おしまいの日(新井素子)

933 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2005/10/28(金) 09:20:45
『おしまいの日』
主人公美津子は夫である春さんが大好き。
春さんが望むことが美津子の幸せ。まさに「理想の妻」。
滅私奉公を地でいく企業戦士(死語)な春さんの帰りを、今日も待ち続ける。
毎日毎日毎日毎日。
あと一息で出来上がりな夕飯を用意して。
毎日毎日毎日毎日。
すこしずつ、静かに、何かを歪ませながら。

ある日美津子の家に猫が迷い込んでくる。
美津子は飼うことを数日悩み、結局飼うことにした。名は「にゃおん」。
春さんには相談はしていない。
何故なら企業戦士な春さんは、平日は深夜帰宅。早朝出社。
休日も接待ゴルフで話すことができないから。
ようやく春さんににゃおんを紹介できる時がきても、
そういう時に限ってにゃおんが姿を見せない。
そして、いつの頃からか、にゃおんは本当に見せなくなった。
気付けばにゃおん用の皿やクッションもない。
美津子はこう思うようになる。
「にゃおんは幻(の)猫だったのかしら?」


934 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2005/10/28(金) 09:21:41
そんなある日、美津子は数年ぶりに高校の時の友人くーみんとその旦那に出会う。
「おせっかいくーみん」
そう言われるほど彼女はおせっかいで、
呆れるほど面倒見がよかった。
高校時代も、今も。

くーみんは美津子の様子がおかしいことに気付く。
そして、旦那が止めるのも聞かずに美津子にラジオ局の葉書の統計とりのバイトを勧める。
美津子の歪みは、美津子が春さんに依存しているからであって、
春さん以外の人とのつながりをもてば、改善されるだろうと考えたからだ。

しかし、逆効果だった。
ラジオ局に寄せられる葉書は中高生のものが多かったからだ。
中高生の時期には、その時特有の妄想というか、
「口裂け女」や「人面犬」やUFOに代表される何かがある。
それに満ちた葉書に触れてしまった美津子は、外部との接触を遮断し葉書を読み耽るようになる。


935 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2005/10/28(金) 09:22:35
そして、ある帰り道、美津子は宇宙人に寄生されてしまう(美津子の主観)。
以来、美津子は貧血や食欲不振に苛まれ、ますます美津子は確信を深める。
そんな美津子を周囲は「妊娠したのでは」と思い、美津子本人にも言うが、
何故かぼんやりとして聞いていない風。
そうこうしているうちに、美津子は失踪する。
彼女の最後の日記にはこう書いてあった。
「おしまいの日がきた。」

936 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2005/10/28(金) 09:24:13
数年後、くーみんは懐かしい喫茶店を訪れる。
そこで喫茶店のマスターに、手紙を渡される。
美津子が失踪した直後、くーみんに渡してほしいと置いていった手紙だった。

内容は、狂っている自分と、妊娠している自分を自覚していること。
春さんが好きで好きで好きで仕方がないこと。
その分、春さんが心配で心配で心配で心配で、子供ができて春さんにこれ以上負担をかけたくないこと。
春さんと子供、ふたりの心配をしないといけない自分に耐えられないこと。
これから先、どんなことがあっても子供とふたり生きていくこと。
自分を探さないで欲しいことが記されていた。

春さんは、美津子の失踪後、数年して再婚した。
そして、死んだ。
原因は、美津子が心配してやまなかった、過労死。


945 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2005/10/28(金) 13:46:56
>>933-936
読みやすいし面白かった。ありがとう。
なるほど、自分は後味悪かった。
主人公は、要するに強姦されて妊娠しちゃったと解釈。
にゃおんは、本当にいなかった猫なんじゃ?
そして、春さんのほうは主人公を愛してはいなかった。
初めから愛人がいて、それで家にもあまり戻らなかった…のではないかな。

946 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2005/10/28(金) 14:14:18
>>945
違うんじゃない?
多分、いつもいつも忙しい春ちゃんに、
子供が出来たら今まで以上に頑張らなければいけなくなって、
負担になるのではないか?と言うことだと解釈したよ。
春ちゃんは愛人はいなかったと思うよ。
だって死因が過労死だもん。

自分勝手な思い込み&妄想で、周りの人々に何も告げずに
妊娠中の子供もろとも失踪した後の春ちゃんの心境を思うと…。
後味ワロス。


948 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2005/10/28(金) 14:30:32
>>946
そうそう。
あと、この小説はずっと美津子を電波な妄想女っぽく描いてて
周囲の人間もそう思ってたんだけど、
結局最後に、美津子は自分の狂気を自覚してたって判明するのが悲しいんだ。
彼女は、夫が仕事しすぎだって事でこんなにも心配してしまうような
頭のおかしい自分には、もうこの生活は続けて行けない、と思ってた。
でも、「心配しすぎの妻」が居なくなった旦那は、その後すぐに過労死していた。
本当におかしかったのは誰で、一体どうすれば良かったのか
何とも言えない悲しさが漂う話。

965 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2005/10/28(金) 17:26:58
おしまいの日の話ひっぱってゴメンなんですが、
これ実際に読むとホントにイヤーな気分になれますよ。
主人公の日記部分の文字が塗りつぶされてたり、
ページ破ってあるように見せてたりと趣向も凝らしてるし。

あと猫タンは妄想じゃなくて主人公が殺しちゃたんだよー。
そんで猫関係の物も全部捨てて死体も埋めたと。
わりとキモイ描写もあり、中学生の私に軽いトラウマを残しました。


969 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2005/10/28(金) 18:10:28
「おしまいの日」みたいな妻って、いやになる夫もいそうな気がするけどなあ…
じつは思いあまった夫に殺されてて、猫と一緒に埋められてたりしない?
すぐに解るようには書かれてないだけでさ。
愛人と再婚はしたものの、主人公の悪夢から逃れるために働き倒して過労死、とか。
すごく気になってきた。捜してみよっと。

998 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2005/10/28(金) 21:39:58
新井素子か、懐かしいな。
「おしまいの日」でほんのり怖かったのは、
勉強ばかりやってる姉ちゃんだな。
妹は水泳が好きだったけれど、受験か何かでその年は
泳ぐのを禁止されていた。姉の方は趣味もなく黙々と勉強するだけ。
妹は、その姉の姿に何か異常さを感じていた。
そして、夏の終わり。もうすぐ地球は隕石と衝突して
生命は全滅するというニュースが流れる。
ところが、姉は勉強をやめない。もう受験も、自分の命さえ
なくなるというのに。
「こんな事になるのなら、思いっきり泳ぎたかった。私の夏休みを帰して!」
「お母さんのせいで、お姉ちゃんこんなになったんじゃない。
こんな・・・化け物に!!」号泣する妹と母を一瞥して、
「勉強に身が入らない」と家を出る姉・・・。
後味悪いなんてもんじゃねぇ、洒落にならねーよ!!

古本屋でもいいから買って読んでみ。あの人の作品は
一人称の文章でくだけた感じだけど、中身は結構えぐかったりする。

 

おしまいの日 (中公文庫)
おしまいの日 (中公文庫)