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193 名前:1/3 :2009/03/12(木) 23:54:54
タイトル忘れたけど短編の漫画

高校生ぐらいのと、20代後半ぐらいのと、二組のカップルが遊園地に来ていた。
(以下、高校生カップル→少年・少女、20代後半カップル→男・女と表記)
池の真上を通るジェットコースターに乗りこむ二組。
元々遊園地に来ることも気のりじゃなかった少年は、嫌な気がするといって避けようとしたが、
少女に押されて仕方なく乗るはめになった。

途中で通過するトンネルの中でジェットコースターは停止した。
トンネル内には占いコーナーのようなものがあり、占い師がそれぞれの過去や未来を言い当ててくれるという。
人それぞれが持つ、なんとなく嫌いなものや苦手なものには、
実は明確な原因があり、それは本人すら知りえない過去や未来の出来事が関わっているのだという。

男は訊ねられるまま、人の首筋が苦手だと言った。見ているとゾクっとするという。
占い師は、それは男の「大過去」に原因があるという。
男は前世で、罪人の処刑を行う首切役人だった。
一刀で首と胴を綺麗に分けるその太刀さばきは見事なものだったが、人々からは恐れられていた。
しかし、首切役人は周囲の目を気にすることなく、
より効率よく処刑を行えるよう、日々首切りの技を洗練させていった。
ある時、妻の浮気が発覚した。
「誰かが必ずやらなければいけない仕事だから、その職についてることであなたを責める気はない
 でも、あなたが首切りを楽しんでいることに気づいてしまった もう恐ろしくて一緒にはいられない」
首切役人は怒りに任せて妻を斬殺した。
血まみれになりながら、自分が笑っていることに気づき、妻の言葉が事実であることを知った。
乱心したとして処刑されることになった首切役人は、素直に自分の首を切られる瞬間を待った。
震えている新米の首切り役に向かい「遠慮することなく一気に首を落としてくれ」と落ち着いて言った。
しかし、新米の腕は未熟で、刀は途中で止まってしまった。
「やはり俺ほどの腕を持つ者はいないのだな」と笑いながら、
首切役人は何度も首を刺された末に、やっと息絶えた。

占い師はそれらのことを男に聞かせ、男は本当は首に恐怖しているのではなく、
前世から続く、首を切りたいという衝動に震えを感じているだけなのだと言った。


195 名前:2/3 :2009/03/12(木) 23:58:38
女は、粉が苦手だという。というか、粉でつくられたケーキなどの食べ物恐怖を感じるのだという。
それは女の「小過去」に原因があるのだと占い師は言う。

数十年前。女の母は、恋人の男性に自身の妊娠を告げた。
お祝いにと恋人の買ってきたケーキを食べていた母は、腹に激痛を感じていきなり吐き出した。
恋人は金持ちの女性との結婚話が上手くいっており、母を疎むようになっていた。
子供をたてに結婚など真っ平だと、流産させるために毒をしこんでいたのだった。
苦しむ母を残して去っていく恋人。しかし、母子共に無事にすんだ。
その後、母は子供も含めて受け入れてくれる男性と出会い結ばれた。
しかし、元恋人や、その結婚相手への憎しみは消えなかった。
結婚相手が妊娠したの噂が耳に入り、余計に憎しみが増した。
母は憎しみを込め、毒入りのケーキをつくった。乱暴な手つきで辺りに小麦粉が舞う。
相手が食べるかどうかはわからないし、食べてもちゃんと効くかどうかはわからない。
それでも、食べて苦しむ姿を自分が想像できさえすればいいのだと笑いながら、
母はそのケーキを元恋人の結婚相手に送った。

そんな母の腹の中で、すべての出来事を見聞きしていたために、
女は憎悪のこめられたケーキの材料である粉を恐れるようになったのだと占い師はいう。
妊娠や結婚に関しては困難がつきまとう業を背負っているとも言う。

少女は、最近になって急に、水を見るとドキッとするようになったという。
遊園地といえばジェットコースターだからと真っ先に来たものの、池の上だというのが少し気にかかっていたともいう。
それは少女の「現在」に問題があった。
少女は部屋でサボテンを育てているが、サボテンだからあまり手入れをしなくてもいいだろうと放置気味だった。
そのためにサボテンは乾燥して死にかけた状態であり、助けを求めて少女に念を送っていたという。
サボテンはただそれだけではなく、少女にも水に関わるなにかが起こるかもしれないとも
伝えたがっていたようだと占い師は言う。


196 名前:3/3 :2009/03/12(木) 23:59:52
少年は、遊園地そのものが怖いという。
そのために、幼いころから遊園地に来ることだけは避け続けていたという。
占い師は、それは少年の「未来」に原因があるという。

突如ジェットコースターは再び動き出し、そしてレールから外れて池へと転落した。
少年だけが死に、あとの三人は奇跡的に助かった。
少女も怪我を負っており、ずぶ濡れの状態だったがそれにも構わず、
自分が遊園地に誘ったせいだと言って、少年にすがりついて泣き崩れた。

遊園地から去っていく20代カップル。
占い師と出会ったことはすっかり忘れていた。
また、ジェットコースターの途中には占いのスペースなど最初からなかった。
こんなことの後で不謹慎かもしれないがと前置きしつつ、女は照れたように言った。
「私妊娠しているの 結婚してくれるよね」
男は喜び、もちろんだと快諾しつつ、ふと眼についた女の首筋にゾクリとした。

おわり

 

きねづかん (小学館文庫)
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