地球はプレイン・ヨーグルト(梶尾真治)

729 名前:本当にあった怖い名無し :2009/02/25(水) 14:56:12
梶尾真治「地球はプレイン・ヨーグルト」

地球にUFOが墜落し、乗ってた宇宙人が二体、回収される。
二体とも死んでると思われたが、一体は蘇生した。

タコのような姿をした彼らは「味覚」によって会話をする。
彼との対話のために様々な料理人が集められる。
日本を裏で動かしてるとも言われる美食・奇食家の老人が宇宙人の「言語」を聞き取り
味覚に対応する意味を言語学者が分析しデータベース化して彼らの「辞書」を作り、
こちらからの質問に対応する「味」を料理人が用意する、と言う形で会見は進む。

味見役の老人は、金に任せて世界のあらゆる食を極めてしまい、未知の味に飢えている。
いまだ味わったことのない、至上の美味が存在することを夢想している。

会見の目的はUFOのエネルギー源の解明。
上手く行けば地球上のエネルギー問題は全て解決。
なのだが、会見が進むにつれてその宇宙人は配偶者と旅行してた一般人に過ぎず、
UFOの構造やエネルギーに対する科学的知識は皆無であることが判明。
「掌の肉のステーキの味」で示されるそのエネルギーが何なのか、地球上にあるものなのか、
それすらわからず、会見は徒労に終わる。

宇宙人は、配偶者の安否を気にしている。
一度死んでも外傷さえなければ生き返れるのだ、と彼は言う。
言葉を濁す役人たち。
実は、死んでいると思った時点で一体は解剖されてしまっていた。
つまり、もう生き返らない。
役人たちは、配偶者の死を隠し、彼から情報を引き出そうとしていたが、
もうこれ以上得られるものはないと判断し、彼に配偶者の死を告げる。


730 名前:本当にあった怖い名無し :2009/02/25(水) 14:57:09
告知の決定に、解剖を担当した役人が乱心する。
「次は俺をあいつに食わせる気か」とわめき散らし、手当たり次第にものを投げ始める。
ラー油とタバスコのビンが飛んで行き、宇宙人の味蕾に中身が降りかかる。
宇宙人が瞬時に反応し、激しく言語を「分泌」しながら暴れ始める。

ラー油とタバスコの複合味の意味は「最高に性的なニュアンスの求愛」。
延々とはぐらかした挙句にやっと配偶者の死を告げ、
その直後にエロチックな求愛をかますグロテスクな異種族を
宇宙人は気ちがいと罵り、呪詛の「味」を撒き散らす。
大混乱の中、味見役の老人は目の色を変えて宇宙人にむしゃぶりつく。
「美味じゃあ。これこそ求めていた味じゃあ」と絶叫しながら。

事件は闇に葬り去られる。
用済みとなった宇宙人は味見役の老人の私物として引き取られ、地下に幽閉される。
料理人はときどき呼び出され、老人と宇宙人の対話のための「言語」を調理する。
それがエロチックで卑猥な言葉ばかり。
老人は宇宙人に卑猥な言葉を投げかけ、宇宙人が吐く「呪詛」を恍惚として味わい続ける。

・・・
全体的に軽い調子で進む話だけに、遠い異星にただひとり取り残された宇宙人の末路が
あわれでしょうがない。

 

フランケンシュタインの方程式―梶尾真治短篇傑作選 ドタバタ篇 (ハヤカワ文庫JA)
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