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359 名前:1/3 :2009/08/25(火) 17:36:27
小松左京の短編小説 『石』

和子と夫の良太郎には一粒種の四歳の息子良夫がいる
良夫は見た目はとても可愛らしい、平均的な体格をした子供なのだが、中身は桁外れの神童だった。
生まれて三か月で片言でなくしゃべり、半年目から歩いて新聞を自分で取りに行って読み
二歳で幾つかの外国語をマスターしてしまった。

三歳のとき専門家に診せたところ「何億人に一人いるかいないかの存在」と言われる
そして「異常早熟」と診断を下し
「あまり知識を過剰に与え過ぎると精神障害やノイローゼになる恐れがある、
 普通にのびのび遊ばせたり音楽をさせると良い」とアドバイスされた。
そのとおりピアノを習わせると恐るべき速さで上達し、
教師の技術を嘲笑い馬鹿にするようになり教室から追い出された。
外で遊ばせても生意気な性格ですぐ喧嘩をしかけ半端のない腕力で中学生の肋骨をへし折り、
涼しい顔で「正当防衛になるさ」と言う始末だった。

最初はその才能を喜んでいた夫はそんな息子をだんだん気味悪がり邪険に扱うようになる。
彼はごくごく普通の子どもと平凡な暮らしを望んでいたのだった。

反対に和子はそんな超天才児の良夫に有頂天になり溺愛していた。
問題ばかり起こし、夫を含め周りから疎まれ嫌われる息子を庇い甘やかしまくる和子
「世界中があなたを嫌っても私だけは愛し続けるわ、ママがずっと守ってあげる」
そう言うと良夫も
「ボクもママが世界一好き、ママさえいればあとの人はどうでもいい」
と子供とは思えないほど熱っぽく囁いた。

やがて良夫に対する感情や育て方の違いから夫婦は頻繁に言い争いをするようになる。
和子は夫に反発するように良夫の欲しがる高等な書物をいくらでも買い与えるのだった


360 名前:2/3 :2009/08/25(火) 17:38:54
そんな良夫はいつも肌身離さずある『石』を持っていた。
それは良夫が生まれる前、夫婦で旅行したときに夫が拾った不思議な石だった
手のひら大で青く、一方が鋭く尖った形で、
どうやら隕石らしいと鑑定を受け持ち帰り寝室に飾っておいた物だが
良夫は生れた時からその石がひどく気に入り、お守りとして片時も離さなかった。

ある日夫は良夫の生意気な行動と言動に溜まりに溜まった怒りと不満を爆発させ、
良夫と止めようとした和子を殴りつけると、あの石を取り上げてしまった。
それを奪われることが良夫にとって一番嫌がることだからだ。
「こんなもの川にでも捨ててやる」と家を出ていく夫。
その背に向かい良夫は幼児とは思えない憎悪と呪詛をぶつけるのだった。

殴られて気を失っていた和子が翌朝目を覚ますと
夫は帰っておらず、良夫は何故かあの石持っていた
「追いかけて行って、パパに一生懸命謝って返してもらった。
 パパはそのまま何処かへ行っちゃった」
そのまま夫は行方不明になり警察に捜索ねがいを出したが進展はなかった。
良夫ははしゃぎ「これからはボクがパパの代わりになるね」などと喜んだ

さすがに息子の行動に疑念を抱き、夜中こっそりあの石を調べてみる和子
その時背後から近寄ってきた良夫に凄まじい力でねじ伏せられた
「ボク、ママが好きだ!愛してるよ」と四歳の息子に犯されてしまう。

翌日から毎日それが続き、恐怖と絶望に打ちひしがれる。
部屋にいくら鍵を付けても良夫の頭脳と力の前では無力だった。
思い余って何回か自殺を図ってもそのたび蘇生させられてしまう。

