なりきりおじいちゃん
-
486 名前:1/2 :2010/05/25(火) 04:40:33
- 個人的に後味が悪かった実話。
もう10年以上も前に、ある地方都市に2年間赴任することになった。
新しい営業所の準備作業だったんで、勤務中は基本的に一人きり。
もう寂しくて寂しくて、仕事が終わると毎日飲み屋だのスナックだのを
飲み歩くのが唯一の楽しみだったんだ。
で、半年もしないうちに行きつけの飲み屋ができた。
おかみさんと店主だけでやってる、カウンター4席テーブル2卓の小さい店。この店には、名物常連客がいた。
常連と言っていいのかどうかはわからんが…
簡単に言うと、なりきりおじいちゃんなんだ。
来るとしたら月の最終土曜日。
ある時は引退した画家、またある時は売れない詩人、別の時はマグロ船の乗組員、
とにかく「ちょっと気になる過去」の設定でおじいちゃんはその店に来る。
服装なんかも、微妙にそれっぽいものをチョイスしてる感じだったな。
向こうから話しかけて来たりはしないんだけど、話しかけられると、自然な流れで
色んな「体験談」とか雑学とかを教えてくれる。引き込まれるし、話も上手だった。元は、店の近所というか隣町というか微妙な地域で自営業を営んでいた老人らしい。
近所の評判でも虚言癖があるような噂はなくて、実直でまじめな人って評判の。店主やおかみさんや他の常連さんも楽しみにしてるみたいだったし、
最初はびっくりしたけど、アシモフのユニオンクラブものに出てくるグリズウォルドから
毒を抜いたようなキャラクターに、なんとなく自分も好感を持った。
弁護士とか警察官とかそういうモノにはならなかったし、特にお金持ち設定にして
他人を見下すようなこともなかったから、害もなかったし。
「設定」は嘘なわけだけども、雑学とか豆知識とかはホントのことばっかりだったから、
頭の回転も知識量も半端ない爺さんだった。多分。
だから、爺さん自身、バレてないって思ってたわけじゃないと思う。
何きっかけで始めたのかは知らないけど、あくまでも「ごっこ遊び」で、
誰かをだますつもりなんかなかったんだろう。
-
487 名前:2/2 :2010/05/25(火) 04:42:49
- でも最後には、その日で2度目、たまたま爺さんの来店日にかぶっちゃった客に、
「何のつもりだ!前に見た時は犬のブリーダーだって言ってただろう!」
「知ってるぞ!アンタ、××町の金物屋やってたんじゃないか!」
って糾弾されて終わっちゃったんだけどね。その日は確か、元古本屋の店主って設定だったと思うんだけど。
その客は酒が入ってたのもあって、なんかものすごい怒りようで、
下手したら爺さんに殴りかかるんじゃないかってくらいの勢いだった。
実際、爺さんのベストを掴んで席から立たせたりしてたし。
おかみさんが戸口から、近所の交番のおまわりさんを呼んで、
「あのジジイが詐欺だ!あのジジイを逮捕しろ!」
って暴れる客と爺さんは連れられて行った。
自分もなんか醒めちゃって、少ししてから他の常連さんたちと一緒に店を出たんだけど、
交番の前を通りかかったら、うなだれて小さく座った爺さんが見えた。
(あの客は見える範囲にはいなかった。)それ以来、その店には爺さんは現れなくなった。
自分もそれから半年くらいして本社に戻ることになったので、どうなったのかは知らない。誰が悪いわけでもない、ってか、そもそも爺さんが嘘をついていたのが悪いんだけど、
なんか、それを受け入れちゃった俺らも悪かったんだとか、
でもあれが爺さんの楽しみだったんだから、とか、色々考えて、思い出すたびにモヤモヤする。明け方に目が覚めて、急に思い出した。
文章書くのとか苦手なんで、読みにくかったらすまん。
-
488 名前:本当にあった怖い名無し :2010/05/25(火) 07:17:41
- これはいい後味の悪さ
-
489 名前:本当にあった怖い名無し :2010/05/25(火) 07:42:22
- いい感じにモヤモヤする
-
490 名前:本当にあった怖い名無し :2010/05/25(火) 11:19:14
- どこにでも空気読めないやつっているよなぁって感じの後味の悪さ
-
491 名前:本当にあった怖い名無し :2010/05/25(火) 16:10:22
- >>486-487
「お店の人たちは何も言わない、自分が言わなきゃ」って思っちゃったのかね
ただの八つ当たりだったのかもしれんけれど。それにしたって、ものすごくモヤモヤするなぁ
-
494 名前:本当にあった怖い名無し :2010/05/25(火) 19:22:15
- なんか小説みたいだ。阿刀田高あたりが書きそう。
-
495 名前:本当にあった怖い名無し :2010/05/25(火) 22:09:04
- 知識やうんちくを語るのに、冗談として「実は昔は○○やっててなあw」と言えば
はじめは鵜呑みにする人も出るだろうけど、
そのスタイルを崩さずに毎回同じ店で違う設定を語れば、そのうち暗黙の了解になってみんな楽しんだろう。
そういうのってある種の粋な演出だと思うんだけど、それをわからない人間にぶち壊されるのって
騙す騙さないの問題ではなく気の毒だと思う。
-
496 名前:本当にあった怖い名無し :2010/05/25(火) 22:13:07
- そのおじいさん、頭もよくてすごい量の知識の持ち主だったんだろうね。
おじいさんも客も楽しんでたんだろうけど
まあ、そういう面白い空気を読めずにぶち壊す人間って必ず出てくるんだよな。
-
498 名前:本当にあった怖い名無し :2010/05/25(火) 22:17:31
- 爺さんかわいそう…無粋な客だなあ
金銭的被害を被ったならまだしも不快なだけなら黙って店出れば済む話なのに