ホーム » スレ別 » 後味の悪い話 その98 » 憎しみは終わらない(関よしみ)

714 名前:本当にあった怖い名無し :2009/01/06(火) 15:37:36
「憎しみが止まらない」っていう短編

女子中学生の主人公は先日、父の仕事の都合で、
まだ幼児の妹と両親と共に引っ越しをした。
大学生の兄だけは通学に不便になってしまうからと、実家に残っている。
実家にいたころ隣の家に住んでいた親友との別れは辛かったが、
新しい学校でAという友人もでき、イケメンなクラスメートともいい感じになり、
主人公は新しい生活を楽しく送っていた。

Aには兄がいる。進学に失敗して以来、精神を病んでしまっているという。
普段は家に引きこもっており、たまに思い出したように外を徘徊している。
見かけるたびに主人公は気持ち悪く思っていたが、それを理由にAを差別したりはしなかった。

Aとイケメンと共に下校していた主人公は、女性の悲鳴を聞いた。
声のする方に行ってみると、そこには血まみれの母の姿が。
ナイフをふりかざしているのはAの兄であった。傍では、主人公の妹が血だまりの中で倒れていた。
やがて、Aの兄は逮捕された。シンナーに手を出していたAの兄は錯乱していたのだという。
主人公の母と妹は亡くなった。
葬儀には多くのマスコミが駆けつけ、彼らの前でAは主人公に向かって謝罪した。
許せるわけがないと、主人公は泣きながら自室に篭った。
主人公の父は、あなたが悪いわけではないとAを励ましながらも号泣をおさえられなかった。

主人公は静かに心を慰めたかったが、マスコミが連日ドアの前で騒ぎ続けており、心休まらなかった。
それでも時が経つにつれやがて癒えていき、マスコミも引いていったので、久しぶりに登校することにした。
その途中の道でギョッとする。Aの家壁一面に「人殺し」などの罵声の言葉が書かれていたのだ。
でも、母と妹の命を奪った者の家なのだから仕方がない、むしろいい気味だとさえ主人公は思った。
教室に着くと、みんなが主人公を労り慰めてくれた。だが、続いて出てきたイケメンの言葉に主人公は驚いた。
「辛いだろうけどAのことを許してやってあげてくれ 家族だからとAや両親のことまで世間は叩き続けている
 Aも事件以来学校にきていない、追い詰めたら一家心中にでもなりかねない
 それにAの兄は、昔は俺ともよく遊んでくれたし根は悪い人じゃないんだ
 一時的におかしくなってしまっていただけで、きっと悔いている」


715 名前:本当にあった怖い名無し :2009/01/06(火) 15:39:27
そう言ったのはイケメンだけではなく、
クラスメートの皆が主人公に対するのと同じく、Aのことも心配していた。
Aも事件の被害者のようなものであると言われるが、
主人公にとってAは最早、家族を奪った殺人鬼の身内でしかなかった。
実際に家族を亡くしたわけじゃないからそんなことを言えるのだと主人公は泣き叫んで帰宅した。
Aの兄はもちろん、Aも、Aを擁護するクラスメートたちも憎くて仕方がなかった。

この街に引っ越してこなければ母と妹は死ななかったのにと、主人公は前に住んでいた家に帰ろうと、
電車に飛び乗り、泣きつかれてやがて眠った。
眠りながらも「憎い憎い」と寝言を言い、泣き続けた。
実家の最寄駅への到着を知らせる放送で目覚めかけた時、誰かが主人公に言った。
「人を憎んでいては幸せにはなれませんよ」
声の主はいなくなっていた。

親友と再会する主人公。親友は主人公を心配しつつ、自分の家も大変な状況なのだという。
十日前から親友の姉が行方不明になっているのだ。
帰宅した主人公は異臭に気付く。なんと、女性の腐乱死体があった。
女性は親友の姉であり、殺したのは主人公の兄だった。
二人は恋仲にあったが、ケンカで突き飛ばした結果、死なせてしまった。
事故みたいなものなら今からでも自首してと主人公は兄に言うが、兄は断る。
「知らないのか? 東京の刑法が変わったんだ。人殺しは同じ方法で公開処刑されてしまうんだ」
それは過失にも適用される。つい先日にも、ラグビーの試合中に相手を転倒させ首の骨折で死なせた選手が、
首の骨を折られて処刑されるところがテレビで流れたばかりであったという。

