艶漢/第二話「合わせ鏡」(尚月地)

103 名前:1/4 :2009/01/16(金) 14:46:54
最近読んだ漫画、軽くBL臭がするけど一応ノーマル
尚月地「艶漢(アデカン)」

舞台は明治大正風の日本と大陸のどっかが入り混じったようなカオスな架空の地。
謎の美青年・詩郎は、幼少時から暗器使いの殺し屋?として怪しげな集団で訓練を受けていて、
そこを抜け出したと思われる。
普段はぼんやりした変人で、今は傘張り職人として暮らしている。

正義感の強い熱血青年警察官・光路郎は、とある猟奇事件がきっかけで詩郎と知り合い、
戦闘能力は高いが人として生活能力に欠けている詩郎を見かねて世話を焼いたりしている。

↑ここまでが前提。詩郎の過去に迫りつつ猟奇事件解決する形式。

全体的に猟奇事件とその裏にある人間の業みたいなのを描いてる漫画なんだけど、
個人的に一番後味が悪かったのは「合わせ鏡」という話。

良家の子女、蓮見子(はすみこ)と菖蒲子(あやめこ)は双子だが全く似ていない。
真っ直ぐな黒髪の美しい美少女蓮見子に対し、天然茶髪で縮れ毛、そばかすだらけの菖蒲子。
見た目のせいもあり、明るく快活な性格の蓮見子と、うじうじ大人しいインドア体質の菖蒲子。
良家の子息であるイケメン婚約者もいて勉強もできる蓮見子、
婚約どころか男友達もおらずうじうじした性格のせいで親にも期待されていないため、
陶芸を趣味とし、自分に付き従う地味な中年執事と日がな一日家に篭っている菖蒲子。
とにかく、出来る子出来ない子、といった感じで正反対。


104 名前:2/4 :2009/01/16(金) 14:47:34
菖蒲子は近頃起こっている良家の青年ばかりを狙った猟奇殺人事件の犯人が、
もしかしたら自分なのではないかと恐れている。
それは、殺された青年がいずれも自分が恋した(好きになるだけで告白したわけでもないが)男性ばかりで、
事件が起こった後、殺された青年のものと思われる男物の所持品が、自分の知らない間に
自室に増えているため、記憶がないだけで自分は恐ろしい殺人鬼なのでは…と思い悩んでいた。
殺された青年たちはいずれも身体を高温で焼かれており、かろうじて焼け残った遺体を発見できた状態。
菖蒲子は趣味の陶芸で自分用の窯も持っていたため、本当に自分が犯人なのではと疑うしかなかった。

ある日、傘売りをしていた詩郎が双子の前で空腹で倒れたことから、
詩郎は双子のお屋敷に運ばれ、もてなされる。
変人だが稀に見る美青年である詩郎に双子は揃って心を動かされる。
(恋するというか、ちょっといい男じゃない…くらいの)
とりわけ、喪女である菖蒲子は男慣れしてないのでドキドキしていたが、
容姿を鼻にかけて気の強いところのある蓮見子がそれをからかう。
「あんた詩郎さんに恋したの?その容姿で?プギャー」みたいな感じ。
惨めさに泣きそうになる菖蒲子の縮れ毛を意味深にエロく食む詩郎。
「あんたの髪が太陽の色だから食べたら太陽の味がするかと思って」
みたいな事を言って、菖蒲子をたらしこむ詩郎。

無視されたというか、下に見ていた菖蒲子だけが詩郎にちょっかいを出されたことで、
プライドを傷つけられたと感じた蓮見子は、後日詩郎が一人でいる所に声をかける。
菖蒲子へのあてつけで詩郎を誘惑するか、菖蒲子の良くない話をするか…と企んでいたが、
何者か(覆面をしてたか何だかで正体不明)が背後から詩郎を殴って昏倒させ、詩郎は攫われる。


105 名前:3/4 :2009/01/16(金) 14:49:54
半狂乱となって屋敷に戻った蓮見子、屋敷には菖蒲子と警官である光路郎らがいる。
蓮見子は、以前より菖蒲子を連続殺人事件の犯人ではと疑っていた事を吐露。
「さっき詩郎を襲ったのもお前だろう、根暗ブスのくせに恋なんかして、
 かなわないと思うから相手を殺すんだ、殺人鬼!」
と責めたてる。
しかし、その時刻、菖蒲子は自らを連続殺人犯ではないかと疑って警察に相談しており、アリバイは完璧だった。
「今までの事件はわからないが、詩郎を襲った犯人は絶対に自分ではない」と言う菖蒲子。
取り乱した蓮見子は、今まで菖蒲子の部屋に被害者の持ち物を置いたのは自分だと告白。
(本物だったか、ただの男物を被害者の物としていたか忘れたが多分後者)
「菖蒲子が犯人でもそうじゃなくても、自分がやったんだと思って悩めばいいと思った。
 アンタなんか大嫌い、いつも自分ばかり被害者面をして!私のほうが恵まれていると思っているでしょうけど…」
と、蓮見子は菖蒲子への嫌がらせの動機を告白。蓮見子いわく、
「自分に対する親の期待は高すぎ、菖蒲子が級友と遊んでいる間でも私は自由に遊べず勉強ばかり。
 立派な婚約者というが、親に薦められ初めて二人で会ったその日に
 婚約者が自分にした仕打ち(明記されないが、デートレイプされたらしい感じ)を
 私は忘れない。しかもあんな男が婚約者で拒むことも許されず、このまま結婚しなければいけない。
 ブスだろうが、自由に恋できる立場の菖蒲子に私の悔しさなんかわからない」

今まで蓮見子には何のコンプレックスもなくひたすら恵まれていると思っていた菖蒲子は愕然とする。
しかし、菖蒲子が犯人でなく、証拠品も蓮見子の捏造だとしたら真犯人=焼窯を使えた人物は誰か…?

