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750 名前:1/3 :2009/07/17(金) 12:11:55
新堂冬樹の「吐きたいほど愛してる。」という短編集の中から、「お鈴が来る」を紹介。
途中、虫(ゴk(ry)と鳥関係のグロ描写があるので注意。
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「壊れて」しまった妻の元へ、毎日急ぎ帰宅する主人公。

門限(19時)を5分過ぎるごとに、妻は自分の髪を引き抜く。膝の上に翳りを落とすほど
ごっそりと抜かれた頭髪を伴い、痩せこけ、所々の髪が剥げ落ち骸骨のように変貌した顔に
不自然な笑顔を浮かべ、毎日妻は主人公を迎える。

主人公は妻には内緒で、週に一度、妻に関して精神科のカウンセリングを受けている。
門限に遅れるのはそのため。精神科医は「入院が必要です」と言う。

しかし、彼はなかなか踏みきれずにいた。なぜ踏み切れないかというと、
妻が「壊れた」原因が主人公の浮気だった為。

妻が妊娠中、自社の受付嬢に居酒屋に呼び出され、そのまま言い寄られ、
酔っ払った彼女を送って帰るつもりが、理性が決壊。一夜とはいえ関係を持ってしまったのだ。

自責の念に苛まれつつ帰宅するが、妻に気付かれた様子は無く、主人公は内心ホッとする。
しかし、その翌日から、目に見える形で妻は「壊れて」いった。


751 名前:2/4(すみません、1つ伸びました) :2009/07/17(金) 12:14:49
妊娠中なのに、食事を碌に摂らず、話し掛けることには応えるが、無口になり、
視線を宙に彷徨わせていることが多くなった。
妻のその様子に、「浮気が気付かれたのかもしれない」と訝る主人公。

そんなある朝、自宅前のゴミ置き場がカラスに荒らされ、ゴミが散乱。
近所との兼ね合いを考え、出勤途中の主人公が片付けていたのだが、
ゴミの中に鋏で切り裂かれたかのような布切れがあったのを見付けてしまう。
主人公のYシャツだった。襟元には口紅が付いている。
妻は不貞に気付いていたのだ。

その日、帰宅した主人公を待っていたのは、夫婦の寝室で、
ブロンズ製の犬の置物を己の腹に幾度も叩きつけ、
白いネグリジェの下半身部分を真っ赤に染めた妻の姿であった。

妻は流産した。「子」を失くした妻は、加速度的に「壊れて」いった。

全ては、真実を告げず、自分の罪を都合の良いように正当化した自分の所為。そう思って、
妻の突飛な言動にも根気良く付き合い、耐えていた主人公。
しかし、そんな主人公が「妻を病院に入れよう」と決意するような出来事が起きる。

妻が常軌を逸してからというもの、精神的に疲弊する主人公の心を慰めてくれたのは、
一羽の黄色い小鳥であった。ある晩、隣に妻が居ないことに気付いた主人公が台所に下りると、
妻は、真夜中だというのに、大きな音を立て、包丁をまな板に叩きつけていた。

血塗れのまな板の前で返り血を浴びながら、「今日の朝ご飯は、鳥の唐揚げよ」と歌うように言う妻。
まな板の上では、主人公の愛鳥がぶつ切りにされていた。
ボウルに溶いた卵にそのぶつ切りを浸しながら、「もうすぐクリスマスね」と微笑む妻。
(実際には、クリスマスは半年先)


752 名前:3/4 :2009/07/17(金) 12:17:39
慌てて問いただす主人公と、噛み合わない応答を繰り返す。
その最中に、「イナゴって、良質の蛋白質がたっぷりなんですって」と言いながら、
台所の下からゴキブリホイホイを取り出してくる妻。その時、目の端を別のゴキブリが横切り、
彼女はそれを執拗に追い回し、生け捕りにした。主人公に見せ付けるようにして、
六本の足をもいだ後、頭にかぶりつき、体液を啜る。
「躯に良いんだから」と、主人公にも食べることを強要してくる。

ついに、主人公は逃げ出した。一夜の関係を持った、あの受付嬢の元に。
妻を強制的に入院させるのだと自分に言い聞かせるように彼女へ語り、
その日の深夜、友人に協力を依頼した上で、凄惨な格闘の末、実行に移した。

おかしくなった妻に、あわや殺されかけた夫、ということで、世間の同情を買った。
誰ひとりとして、妻を見捨てる夫を責めるものは居なかった。

その後、主人公は転勤を願い出、マイホームを引き払うことにした。離婚手続きは弁護士に任せ、
転勤した先での新しい生活に心を膨らませながら、「元」受付嬢となった彼女と共に、
その準備を進める主人公。

その作業の中で、産廃業者に引き渡す予定だった妻のドレッサーがそのままであったことに気付く。
引き出しを全て抜けば自分で運べるだろう、と抜いていると、三段目がなかなか抜けない。
無理やり引き抜くと、引っ掛かっていたと思われるものが散乱した。
全て、妻宛の手紙だった。

差出人も無く、ワープロで印字された宛名という雰囲気に嫌な予感を覚えつつ、一通の中身を取り出す。
折りたたまれたコピー用紙に、延々と繰り返し印字された「お前は用無し」の文字。
他の封筒の中身も取り出してみると、「お前の亭主には女がいる」、「お前は、おめでたいババアだ」などと、
妻への侮辱や罵倒の文が満載であった。


753 名前:4/4 :2009/07/17(金) 12:19:24
この手紙の所為で妻が壊れたのだと、ようやく悟る主人公。
思い当たる人物が一人居た。彼が犯人だという証拠を掴むために、改めて、全ての手紙に
目を通そうとした。が、ある一通の文面を思い返した時、彼の全身に悪寒が広がる。

「昨晩、亭主の帰りが遅かっただろう?」彼女と関係を持った翌日に投函された手紙。

先ほど思い当たった人物が、自分と彼女が関係を持った翌日にそのことを知るなどあり得ない。
そして、自分以外に知っているのはただ一人。

「お風呂掃除終わったわ。お昼御飯、食べに行きましょう」
彼女が、屈託なく笑っている。
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主人公にザマぁwwwと思いつつも、これからの生活を思うと後味悪い。
タイトルの「お鈴」のくだりは、これ以上冗長になるのもアレなので、省きました。


754 名前:本当にあった怖い名無し :2009/07/17(金) 12:33:37
妻の壊れ方が鮮烈すぎて手紙のインパクトなど霞んでしまうな
実は再婚相手が元妻を攻撃していた!というのはありがちシチュエーションだよね

755 名前:本当にあった怖い名無し :2009/07/17(金) 12:38:04
寝取るためならなんでもする女っているからなあ
怖い怖い

756 名前:本当にあった怖い名無し :2009/07/17(金) 12:52:39
>>754
全部は書けなかったけど、他にも鮮烈な壊れ方してるので、一読をオススメしてみる
2行目には至極同意w

759 名前:本当にあった怖い名無し :2009/07/17(金) 13:56:17
>>750乙。
妻が壊れたのは自分の浮気のせいってわかってるくせに、
結局その浮気相手と再婚するとか、全然反省してない主人公に腹が立つ。
再婚相手に罰が当たってない所も後味悪いね。

 

吐きたいほど愛してる。 (新潮文庫)
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