限りにして叫ぶのだった。
「眠れ! ハスターの名に誓って! ハスターだぞ!」
おばあちゃんはそうしている間にもジョージの首に手をかけて…

1時間もすると、ママが帰ってくる。嵐はすっかりおさまっていた。
「ジョージ、留守の間に何かあった?」
「それが、おばあちゃんが死んじゃったんだ…」
「その他に、何もなかった?」
「嵐で木が折れて、家の中に飛び込んできたよ」
ママはよろけながらおばあちゃんの部屋に行くと、数分して戻ってきた。
「おばあちゃんがこれを握っていたんだけど…」
ママが差し出したのは、ジョージのシャツの赤い切れ端だった。
「うん。後で話すよ、ママ。今は疲れて何も話したくないんだ。」

ジョージは部屋に戻って暗闇を見つめる。
その顔には、不気味な暗い影が宿っていた。
数十年ぶりに体が軽いし、もやが取れたように頭もはっきりとしている。
今まで思い出せなかったことを次々と思い出す。
フロー伯母さんは今頃、脳内出血で急死しているはずだ。
これからは何もかもが大きく変わる。変わっていくだろう…


79 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/07/11(金) 01:14:48
ジョージの魂が乗っ取られたって事なのかな?

80 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/07/11(金) 01:19:03
そのようです。
作中にはあちこちに「おばあちゃんがジョージの若い体を狙っている」と思わせるような
描写がありました。

おばあちゃんは子供のできない体だったんですが、ある「黒い本」を手に入れてからは
子供が次々と生まれ、不思議なこともできるようになったみたいです。
その代わりに教会に行かなくなって神を罵倒するようになったんだとか。


91 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/07/11(金) 02:45:57
>>77
遅レスごめん。
なんでジョージは呪文を言ったのに乗っ取られたの?
一言一句同じじゃなかったから?

92 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/07/11(金) 02:48:15
>>91
叔母さんの話は途中だったようだから、他にもやらなくちゃいけないことがあったのかも

114 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/07/11(金) 20:25:24
>>91
ジョージの台詞よく見てみると、伯母さんに教えられたのは
「眠れ!安らかに眠れ、ハスターの名の下に!」だけど、
ジョージは「眠れ!ハスターの名の下に!ハスターだぞ!」となってる。
恐らく伯母さんが教えたのは魔術の呪文のようなもので、呪文というのは一語一句正確でなければならない。
なので、ジョージが言ったのは日常会話のレベルなら同じ様な意味になるけど、
呪文としては全くデタラメなものなので、おばあちゃんには効かなかったって事なんじゃないかと。

115 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/07/11(金) 20:43:43
もっと早くに教えてやれよ

116 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/07/11(金) 21:02:34
つい、ハムスターって言っちゃったんだな

133 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/07/11(金) 23:10:21
>>91
お婆ちゃんに魂乗っ取られたというよりは
何かの力にとっつかれて(あるいは得て)人格が邪悪に変貌した、という感じだった。
最後の独白だと記憶はジョージのものだし。
「兄がいままでどおりに自分を扱おうとしたらどうなるか・・・」
とか考えている

 

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