場面が変わり、その頃詩郎は菖蒲子の焼窯に囚われていた。
真犯人は菖蒲子の中年執事だった。
執事は菖蒲子が心を動かされた男性がいると、端から捕まえて殺していたのだった。
詩郎も殺されそうになるが、そこは戦闘能力の高い暗器使い。
足に怪我を負いつつも、詩郎は執事を倒し、そこへ双子と光路郎、警官らが到着。


106 名前:4/5(ごめん、分割ミス) :2009/01/16(金) 14:50:47
真犯人が執事だったことを知った菖蒲子は豹変する。
今までの気弱なうじうじ少女が一変して暴力女と化し、
「てめぇだったのかよ糞野郎!!!」などと執事を口汚く罵りながら蹴りまくる。
警官らは豹変した菖蒲子にびびりつつもそれを止めるが、
執事は病的に菖蒲子を恐れ、「申し訳ありません菖蒲子様…」と繰り返す。

コンプレックスの塊である菖蒲子は、恋をすると情緒不安定になり、
毎日のように執事に暴力を振るいまくり、執事はそれに耐えかねて、
菖蒲子の想い人を殺すことで暴力から逃れようとしていた。
執事の老母も双子のお屋敷に世話になっており、菖蒲子に逆らうことはできなかった。
ただただ菖蒲子が恐ろしくてやったことだ……と執事は自供した。

暴力女である裏の顔を見せた菖蒲子に、蓮見子は泣きながら詫びる。
「私たち、似てないと思ってたけどこんなに似ていたのね。
 相手を羨んで醜く嫉妬して人を傷つけて…合わせ鏡のようにそっくりだわ」


107 名前:5/5(最後) :2009/01/16(金) 14:51:39
真犯人=執事 は逮捕され、後日、光路郎は事件で怪我を負った詩郎を病院に連れていくため
嫌がる詩郎を背負って町を歩いていた。
偶然、詩郎の眼にうつる、かの双子の姿。菖蒲子はコンプレックスだった髪を巻き髪にし、
表情もすっかり変わって美しく華やかになっていた。
「蓮見子、最近私綺麗になったって言われるの。殿方にもたくさん声をかけられるわ。
 やっぱり、羨ましいと思っていた相手が実は自分が思っていたほど恵まれていなくって、
 幸福でもないって知ったせいで、コンプレックスが無くなって心の余裕が顔に表れたんだと思うの。
 毎日楽しいわ。ありがとうね、蓮見子」
対する蓮見子は、なんとも言えない悔しげな表情で菖蒲子のモテ自慢話を聞くしかない。
「いっときは傘張りの男性に恋したりもしたけれど、あれは心の迷いだったわ。
 私にはもっとふさわしい家柄の、見目麗しい男性が山ほど交際を申し込みに来るんだもの。
 あの方は私にふさわしくなかったのだわ。ねえ聞いている?蓮見子…」
完全に立場が逆転した双子。
詩郎はすこし悲しげに眼を伏せ、光路郎には気づかせぬよう黙ってその場を去るだけだった。

———————–
何が後味悪いって、ありがちな
「執事が、ブスだけど心の優しい菖蒲子に惚れてて殺人を犯した」パターンでもなく、
「この事で改心した蓮見子とそれを許した菖蒲子、以後は姉妹仲良く暮らしましたとさ」でもなく、
菖蒲子が執事を殺人に走るほど追い詰めておいて罪に問われるどころか幸せになってるところ…
スイーツ化した菖蒲子以外みんな不幸というか。菖蒲子も本当の幸せにはなれないかもしれないけど。
罪として裁かれるべきはそりゃあ執事だけなのかもしれないが、言いようのないもやもやが。
人間の嫌な面を嫌~に見せられた感じ。
なかなか面白い漫画だった。


109 名前:本当にあった怖い名無し :2009/01/16(金) 15:53:46
>>106
これはギャグか?W

110 名前:本当にあった怖い名無し :2009/01/16(金) 17:50:32
>>109
いや、別に菖蒲子豹変もギャグではない
人格障害か何かみたいに急に攻撃的になって、かなりおかしい(笑えるではなく病的だという意味)
かなり絵が綺麗な漫画なので表情とか怖い

ギャグというなら終始詩郎がノーフン(ノー褌)主義でぶらぶらさせてて、どんなに後味悪くてもオチで
お前褌つけろって言っただろ!! 嫌です!! みたいなアホなやりとりがあるところがギャグ

 

艶漢(アデカン) (1) (ウィングス・コミックス)
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