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208 名前:本当にあった怖い名無し :2009/08/22(土) 16:33:34
乙一 短編集「失はれる物語」より表題作

主人公は妻子持ちのサラリーマン
ある朝いつものように家を出るも事故にあってしまう。
目覚めると自分は暗闇の中にいて、意識はあるのに全身を動かせない。
音も聞こえず目も見えない、声をあげることもできない。

五感全てを無くし、全身不随状態となってしまったことを悟った主人公は
唯一右腕の皮膚感覚だけが残っていることに気づく。
懸命に意思を伝えようとする中で、指が一本だけ上下に動かせたので
右腕に書かれた文字に対し、「YES」「NO」のみ意思を伝えられるようになった。

それでも妻は、夫に意識がある事を喜び献身的介護を重ねる。
そのうち、夫に月日の思いを伝えられはしないかと
唯一皮膚感覚の残っている右腕を、ピアノの鍵盤に見立て指で演奏するようになった。

ピアニストでもある妻の指の演奏は、暗闇の中にいる主人公にとって
とても楽しく、草原を駆け抜ける馬のように軽やかで心地の良いものだった。
以来、主人公は希望を捨てずに妻の演奏だけを楽しみに生きる。


209 名前:本当にあった怖い名無し :2009/08/22(土) 16:35:28
しかし入院の長期化により、次第に妻にも疲れが見え始める。
妻の姿が見えない主人公にも、右腕越しの演奏によって
軽やかだった馬が、ふらふらともたつく様な足取りになったことを感じた。
徐々に妻の疲労が極限に近いこと、彼女のやるせない気持ちが感じられるようになった。

そんな妻の様子を不憫に思った主人公は、自分を諦めるよう死を装うことにする。
決意後、主人公は妻の問いかけに何も反応しなくなった。
そんな主人公の思いを知らず、妻は必死に右腕越しに「お願い何か伝えて」
「意識はあるんでしょう」と問いかけ続け、演奏を続けた。
やがて妻の見舞いが徐々に少なくなり、主人公は自分はいつになったら死ねるのか
どうやったら死ねるのか考えるようになるも、全身不随の身で自殺すらできなかった。

ある日相変わらず暗闇の中にいる主人公に、右腕に感覚が走った。
暫く自分の腕と寄り添うようにあったそれは、そっと文字を書き出した。
妻からの最後のメッセージ「私はもうあなたの妻であることをやめます」
懐かしい指の感覚と共にそれは伝えられた。

やがて回復の見込みの無い主人公に、病院側も痺れを切らし
ベッドは人気の無い病院の奥の方へ移動させられる。

月日が経ち、主人公の娘が結婚の報告をしに主人公の元へ出向いた。
意識は相変わらず残っていたが、主人公は反応を返さなかった。
主人公のいつ終わるとも知れない入院はこの先も続いていくのだから。


214 名前:本当にあった怖い名無し :2009/08/22(土) 18:58:44
>>208,209
死にたいか?と問う人が誰もいないの?yes/Noはわかるんだし。

215 名前:本当にあった怖い名無し :2009/08/22(土) 19:18:15
>>214
安楽死が認められてる世界じゃないから
誰も聞かない(聞いたところで何も出来ない)んじゃね?

 

失はれる物語 (角川文庫)
失はれる物語 (角川文庫)


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