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744 名前:本当にあった怖い名無し :2009/08/09(日) 12:25:58
グリシャムの「謀略法廷」

大企業クレイン化学の化学薬品不法投棄による汚染で、とある田舎町で死者が続発する。
その町に住む若き弁護士夫婦は、夫と息子を亡くした女性を原告として会社を告発した。
資料や証拠集めのため多大な資金を必要としたものの他の仕事をする余裕もなく、
借金を重ねてぎりぎりの生活を送りながら、
長い裁判の果てに遂に4000万ドル超の懲罰的賠償金を勝ち取る。
クレイン化学は原告の証拠はことごとく捏造・歪曲・誇張・でたらめであるとして
控訴する構えを見せるが、それを審議する9人の最高裁判事も、5:4で控訴破棄の公算が大であった。

もし判決が確定すれば、集団訴訟が起こされ、
賠償金は4000万ドルなどでは到底すまないことになるのは必至だ。
金持ちから金を奪うのが目的の無知な貧乏人なんぞに一セントたりとも渡すものかと
心に誓うクレイン化学社長トルドーに、「選挙コンサルタント」と名乗る男が接触してくる。
判事の裁定はぎりぎり・・・。ならば一年後に行われる裁判官選挙で、
原告側に有利な裁定を下す判事を落とし、自分たち側の判事を当選させれば判決は覆る!
かくして数百万ドルを注ぎ込んだ一大選挙キャンペーンが開始された。

コンサルタントは実直な企業弁護士のフィスクに狙いを定め、懲罰的賠償金は企業から力を奪い
経済発展を妨げており、そんな判決を下す裁判所を改革しようと言いくるめて彼を出馬させる。
ダミー候補を出馬させて公然と対立候補を批判させる一方、フィスク陣営はソフト表現ながらも
事実を歪曲した激しいネガキャン、膨大なTVCM、大企業からの献金集め、教会やライフル協会の取り込みetc.…
そしてクレイン化学を訴えた弁護士には、銀行に手をまわして融資を引き揚げさせ、
もはや経済的に後がないところまで追い詰める。


745 名前:本当にあった怖い名無し :2009/08/09(日) 12:26:44
そして選挙活動は見事に実り、原告側に同情的な判事を蹴落としてフィスクが当選、
クレイン化学の目論見通り、フィスクは企業側に不利な判決を控訴審でことごとく覆していった。

しかしクレイン化学の控訴審の直前、急転直下の事態が起きた。少年野球の試合中、
製造中止になったいわゆる「飛びすぎるバット」の打球がフィスクの息子のこめかみを直撃、
さらに病院でのカルテの取り違えのせいで手当が遅れ、息子は一命を取り留めたものの
重大な後遺症が残る身となってしまったのだ。
自分が被害者になって初めて企業の無責任さを実感するフィスクだったが、
だからといってバットメーカーや病院を訴えたらいい笑いものだ。自分の元に寄せられる控訴審にしても、
もはや企業寄りの判決を下すことなど彼にはできなかったが、企業の味方を標榜して当選し、
今までいくつもそういう判決を下してきたのに、今さら態度を変えることなどできないと頭を抱える。

そしてクレイン化学の控訴審でフィスクが下した判断は・・・クレイン化学の主張を全面支持し、
賠償金支払いの判決を棄却して裁判のやり直しを命じるものだった。
そしてこれを最後にフィスクは一身上の都合で休職する。

ラストは1億ドル近くを費やした豪華ヨットの窓から摩天楼を眺め、
高笑いするクレイン化学社長の姿が描かれてお終い。

ちなみに一番後味悪いのは、これがアメリカの司法の現実だということ。

 

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