ホーム » 小説 » 小説/さ行 » 屍鬼/矢野妙(小野不由美)

934 名前:本当にあった怖い名無し :2009/03/02(月) 19:24:38
屍鬼(しき)という小説

田舎の村に、吸血鬼的なもの(屍鬼)が引っ越してきて村人たちが次々と仲間にされていくという話。
当初は死人が多数出ても、高齢者の多い村で夏の盛りのことだから例年より多いなと思われる程度だったが、
土葬された場所を掘り返したら死体がなくなってたり、
死んだはずの人が夜中に歩いてるところが発見されたりして、
徐々に村人たちは異変に気づいていくようになる。いち早く屍鬼の存在に気づいた村医は、
屍鬼と化した自分の妻を実験台にすることで、屍鬼は心臓に杭を打つか首を落とすか、
日光に晒し続ければ倒せると知り、物語の終盤で村人たちを率いて屍鬼狩りを行うようになる。

登場人物が大量にいる長編小説だが、そのうちの1エピソード。
中年女性のAとBは友人同士。Aは結婚に失敗して、出戻って母と二人で暮らしている。
Bは村で結婚して幼い子供を持つようになったが、舅との仲があまり上手く行っておらず、
その反動なのか子供を大事に思う気持ちが強すぎて、ヒステリックなところがあった。

Bの夫や舅などは次々と死んでいき、屍鬼と化した。
まだ屍鬼のことが知れ渡っていない時期だったが、Bは神経過敏のあまり本能的に察し、
なんとしても子供を守らねば、子供を舅の側に行かせるかといきりたつが、甲斐なく子供は死んでしまった。
子供は死んだわけではなく、これから屍鬼として蘇るのだとBは願い、
温めなければいけないと思い死んだ子供と共に風呂場に篭りつづけるが、
子供の死体は蘇らずに、腐敗して融けて行ってしまった。
(うろ覚えだが、屍鬼になるにはただ死ぬだけではなく、何回か屍鬼に血を吸われないといけないなどの手順がいる
 その手順を踏んだ末に失血死しても、屍鬼になるのは数人に一人)

Aの母親も亡くなり、葬式を挙げたのだが、それからしばらくして泥だらけの姿で母が帰宅してきた。
(自力で土中からはい出たのか、屍鬼仲間に掘り返された後に屍鬼の集まりから逃げだしたのかは忘れた)
わけがわからなかったものの、Aは離婚した夫との間に子供もおらず、父もいないので、
唯一の肉親である母が帰ってきたことを喜んだ。母が心音も体温もなくしていることに気づいた後も。


935 名前:本当にあった怖い名無し :2009/03/02(月) 19:26:35
Aは周囲にばれないように母を家の中に隠し、食事を与えたりしたが、
母はそれを受け付けず、そのくせ飢えた様子だった。
やがて、母が求めている食物とは人間の血であるのだとAは気づいた。
それは超えてはいけない一線だと母自身わかっており、布団を噛んで堪えていたが辛そうな様子だった。
屍鬼は血を得ないと死んでしまう。
Aは母の辛そうな姿が可哀相になり、自分で手を切って血を与えるようになった。
指先を切って血を流し、その傷の周りを揉んで血を絞り、他の指も次々に切りつけ、Aの手は傷だらけになった。
自分の血だけを与えて他人に迷惑さえかけなければいいのだと、Aは母を血で養い続けることを決意した。
離婚だか死別だか忘れたが、幼いころから女手一つでAを育て、
出戻ってきたAに対しても小言を言わずに優しく受け入れてくれた母を、Aには見捨てることができなかった。

AとBがそういう状況にあった頃、村では屍鬼の存在が明確に表れ、屍鬼狩りがはじまった。
元々過疎だった村は、大量の死者が出たために以前よりも空き家が増えており、
そのうちの幾つかは屍鬼の棲家になっているので、そのような棲家に成り得る場所は知らないかと聞きに、
Aの家にも人が訪ねてきた。Aは母のことは隠し通した。
ちょっと頭がおかしくなっていたBは、子供の汚汁をつけたままでふらっとAの家を訪ねてきた。
勝手知ったる家なのでずかずかと入り込んだところ、死んだはずのAの母を見つけてしまった。
Aは、このことを誰にも言わないでくれ、他人に迷惑はかけないからとBに懇願した。
Bは頷きながらも、自分の子供は死んだのにどうしてAの母親は蘇ったのだと憤り、
Aの家を出てすぐに、屍鬼の情報集めに奔走している人々に「あの家に屍鬼がいた」と告げた。
そうして、Aの家に近所の顔見知りの人々が押し入ってきて、
止めようとするAを押さえつけて、その目の前でAの母の胸に杭を打った。

Bはその後、アヒャりながら大活躍するがAについての描写は確かなかった


938 名前:本当にあった怖い名無し :2009/03/02(月) 22:04:44
>934
乙。 私もこのエピソードがいちばん心に残ってる。
たしか、台所の流しの洗い桶に浸してあった包丁でAがうっかり指を切り、それをA母がむさぼり吸ったので
何をあげればA母の飢えが治まるかがわかったんだよね。
これを読んで以来、包丁を洗い桶に浸すのが怖くてできない(指を切りそうでw)

小野不由美わりと好きなんだけど、最近全く新刊が出ないなぁ。

 

屍鬼〈4〉 (新潮文庫)
屍鬼〈4〉 (新潮文庫)


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