兄は逃亡してしまったが、事件は公になり、今度は主人公らが殺人犯の家族として苛まれることとなった。
「お兄ちゃんを死刑にするならお母さんと妹を殺した奴も死刑にしてよ!」
と主人公は警官に言うが、その条例は東京都だけのもので、他のところでは適用されないという。
理不尽だ、ひどいと泣く主人公をマスコミをはじめ様々な人が追いかけてくる。
石を投げつけてくる群衆に父は怒るが、人殺しの身内が偉そうにするなと笑われる。
群衆の中には親友もいた。彼女が自分を許してくれないことを、主人公が一番よくわかっていた。


717 名前:本当にあった怖い名無し :2009/01/06(火) 15:43:03
やがて、A一家が心中し、その報告を聞いたAの兄も自殺したとの報せが入った。
「家族の罪を自分たちで償うと一家の遺書には書かれていたそうです あなたたちは償わないんですか?」
マスコミの人々がそう言ってドアを叩き続ける。
葬式で、土下座し続けるA一家を前にしても主人公の怒りはおさまらなかったが、
心中の報告を聞いても、全く心が晴れる気がしなかった。
そこに、イケメンから電話がかかってきた。
「Aの支えになれなかったことが悲しい お前は辛くても死んだりなんかしないでくれ みんなお前を待っている」
その言葉に涙ぐみ、前向きに生きていこうと決意した矢先、父が突然主人公の首を絞めてきた。
兄がついさっき逮捕されたのだという。明日には公開処刑されることになる、
だから先に行って兄を待ってあげよう、そして向こうで家族一緒に暮らそうという。
「どうしてこんなことになっちゃったの 誰を憎めばいいの わからないのにただ憎い」

「人を憎んでいては幸せにはなれませんよ」
誰かの声で目覚める主人公。電車が駅についたところだった。全て夢だったのだ。
家に着く途中で親友に会った。姉が十日前から行方不明になっていると聞く。
あれは正夢だったのか、また夢と同じ事になってしまうのでは…恐れる主人公。
家までの道に電話ボックスがあった。主人公はAの家に電話をかけた。
留守番電話に向かい、葬式の時にひどい態度をとってしまったことを謝った。
すると、Aが電話に出た。マスコミからの電話ではないかと様子を伺っていたのだった。
「主人公が謝ることはない お兄ちゃんの罪はあたしが償うから、あたしの方こそ許してほしい」
Aは遺書を書き終えたところであった。主人公は、死んで償おうとするのだけはやめてと懇願した。
「人を憎んでる間は幸せになれないって知らない人に言われたの
 あたしは幸せになりたいから、Aにも幸せになってほしいから、がんばろう」
電話の向こうでAは、泣きながらありがとうと繰り返し言った。

「お母さん、ごめんね でも二人の死を蔑ろにするわけじゃないの」
主人公はそう心の中で謝りながら、なにがあっても負けないと念じ、実家の扉を開いた。

終わり


718 名前:本当にあった怖い名無し :2009/01/06(火) 15:54:54
>714 いい話じゃあないか 殺人犯の家族が自殺しないのが後味悪いのか?

719 名前:本当にあった怖い名無し :2009/01/06(火) 16:18:12
結果良ければ全てよし、ではないってこと

720 名前:本当にあった怖い名無し :2009/01/06(火) 17:02:22
>>718-719
いや、よく読めよ。
主人公の親友の姉は行方不明のままだぞ?

721 名前:本当にあった怖い名無し :2009/01/06(火) 17:05:13
>誰かの声で目覚める主人公。電車が駅についたところだった。全て夢だったのだ。
これ別に許したんでも憎むのやめたんでもないよな。
「お前も殺されたくないだろ、殺されたくないなら憎しみを出すな」と
脅されて押しつけられただけだな。

722 名前:本当にあった怖い名無し :2009/01/06(火) 17:10:55
>>721
許せたわけではないかもしれないけど、ただ憎んでいるだけじゃ先へは進めない
ことに気付かされた、と解釈すれば別に脅しでも押し付けでも無いんじゃない?

728 名前:本当にあった怖い名無し :2009/01/06(火) 20:19:09
主人公が考えを改めたことで未来が変わりA姉は生きていると勝手に脳内補完していたが、
そうすると母・妹が浮かばれないか

729 名前:本当にあった怖い名無し :2009/01/06(火) 20:22:33
Aが救われても主人公一家が石を投げつけられる未来は変わらないんだろうなと思った
充分後味悪い気がする

730 名前:本当にあった怖い名無し :2009/01/06(火) 22:19:09
少なくともA一家と自分達の心中の未来は避けられるかも。
自分も未来が変わったんだろうと脳内補完して良い話だと思ったわ

748 名前:本当にあった怖い名無し :2009/01/07(水) 16:55:28
>>714
関よしみの「憎しみは終わらない」だよな?

 

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