まんが日本昔ばなし/「キジも鳴かずば」

199 名前:キジも鳴かずば1 :2009/07/28(火) 03:10:09
やっぱりみんな知ってるよな。
それでいいなら、書かしてもらいます。

昔々、犀川という川があった。
この川のほとりに小さな村があったが、毎年秋になるとこの犀川が氾濫し
その度に多くの人が死に、家や畑も流された。

この村に、弥平という男とその娘のお千代という女の子が住んでいた。
お千代の母親はこの間の洪水で死んだばかりだったが
それでも父と娘、貧しくても幸せに暮らしていた。

そして、また、犀川が氾濫する季節、秋がやってきた。
お千代は思い病気にかかり床に伏せていたが、医者を呼ぶ金もなく日に日に様態が悪くなるばかりだった。
弥平が作った粟のかゆも口にせず、うわごとのようにお千代は繰り返した。
「おら、かゆはいらねぇ・・・あずきまんまが食いてぇだ・・・」
あずきまんまは、お千代が知ってるこの世でたった一つ、おいしい食べ物だった。
しかし、弥平の家には小豆はおろか、一粒の米もない。
苦しげなお千代の顔を見つめていた弥平は、決心すると家を飛び出した。
豪雨の中、弥平は一人ひた走り、村一番の金持ちである地主の蔵へと忍び込み
ひとすくいの米と小豆を、盗みだしてしまった。
一人娘の命を救うために、たった一度だけ働いた盗みだった。


200 名前:キジも鳴かずば2 :2009/07/28(火) 03:11:38
家に帰った弥平は、あずきまんまをこしらえお千代に食べさせてやった。
おいしい、といって食べたお千代は、そのおかげかみるみる元気を取り戻し
数日後には起きれるまでに回復した。

一方、地主の家では米と小豆が盗まれたことに気づき
たいした盗みではなかったものの、番所に届けていた。
元気になったお千代は遊びたくてたまらなかったが弥平は言い聞かせた。
「まだ病み上がりなんだで、静かに寝とるんだぞ」
しかし、弥平が仕事に行ったとたんお千代は起きだし、歌いながら毬をつき始めた。
「とんとんとん、おらんちじゃ、おいしいまんま食べたでな
小豆のはいった、あずきまんま、とんとんとん」
その歌を、畑仕事をしていた百姓が聞いていた。

やがて、また雨が降り出した。
豪雨となり、犀川の氾濫は時間の問題だった。
「このままじゃまた村が流される」
村人たちは村長の家で話し合っていた。
「人柱を立てたらどうかのぅ」
―人柱。
それは生きた人間を土に埋め、神様にお願いするという恐ろしい習慣だった。
しかし、人柱になるのは罪人と決まっている。
「この村には罪人などおらんぞ」
「いや、おるぞ」
口を開いたのはお千代の手まり歌を聞いていた百姓だった。


201 名前:キジも鳴かずば3 :2009/07/28(火) 03:12:47
弥平のところに人が押しかけたのは、弥平とお千代が食事してるときだった。
「弥平、おぬし先日、地主様の蔵から米と小豆を盗んだろう。お千代の手まり歌を聴いてたものがいた」
連れて行かれる父親に、お千代は泣き叫んだ。
「おとうはすぐ帰ってくるでな、おとなしくまっとれや」
それが、お千代の聞いた父親の最後の言葉だった。
弥平は生きたまま人柱として犀川のほとりに埋められた。

そのせいだろうか、たちまち川は静かになり、この年は被害を出さずにすんだのだった。
弥平が埋められたと思われるところに、お千代は訪れ、泣き続けた。
「おとう!おとう!」
自分の歌のせいで弥平が埋められたと知り、お千代の鳴き声は何日も村に響いていた。
ある日、お千代はふっつりと泣くのをやめた。
誰とも話さず、誰に話しかけられても答えることのなくなったお千代は、
それからたった一人で、静かに暮らしていた。
何年たっても、お千代は一言もしゃべらなかった。


202 名前:キジも鳴かずば4 :2009/07/28(火) 03:14:29
ある年のこと、猟師が雉を撃ちに山へ入った。
雉の鳴き声を聞きつけ、銃を撃った。
銃声が、静かな山に響き渡る。
仕留めた雉を探し猟師が草むらを掻き分けると
一人少女が、うなだれた雉を胸に抱いて立っていた。
お千代だった。
お千代は冷たくなった雉に、つぶやいた。
「雉よ、お前も鳴かなかったら撃たれないですんだものを・・・」
自身に語りかけるようなその声を聞いて、猟師が呆然とつぶやく。
「お千代、お前、口がきけただか・・・?」
猟師の問いに答えず、お千代はそのまま雉を抱いて去っていった。

それ以降、お千代の姿を見たものは、一人もいなかった。
ただただ、お千代の最後の一言が、語り継がれ続けただけだったという。

連投失礼しました。全部見たわけではないけど、昔話では一番好きな話。
再放送したら録画しときたいな。


203 名前:本当にあった怖い名無し :2009/07/28(火) 03:27:46
なあ
ひとすくいの米と小豆取られたくらいでわかるもんなん?
倉庫にはうなるほど貯めてただろうに
その庄屋の家が呪われたらいいのに

204 名前:本当にあった怖い名無し :2009/07/28(火) 03:31:17
>>203
その地主は、毎日マスで計っていたという表記が俺の持ってる本にはある。
セコイ地主。

210 名前:本当にあった怖い名無し :2009/07/28(火) 08:15:14
>>203
昔の米や小豆って今よりずっと貴重で、換価価値のある貨幣みたいな面もあるから、
例えば現代で
「銀行にあれだけお金があるんだから、10万や20万窓口からガメたって分からなくね?」
と思っても、そこはちゃんと毎日数えてて足りなきゃ一発でバレるってのと似たようなもんじゃないかと思う。
管理してる内部の銀行員とかで帳簿記録ごと偽装できる立場ならまだしも。

アニメの演出を見ると、抜き取る時にこぼれた粒が周囲に散っていて
誰かが蔵を荒らした形跡は残っているようだし、素人の犯行ってどっかで足が付いてしまうもんなんだろう。


212 名前:本当にあった怖い名無し :2009/07/28(火) 09:27:40
お千代にキジ持ってかれた猟師が可哀相…

 

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