そして和子はある決意を固める、
もはやあれは愛する息子ではなく得体の知れない化け物だった。


361 名前:3/3 :2009/08/25(火) 17:40:54
毎夜の恐怖と懊悩に耐え、数ヶ月後和子は良夫を旅行に誘う。
「ハネムーンだね」と大喜びする息子を連れ、
以前行ったことのある山奥の湖畔のホテルに宿泊する

翌日良夫を巧みにボートに誘い、ホテルからも見えない湖の真ん中辺りまでくると
和子は力いっぱい良夫を突き飛ばした。
たちまち溺れる良夫、万能に見える彼にもすぐには出来ないことがあったのだ
良夫は自転車に乗れるようになるのに二日かかった、彼はまだ泳ぎを教わっていなかった。

湖深く沈んでいく息子を見届け岸まで戻ると大声で助けを呼び
半狂乱に泣きながら悲劇の母を演じた。周りは誰も疑わず、同情を寄せた。
ふと和子は気付くとあの石を握っていた、
良夫が落ちる寸前ボートに落したのを無意識に拾っていたらしい。

悪魔の様な息子から解放され安堵したのもつかの間、
和子は体の不調を覚え病院に行くと医者から
「おめでとうございます、四か月ですよ」と告げられる
夫が失踪したのは七か月前のことだ、ならば信じがたいが相手は一人しかいない…

すぐさま堕胎を願い出る、麻酔で朦朧とする中周囲で混乱と恐怖の悲鳴が上がるのを聞いた。
そして目覚めると、異様な雰囲気の中数人の医者が狼狽しながら何かを説明しようとしていた

その時部屋の外が騒がしくなり、悲鳴や誰かが失神して倒れる音などが聞こえた
部屋のドアが開き入ってきた小さな白い生き物が二本足で立ち上がると
和子を指さしキイキイ声を張り上げた
「こいつだよ!この女がボクのパパを殺したんだ」
四か月で生まれてきたしわくちゃの赤ん坊は
驚くほど良夫に似た顔で歯をむき出しにしてニヤリと笑った。

そして今和子は殺人容疑で裁かれていた。子供を殺した容疑でなく夫を殺した容疑で。
彼女が持ち帰ったあの石にわずかに血液が付着していたのだった。
それは夫のものと確認され
発見された夫の遺体の頭がい骨に空いた穴と石の尖った部分が一致したのだ。
今日も傍聴席のどこかで、この様子を歯をむき出して笑っているあの顔を意識しながら
和子はぼんやり考える
『こんなになってしまっても、発狂することも出来ないのは、
 私もあの石の放射能に当たったせいかしら・・・』


366 名前:本当にあった怖い名無し :2009/08/25(火) 20:48:25
すごい面白かった・・・けど、
四歳児に犯されて妊娠できるのか?
入ってるのか入ってないのかもわからんのでは。

367 名前:本当にあった怖い名無し :2009/08/25(火) 20:59:44
四歳ですでに妊娠させる能力を持ってるところが、良夫は普通の子供ではない
ヒトとは違う何かっていうことを強調してるのかなあ、と思った。
ところで石は何の意味があるんだろう。

370 名前:本当にあった怖い名無し :2009/08/25(火) 21:37:38
あの石については隕石らしいとあるだけではっきりとした正体は書かれていませんでした
どんなふうに人体に影響があるのかも分からず
最後に石がどうなったのか、誰の手に渡ったのかも書かれてなくて、そこがまた
もやもやとした謎を残すお話でした。

374 名前:本当にあった怖い名無し :2009/08/26(水) 00:18:00
しかし四歳で母親押し倒せるってどんだけデb…

375 名前:本当にあった怖い名無し :2009/08/26(水) 01:17:38
>>374
良夫は見た目は普通の4歳児で、中身(身体能力や頭脳)だけ化け物だったんじゃないかな
だから周囲も油断して喧嘩しかけたし、母親もボートから突き落として殺す計画を立てた
普通は自分より体重が重い人間を殺すのって躊躇うと思うんだ

 

物体O (ハルキ文庫)
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