漂流船(鈴木光司)

440 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/07/16(水) 10:25:15
その短編集では、目玉の模様の貝殻拾うのが怖かった。うろおぼえだけど。

貨物船だか何かの大型船が、帰港中に無人の小型船が漂っているのを見つける。
それを牽引して行くことになったが、誰か一人管理者としてその小型船に乗る事になり、
船という閉鎖空間での人間関係の軋轢にうんざりしていた主人公は、
その役を自分から引き受けた。
小型船に乗り移り、見つけた航海日誌を主人公は読み始めた。
この船の持ち主である男は、バカンスに妻と娘を乗せて航海に出ていたのだ。
微笑ましい家族の日常を綴ったそれが、娘が小さな瓶を拾い上げたのを期に、
だんだんと歪んでいく。瓶の中には目玉のような模様のついた貝殻が入っていた。
父親はそれを忌まわしく感じ、捨てるように言うが、娘は嫌がって持ち込んでしまう。
それから家族間で不和が耐えなくなり、父親は妻と娘を殺さなければという
強迫観念に取り付かれてしまう。しかし自分でもその異常性を解っており、
これはきっとあの目玉が原因だと考え、捨てようとするが……
そこまで読んで、主人公はうとうとと寝てしまう。

主人公が目を覚ますと、大型船は影も形も見えず、
連絡を取ろうとしても、無線も通じない。寝ている間に牽引綱が切れたらしい。
おとなしく救助を待とうとするが、海に飛び込まなければいけないとの
脅迫観念に悩まされ始める。
憎悪の念を持つ無数のモノ達に思考を支配されてゆく感覚に、
日誌に書かれていた目玉の事を主人公は思い出す。
その目玉がどうなったかを知るため、日誌の先を読み進むと、
妻と娘への憎悪に耐えながらも、必死に目玉を探し出し、
捨てようとする父親の姿があった。娘が何処かに目玉を隠してしまった、
畜生!あの餓鬼、何処に隠しやがった!という記述で終わっている。
どうしても目玉を見つけられない主人公は、救命ボートで脱出することにしたが、
邪悪なモノ達の念は余計に強くなる。非常用食料等の荷物も捨ててみたが
何も変わらない。

海を漂う無人の救命ボートの隅に、小さな瓶が転がっており、
その中には目玉の模様が付いた貝殻が入っていた。

 

仄暗い水の底から (角川ホラー文庫)
仄暗い水の底から
(角川ホラー文庫)